機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第32章 学生会は卒業したけれど

167 研究室ゼミ第1回

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「私の番だな」

 等々力君が出したのは杖ではなく、高さ5cm直径3cm位の、円筒形の物体。
 審査魔法で見ると、確かにこれも杖と同等な魔力制御具だ。

 魔力導線と魔石の共振と、位相整形による増幅機能が入っている。
 俺の知っている理論と違う形だ。

 つまり現有理論とは、少しだけど違う原理。
 ヤグルシあたりに取り付ければ、凶悪な増幅が出来るだろう。
 ただし反応速度はやや劣る。
 きっとこの機械の本質は、そういった使い方ではない。

「埋め込みか機器制御用か」

「現状はそれ以前、理論実証用だな」

 成程、意識して今の理論を使わず超えてきたか。

 さて、次は俺だ。
 持ってきたのはヘリテージ1号だ。

 出した瞬間、ふっと空気が変わったような気がした。
 全員が審査魔法を使っているのがわかる。

「……えらく高性能な杖です。製造コストは別ですが」

「と言うか、この時点で完成品じゃないのですか」

 恩田君と世田谷さんがそう言う中、等々力君と高井戸君はにやりと笑う。

「これは随分と凶悪な目印だ」

 その一言で、等々力君がこの杖の意味を理解した事がわかった。

「なら僕も出すか」

 のほほんとした口調で出した高井戸君の杖は、一見ただの木の棒。
 整形こそしてあるが、何の機構も入っていない。

 それでも審査魔法を使うとわかる事がある。
 魔石も魔力増幅機構も魔力導線すら通っていないのに、約2倍程度の魔力増幅効果がある。
 既存のどんな理論も無視した逸品だ。

「凄いな、これ」

 俺を含め、全員が思わず見入ってしまう。

「現有理論等は誰かがやるだろうと判断した。だから古典とか歴史とか、伝説とか言い伝えから共通点等を抽出した。試作品は出来たが理論はまだ未完成だ」


「成程、皆よくもまあ見事に方向性の違う物を持ち込んだな。量産前提に現有理論盛り込みに、現有理論プラスに現有理論無視か。それに魔力操作自慢まで加わってると。教官として戦力に不満は無いな」

 新地先生は苦笑する。

「次からゼミに入っても問題は無いだろう。長津田、これを作ったという事は、どうせ今までの関連論文全部読んで、自分なりのまとめ作っているんだろ」

「はい」

 俺は頷く。
 共同研究になるとは思わなかったが、一応今までの関係は自分なりにパソコン内にまとめている。

「他人に見せる形に頑張って変換しろ。必要ならプロジェクター等も使用して構わない。他に実物をつかったり、この部屋内で使える方法なら、何を使ってもかまわない。
 期間は約10日間。再来週の火曜3~4限の2限使って発表をしてもらう。一通り解説して質疑応答できる程度まで、要点に絞って配布用レジュメを作っておけ。英語の概要とかは作らなくてもいい。
 来週の火曜3~4限と金曜4限は、僕がゼミの進め方や論文の書き方、魔法工学の現在の状況について解説する。以降、再来週の金曜4限が等々力、その次の火曜が高井戸と恩田、次の金曜が世田谷に担当してもらう。
 発表して解説する題目と日程は、後でまとめて明日朝までにここの研究室のHPに掲載しておく。ここのHPは大学公式からでも高専公式からでも辿れるから、自分で明日以降確認してくれ」

 いきなりガンガンと、ゼミの進行について入っていく。
 ただこのテンポの良さ、俺は嫌いではない。
 後で確認できるように、日程はWeb閲覧可能なようにしてくれると言うし。

 新地先生は年齢自体まだ若い。
 確か30そこそこ位で、高専卒業から魔技大に転入し魔技大院へ進んだ俺達の先輩だ。

 専門は研究室名と同じ魔法制御科学で、それを応用した部品レベルの魔法工学機器をいくつも開発している。
 ちなみに俺が漁った論文の1割以上は、新地先生執筆のものだった。
 ヘリテージ1号に使用した理論も、3割程度は新地先生の論文由来だったりする。

「さて、これからはこの部屋のルールや、機器の使用方法について説明する。また開発に必要な機器があったら、早めに申請しておくこと。よほどの事がない限り、期待に添えると思う」

 それは研究用の費用だろうか。
 それとも新地先生のポケットマネーだろうか。

 この人も大量のパテント持ちで金持ちらしい。
 まだ独身だし。
 補助魔法科助教の彼女がいるらしいけれど。

 さてと、俺も必要機器が何かあるか確認するか。
 ざっと目に発表用には問題は無さそうだ。
 50インチクラスの液晶ディスプレイが3枚と、高性能サーバと、発表用ノートパソコン。
 あとでOSと使用可能ソフトを確認しておこう。

 工作機械はこれ1台で切削、穴あけ、研磨、切断なんでもござれのマルチアーム付万能魔法工作機械が1台。
 杖程度の大きさの物を作るのはこれで十分だ。
 協定特区外使用禁止な、魔法溶接機能までついているし。

「資材等のストック等は何処ですか」

「隣の準備室に入っている。現在の在庫はあとでHPで確認してくれ。
 あ、それと各自HPの記載を確認の上、自分の公開鍵を作って研究室にメールしておいてくれ。メール到着後、1日以内に研究室HPと主要機器のパスワード、研究室の公開鍵を貼付したメールを返送する。一応魔技大のSNSもかなり高度な暗号化をかけてあるが、念の為だ。公開鍵暗号方式なら、この特区外にもほぼ安全にメールできるから。
 なお今日の説明ややることリストについても、HPに記載しておく。それでもわからない事があれば、随時研究室のメールかSNSにて連絡してくれ。24時間以内に回答なり対処なりする」
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