機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

文字の大きさ
114 / 202
第23章 記念旅行は彼方此方に

113 注意はしておいた

しおりを挟む
 総勢8人様の団体は無事、羽田空港のロビーに到着した。

「それではここから自由行動です。次は午後6時にホテルのロビー集合。もし遅れそうだったりその他何かあった場合は俺の携帯に連絡下さい。電車内等は通話禁止なのでいつものSNSで連絡してくれた方が嬉しいです。という事で解散」

 何故俺が、ツアコン宜しくこんな事をやっているのか。
 それはこの集団が、日本語を話せるくせに本土経験が無い奴ばかりだからだ。

 俺と香緒里ちゃんはまあ別として。
 風遊美さんとジェニーとルイスとソフィーは、海外から特区へ来た。
 だから東京をはじめ特区以外の日本の経験はほとんど無い。

 奈津希さんは生粋の日本人の筈だが、特区から外へ出たのは数えられる程。
 詩織ちゃんも北海道のど田舎にずっといたので、東京は家族旅行以外では知らない。

 なので仕方なく、俺がツアコンをやっている訳だ。
 それにしても、まさか学生会終了記念旅行で東京に来るとは思わなかった。
 まあ東京以外にも、温泉旅館に泊まったりするのだけれども。

 何故東京へ来たか。
 学生会終了記念旅行で何処へ行きたいか聞いた処、『東京』と『温泉』という案が断トツでトップだったのだ。
 ぶっちゃけ俺と香緒里ちゃん以外の全員が『東京』押し。

 それに風遊美さんの、
「どうせなら日本らしい温泉にも行ってみたいですね」
と言う意見も多数の賛意を得てしまった。

 かくして東京と温泉がメインという、合計5日間の豪勢な旅行が計画されてしまったのである。
 ちなみに旅行の予算は、香緒里バネ製造所の提供だ。
 まあその分みっちりと2日間、皆さんに工房で働いてもらったけれど。

 真っ先に出ていったのはカナダ・アメリカ組。別名オタク組だ。
 秋葉原等へ同人誌をあさりに行くらしい。

 続いて風遊美、奈津希、香緒里組もスタートした。
 これは美味しいスイーツを食べまくろう組だ。

 そして残ったのは俺とルイスと詩織ちゃん。

「ルイスは何処か行きたい処があるか」

「詩織に任せる」

「私は例のホームセンターに行きたいですよ」

「電車だと2時間近くかかるけどいいか」

「いいですよ」

 ルイス君も頷く。
 なのではるばると千葉ニュータウンまで、私鉄を乗り継いで1時間半。

「電車の本数が多いのは凄いが、これだと腰が痛くなるな」

 英国の状況はわからないが、この程度は通勤している人がいる距離だろう。
 だから俺としては、東京圏の元住民としてこう言わせて貰う。

「今日は途中まで座れただけマシだな」

「確かに人も多いな。どの区間も座席は埋まっていた」

 いやルイス、それは人が多いうちには入らない。

「甘いな。通勤時間は動けなくなる位に人が乗るんだ」

 Oh! という感じの間の後、ルイス君は納得したようだ。

「日本人はタフな民族なんだな。詩織を見るとそう思う」

 いやルイス、それは違う。

詩織あれを基準にしないでくれ」

 という感じで列車に揺られ、ニュータウンの真ん中っぽい名前の駅に到着。
 駅前で確認したところ、ホームセンターまでの無料バスの時間まで1時間近くある。
 それにお腹も空いてきた。

「バスまで時間あるし、ちょっとご飯食べて行こう」

「仕方ないですね」

 実はこれ、俺による計画通りだったりする。
 詩織ちゃんのテンションに任せると、絶対昼食を食べ損なうだろう。
 詩織ちゃんはともかくルイス君がそれでは可哀想だ。
 そういう判断で、こうなったのだ。

「近くにちょうどバイキングの店があるから、そこでいいか」
 俺はそう言って2人を案内する……

 ◇◇◇

 そして5時間ちょっと経過した午後6時5分前。
 ぐったり疲れた俺とルイス君、何故か元気な詩織ちゃんは無事ホテルへ到着した。

「修兄、目が死んでいるけれど何処へ行ってきたんですか」

「バイキング食べて、ホームセンターに行って、帰ってきた」

 本当にそれしかしていない。
 でも時間的に危険だったし、体力的にもぎりぎりだった。
 だだをこねる詩織ちゃんを何とかごまかしてやっと帰ってきたのだ。
 あの地平線が見えそうなホームセンターに実質4時間は少なすぎた。

「ルイスも何か死んでいるな、大丈夫か」

「大丈夫だ。久しぶりに我を忘れてしまった」

 実際、ホームセンター内は楽しかったのだ。
 あまりに大きくあまりに何でも売っているので、俺を含めて3人共テンションが上りまくってしまった。
 その結果がこれである。

 チェックイン手続きは先に着いた香緒里ちゃんがやってくれていた。
 なのでそのまま荷物を置きに行き、その脚で再びロビーへ戻る。
 夕食は外で食べる予定だからだ。

「今日は焼肉ですよね」
 と風遊美さん。

「ええ、日本食は明日の旅館で食べられますから」

 島だと普通の肉が少ない。
 離島なので大体冷凍肉か加工済みの肉ばかりだ。

 なので今日は焼肉バイキングの店を予約していた。
 三千円弱でノンアルコール飲み放題、一部高いお肉以外は寿司も惣菜も食べ放題という庶民的な店である。

「制限時間は2時間です。お残し厳禁。取ってくるのは自分で食べる分だけです。絶対元をとろうなんて欲張らないで下さい。いいですね」

 特に詩織ちゃんに向けて言っているのだが、聞いているだろうか。

「それでは各自、取りに行きましょう」

 全員で立ち上がって取りに行く。
 俺は握り寿司5かんとサラダ類少々、それにオレンジジュースを取って真っ先に席に戻った。
 待っていると上品に色々少しずつ取った香緒里ちゃんが戻ってくる。

「あれ修兄、それだけで大丈夫ですか」

「絶対食べきれない程取ってくる奴がいるから、それに備えて」

 香緒里ちゃんは笑う。

「食べ放題あるあるですよね。家族で行くとたいてい子供が取りすぎて、最後にお父さんがひとりでもくもく食べている光景」

「そうならなければいいんだけどな」

 次いで戻ってきたのは風遊美さん。
 持ってきた量は良識的だ。

 ルイス君が戻ってくる。彼も良識的な量だ。
 彼の場合は昼飯のバイキングで飽和攻撃をやって自爆したので、その反省が生きているのだろう。

 そしてそろそろ問題児の時間。
 詩織ちゃんが戻ってきた。
 テーブルの上にてんこ盛り肉、ポテトサラダ山盛り、ジュース3種類を置いてまた行こうとする。

「ちょっと待て、これ食べ切れるのか」

「まだまだ種類があるのですよ。寿司とうどんとカレーが呼んでいるのです」

 消えていった。

 そして奈津季さんも戻ってくる。
 取ってきたのは大量の肉と大量のデザートのみ。
 野菜も主食類も一切ないという割り切りが、甘党の猛獣に相応しい。

 そしてジェニーとソフィー、詩織ちゃんが一緒に帰ってきた。
 お盆にこれでもかと並べた大量の皿が見える。
 唐揚げカレーうどんとか訳わからないものまで作ってきている。
 ああ、俺は取りに行かなくて正解だったな、と心から思った。

「さて、それではみんなで頂きましょう」

 そして地獄の蓋が開く……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...