機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第27章 ひとつだけの嘘~夏の旅行・後編

137 こんな面倒も悪くない

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 何とか昼少し過ぎたあたりでカラオケを脱出。
 熱田神宮近くの超有名店で、名物のひつまぶしを食べる。
 混んではいたけれど、運良くあまり待たずに入れた。

「昼からはどうするんだ」

「俺は大須の商店街をぶらぶらしようかと」

「僕は熱田神宮を回ってから名古屋城に行く予定だ」

 ルイス、きみはやっぱり真っ当だ。

「夕食はそろそれ別々かい」

「実はですね。夜は香緒里先輩と相談してスイーツのバイキングに行こうかと言っているのです。風遊美先輩も一緒なのです」

「いいね。僕も一緒していいかい」

「当然大丈夫なのです。香緒里先輩に連絡しておくのです」

 詩織ちゃんがスマホを出す。
 とりあえず俺やルイスはこの後、単独で伸び伸び出来るようだ。
 よしよし。

「それまでは奈津季さんと詩織ちゃんは名駅か栄あたりを回ったらどうですか。昨日名駅行ったから今日は栄の地下街あたりがいいかな。美味しいものたくさんありますし、デパートなども充実していますから」

「いいですね、それ」

「よし、詩織ちゃん行こうか」

「賛成なのです」

 俺とルイスはこっそり目配せ。
 よしよし、互いに危険物は排除したぞ。

 ◇◇◇

 たまには独りで歩きたい時もある。
 元々の俺は基本的に単独行動派。
 独りで好き勝手に知らない場所を歩くのが好きだった。

 ただ特区内は狭すぎて歩く程の場所が無い。
 なので久しぶりの独り歩きになる。

 熱田神宮を拝観した後地下鉄に乗り、5駅目の上前津で降りる。
 8番出口で降りてちょっと歩いたら、観光案内等でおなじみの大須の招き猫がある広場に出る。
 店を適当に見ながら、特に何か買う訳でもなく歩いて行く。

 色々な店が並んでいる。
 テイクアウトできる店も多い。
 詩織ちゃんがいればえらい事になったろうな。
 そんな事を思ったりもしながら歩く。

 そう言えば最近、あまり独りで行動する事がない。
 まあ共同で住んでいるから当然なんだけども。

 それまでは独りのほうがすっと多かった。
 中学校までは由香里姉、香緒里ちゃんを除けば孤立していたようなものだったし、高専入って1年目もわりとそうだ。

 基本的に独りで判断して独りで行動する。
 それが自然で当たり前。
 俺自身人嫌いな方だと思っていたし。

 それが今や女の子と共同生活していたり、学生会長していたり。
 1人でこんな異郷の街を散歩しているときでさえ、これは誰かが好きそうだなとか考えたりする始末。
 中学2~3年の内心尖りまくっていた頃の俺から見たら堕落だよな。

 少なくとも大分遠い場所まで来てしまったのは確か。
 でもそれが悪い事とは思わない。
 ただ仲間に恵まれて、それも自然と思えるようになっただけ。

 まあ面倒な事も多いけれど、それすら楽しいと思える事も多い。
 そう思えるのは大きな変化だよな。

 そんな事を思いつつ、上前津駅からぐるりと大須観音経由で商店街を回る。
 さらに矢場町方向に抜けて栄までのんびり歩いて、栄の地下街をひととおり回って外へ出たら。

 もう外は暗くなっていた。
 デパ地下や閉店間際の店等で惣菜やツマミを買いこんで、更にホテル近くの100円ローソンでドリンクを買って宿へと戻る。

 広い部屋には他にはルイスしか戻っていない。
 後は例のスイーツビュッフェに行っているのだろうか。

「お疲れさん」

 そうルイスに挨拶して、そしてテーブルに今日の戦利品を広げる。
 鶏手羽先とか天むすとか鶏唐揚げやいなり寿司、味噌ヒレ串かつにどて煮等々、まあ名古屋系っぽい定番の惣菜だ。

「ルイス、皆が帰ってくるまで軽くやるか」

「それは修先輩の食事用ではないのか」

「いつもの癖でさ、つい買いすぎてさ」

「なら頂く。ありがとう」

 という訳で、2人でのささやかな夜会を開始。

「しかし最近、つい大人数分買う癖がついてしまってさ。どうもいかん」

「その感覚はわかる。僕も今なんてうるさいのがいなくて楽な筈なのに、何故か物足りない」

 俺は頷く。
 ルイスの言っていることは良くわかる。
 俺も昼間独りで散歩中、感じていたから。

 俺は串かつを手に取る。

「例えばこれなんか、売っていたら絶対飼い食いする奴がいるな、とか」

 ルイスは苦笑した。

「あいつは3串くらいは平気で食べそうだ。奈津希さんならもっと甘いものかな」

「だな、今頃はスイーツ食べ放題を……あれ」

 外から、聞き覚えのある声の集団が近づいてくる。

「ただいまなのですよ。あ、それ頂くです」

 いきなり詩織ちゃんに串かつ1本取られた。

「あれ、今日はスイーツビュッフェじゃなかったのか」

「終わったところ。午後7時から70分勝負だからさ、ゆっくり帰って来た処」

 そう言いつつ、奈津希さんは天むす1個を分捕る。

「ちょうどよかった。スイーツビュッフェだからさ。甘くないのはスパゲティ位しかなくて」

「ビュッフェだから十分食べてきたんじゃないですか」

「スイーツは別腹、って言うだろ。別腹じゃないほうがまだ足りないんだ」

「いただくますデス」

 ロビーも天むすを取りやがった。
 まあ食べられていいように多めに買ってあるけどさ。

「だったら少しは自分の食べる分も買ってきて下さい」

「8時過ぎると店が閉まっていてさ、コンビニ弁当もちょうど切れてた」

 俺が厳選した名古屋らしい惣菜類が瞬く間に減っていく。

「この手羽先美味しいれす。最後の1個もいただくれす」

「あ、ジェニー。それ俺もまだ食べていないのに」

 デパ地下で買った手羽先甘辛揚げ、10個入りだった筈なのにもう1つもない。
 見るとしっかり風遊美さんまで食べているし。

 何だかな、と思いつつも悪い気はしない。
 このごちゃごちゃして面倒な生活も、きっと俺は気に入っているのだ。
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