機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第23章 記念旅行は彼方此方に

114 今度は南東北の温泉へ

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 東北新幹線の通路側の席で俺は死んでいた。
 まだ胃もたれが酷い。

 ホテルには無料の朝食サービスがあったのだが、結局食べられなかった。
 駅の薬局で胃薬を買ったのだが、まだあまり効いていない。

 昨日の夕食、やはり食べすぎた。
 勿論俺のせいじゃない。

 いや、誰のせいでも無いのだろう。
 人は誰も己の実力を過信するものだ。
 特に初めての焼肉バイキングでは。

 食べきるにはちょっと多かった肉類は、俺とルイスで手伝って頑張って消費した。
 戦犯は主にジェニーとソフィーだ。
 肉類やデザート類を大量に持ってきたはいいが、すぐに自分の実力に気づいてしまったらしい。

 奈津希さんは自分で持ってきた大量の肉類を消費した後、デザート類を何皿もおかわりしていた。
 ならもう少し手伝ってくれてもよかったのにと思うのだが、本人曰く甘い物は別腹だそうだ。

 詩織ちゃんも人一倍持っては来たが、その分しっかり食べている。
 人一倍の肉とデザートの他、パンも寿司もうどんもカレーライスもラーメンまで食べている。
 どう見積もっても量的に俺の倍近い。
 あのコンパクトな身体のどこに入っているんだろう。

 そんな訳で昨日に引き続き死んでいる、俺とルイス君。
 そして自業自得で死んでいる、ジェニーとソフィー。
 前途は多難だ。

 今日の予定は新幹線とバスで山奥の温泉へ行き、温泉三昧の予定。
 ちなみに明日はその近くの近代的温泉リゾートホテルに一泊だ。

 何も温泉だけなら箱根とか近場でいいと思うのだが、どうしても新幹線に乗りたいという意見が多数を占めた為、こうなった。
 まあ俺としても、今日明日はのんびり出来るので大歓迎だ。

「こうやって見ると、あまり速さを感じないのです。本当に275km/h出てるですが」

 詩織ちゃんはスマホのGPSで速度を確認しながら外を見ている。
 さっきは他の車輌を見学に行っていたし、常に元気だ。
 その元気を分けてもらいたい。

「電柱の設置間隔は概ね30mですから10本で300mですよね。それを大体4秒で通過しているから、分速にして4.5km。時速で270kmになります」

 俺と違って香緒里ちゃんは暗算が出来る。

「うーん、確かにそう考えるとそのとおりなのです。でも視野角の問題なのですが、やっぱり速そうに見えないです」

 そんな事を言いながら新幹線は進む。
 次の停車駅が那須塩原、下車駅だ。

 そして駅からはバスで1時間以上、時にくねくねカーブする坂道を登っていく。
 胃のもたれが原因のバス酔いが限界に達する直前、バスは本日の目的地である最奥地の旅館に到着した。
 フラフラの足でなんとかバスを降りる。

 ゆるやかなアスファルトの坂道を降りると、右手に土壁風の壁の色の、いかにも和風のホテルですよという感じの建物が目に入った。
 橋のようになっている玄関口には旅館名の看板と『日本秘湯を守る会』の提灯が下がっている。
 入ってチェックインして、部屋に案内してもらった。

「いかにも日本という感じれすね」

「私もこんな感じのところは始めてです」

 始めてなのはジェニーや風遊美さんだけでない。
 俺もこんないい旅館は始めてだ。
 おのぼりさん宜しくあちこち見ながら歩いて行く。

 ちなみにここは詳しそうな金持ちの大人に相談して、予約も取ってもらった。
 卒業旅行が計画された昨年冬の時点で相談の電話をして、宿の選定だけでなく予約までしてもらったのだ。
 金持ちの目に狂いはなく、和風で上品でいかにもという感じのいい宿だ。

「お部屋はこちらと、お隣の8畳の和室になります」

 通されたのは別館にある12畳の広い部屋。
 ここが女性陣の部屋で、隣の8畳が俺とルイス君の部屋。
 その予定だったのだが。

「基本的に全員この部屋でいいよな。夜は布団を隣から運んでくれば」

 いきなり奈津季さんが、そう宣言する。

「一応2部屋取っているし勿体無いでしょう」

 2部屋取ったのは、他にも理由が色々あるのだけれど。

「2部屋でも1部屋でも料金は同じですって、修兄言っていましたよね」

 香緒里ちゃん、細かいことをよく憶えているなあ。

「それより早速温泉ゴーしたいです」

「ソフィー、その前に浴衣に着替えようぜ」

 奈津希さんはそう言って、浴衣をソフィーに渡す。
 だがソフィーは浴衣を広げて、ちょっと考えている様子だ。

「これが浴衣ですか。どうやって着るのですか」

 尋ねる風遊美さん。
 そうか、浴衣なんて着る機会は普通無いものな。
 奈津季さんがにやりと笑う。

「なら1から説明するよ。まずは浴衣と羽織と帯を各自取ろう」

 なにやら危険な雰囲気になりつつあるような……
 だから俺はルイス君に目で合図して、隣に逃げようとする。

「修先輩、どこに行くですか」

 詩織ちゃんに見つかった。

「いや、俺達の部屋は隣だし、浴衣も隣だろ」

「数もサイズも充分足りるですよ」

 詩織ちゃんはそう言って、俺とルイス君にLサイズのセットを渡してくれる。
 余分な真似を……

「じゃあ隣で着替えてきます」

「しょっちゅう風呂に一緒に入っているのに、今更その必要もないだろ」

 論破されてしまった。

「はい、それでは浴衣の着方。まずブラはいらない。パンツは本来は穿かないのが正式だが、これは各自の好みだ。で、この状態でまずこの浴衣を……」

 奈津季さんが正しい浴衣の着方を、実技込みでレクチャーしはじめた。
 ちょっと正視できない光景が展開されつつある。

 俺とルイス君はそっと背を向け、こそこそと着替える事にした。
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