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第32章 学生会は卒業したけれど
166 引退したのでお引っ越し
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4月になって、学校帰りに通う場所が変わった。
もう学生会役員ではないので、学生会の部屋は行きにくい。
工房の方も同様だ。
工房の方にある俺の占有物は、けじめとして全て引き払ってある。
引き払った専有物の移動先は、魔法技術大の工学研究室棟1階の最南端、新地研究室だ。
新地先生は、元々大学の方の田奈研究室の助教で、高専の方でも講師をしていた。
魔法工学科の実習系の課題では、お馴染みな先生だ。
田奈先生は海外出張だの何だので席を空けがちなので、代行で授業をすることも多かった。
そしてこの4月、新地先生はめでたく准教授に昇任、正規に新地研究室が発足した。
ただし高専の方は事実上席だけ状態で、メインの研究室は大学の方だ。
そして新地先生は俺の卒業研究の担当教官。
「長津田も学生会の方を引き払うなら僕の研究室の方へ来ないか。出来たばかりだから誰もいないけれど、広いし色々揃えているよ」
そんな先生の誘いに、渡りに船と移動させてもらったのだ。
移動してみると流石に田奈先生直系らしく、研究室の癖に半分工場化している。
魔法仕様の万能加工機械のほぼ新型が部屋の奥を占拠しているし、某米国製高級工具メーカーのでっかい赤いワゴンの姿も見える。
なお本棚は1つと少なく、しかも中の本も最小限。
これは書籍類は全て解体して自炊し、自前サーバに入れた為とのこと。
裁断機と高速両面スキャナという、いわゆる自炊セットもちゃんと置いてある。
「後期から大学の学生も所属する予定だけれど、それまでは高専生しか来ないから好きに使っていいよ」
そんな許可も得ている。
ちなみにここ所属の高専生は、俺の他に等々力君と恩田君と高井戸君と世田谷さん。
このうち世田谷さんだけは攻撃魔法科で、他は魔法工学科だ。
等々力秋良君は、上野毛遥輝君と並ぶ学科内の親友にして最大のライバル。
恩田日佐人君は、俺亡き後の創造制作研究会に残る最後の同学年。
高井戸悠君は物作り型自由人というのが一番ふさわしい感じ。
そして紅一点の世田谷美南さんは……攻撃魔法科の筆頭にして闇魔法使いという変わり種。
本人の希望で無理やりここに所属したという形で、決定までに一悶着どころではない騒ぎがあった模様だ。
なおその決定過程で、創造製作研究会の最新試作杖「オフィウクス」や「グラウコーピス」が他学科の助教以上にに横流しされたという噂がある。
そして、それが事実であることを俺はある事情から知っている。
ちなみに横流し用の杖を設計したのは恩田君だ。
基本は玉川先輩設計系統の杖だが、かなりの部分は恩田君による再設計の手が入っている。
なおこの研究室、表看板では魔法制御科学研究室となっている。
他には魔法生体工学とか魔法制御工学、魔法基礎工学や魔法基礎理論や魔法情報学という感じ。
魔法制御工学はうちの研究室と名前が似ているが、
○ こっちは「魔法を制御する」
○ 向こうは「魔法で制御する」
と中身が大きく違っている。
なお魔法制御工学室には、もう一人の俺の親友にしてライバル、上野毛遥輝君が所属している。
ロボット等も今の段階では魔法制御工学の担当だ。
◇◇◇
さて、今日は金曜日4限。
最初の卒業研究の授業だ。
「この研究室には、卒業研究又は制作の課題として魔道具制作をあげた学生が配属された訳だが、その方針でいいんだね」
新地先生の言葉に、全員が頷く。
「ならまずはお手並み拝見といこうか。田奈先生がそれを認めたという事は、それなりの土台をもう作っているんだろ。こんな感じに」
新地先生はそう言って、タバコの箱程度の大きさの装置を机上に出した。
「これは僕が高専で卒業制作した汎用型魔力電池。ここの魔力導線から魔力を出力する装置で、効果は半永久的。まだ魔法特区外持ち出し禁止だから、せいぜい協定を結んだEUや北米の特区で使っている位だけれども。充電池と違って何時でもそのまま使える」
いきなりとんでもない代物が出てきた。
これを量産すれば、魔力がない人間でも魔道具なり魔法機械を使用可能だ。
産業界に与える衝撃を考えれば、確かに特区外持ち出し禁止も頷ける。
「こんな感じで一人ずつ、今日持ってきた魔道具を見せてくれ。ここにいるのは全員審査魔法のB以上持ちだから、杖の名前以外の解説はしなくていい。では時計回りで恩田君から」
確かに、自分が開発した最新又は自信作の魔道具を持ってくるように、という事前指示があった。
これがゼミにどう関係するのだろう、
そう思いながら、俺は状況を見ている。
恩田君は一見シンプルなグリップとシャフトの木製杖を取り出す。
「グラウコーピス。基本的には量産前提の攻撃魔法用の杖です」
「その際は手間をかけたな、申し訳ない」
新地先生の苦笑いと言葉の意味は、この場の全員が了承済みだ。
さて、これが横流しした杖か。そう思いつつ俺は審査魔法を発動する。
実はある事情で、俺はこの杖についてはよく知っている。
でも一応念のために再確認。
基本的なメカニズムは玉川先輩設計のヤグルシに近いが、発振系統が更に高効率化している。
構造は洗練されていてかつシンプル。
それでいて増幅率も、俺のテュルソスのオリジナルより上。
製造も、ちょっとの工作知識があれば誰でも作れそうだし、量産も難しくなさそうだ。
ただ微細領域での操作性がちょっと不安かな。
「私のは残念ながら自作ではありません。授業以外用として恩田君に作ってもらった物です」
世田谷さんが出したのは、見慣れたヤグルシ。
玉川先輩設計による創造制作研究会のベストセラーな杖だ。
俺の設計したヴァナルガンドの再設計版であるヨルムンガンドの再設計改良版。
玉川先輩が手を入れただけあって、元のヨルムンガンドの理論こそ引き継いでいるが、構造は大幅に変わっている。
安くて頑丈で使い易く、性能も一線級。
ただ審査魔法で見ると、内容は市販品のヤグルシとは別物だ。
増幅機能も固定2倍と強力だけれど、きっとこの杖の最大の特徴は発動の恐るべき早さ。
その分使い心地が恐ろしく神経質な筈。
これを使っているという事は、魔力制御に相当な自信があるのだろう。
もう学生会役員ではないので、学生会の部屋は行きにくい。
工房の方も同様だ。
工房の方にある俺の占有物は、けじめとして全て引き払ってある。
引き払った専有物の移動先は、魔法技術大の工学研究室棟1階の最南端、新地研究室だ。
新地先生は、元々大学の方の田奈研究室の助教で、高専の方でも講師をしていた。
魔法工学科の実習系の課題では、お馴染みな先生だ。
田奈先生は海外出張だの何だので席を空けがちなので、代行で授業をすることも多かった。
そしてこの4月、新地先生はめでたく准教授に昇任、正規に新地研究室が発足した。
ただし高専の方は事実上席だけ状態で、メインの研究室は大学の方だ。
そして新地先生は俺の卒業研究の担当教官。
「長津田も学生会の方を引き払うなら僕の研究室の方へ来ないか。出来たばかりだから誰もいないけれど、広いし色々揃えているよ」
そんな先生の誘いに、渡りに船と移動させてもらったのだ。
移動してみると流石に田奈先生直系らしく、研究室の癖に半分工場化している。
魔法仕様の万能加工機械のほぼ新型が部屋の奥を占拠しているし、某米国製高級工具メーカーのでっかい赤いワゴンの姿も見える。
なお本棚は1つと少なく、しかも中の本も最小限。
これは書籍類は全て解体して自炊し、自前サーバに入れた為とのこと。
裁断機と高速両面スキャナという、いわゆる自炊セットもちゃんと置いてある。
「後期から大学の学生も所属する予定だけれど、それまでは高専生しか来ないから好きに使っていいよ」
そんな許可も得ている。
ちなみにここ所属の高専生は、俺の他に等々力君と恩田君と高井戸君と世田谷さん。
このうち世田谷さんだけは攻撃魔法科で、他は魔法工学科だ。
等々力秋良君は、上野毛遥輝君と並ぶ学科内の親友にして最大のライバル。
恩田日佐人君は、俺亡き後の創造制作研究会に残る最後の同学年。
高井戸悠君は物作り型自由人というのが一番ふさわしい感じ。
そして紅一点の世田谷美南さんは……攻撃魔法科の筆頭にして闇魔法使いという変わり種。
本人の希望で無理やりここに所属したという形で、決定までに一悶着どころではない騒ぎがあった模様だ。
なおその決定過程で、創造製作研究会の最新試作杖「オフィウクス」や「グラウコーピス」が他学科の助教以上にに横流しされたという噂がある。
そして、それが事実であることを俺はある事情から知っている。
ちなみに横流し用の杖を設計したのは恩田君だ。
基本は玉川先輩設計系統の杖だが、かなりの部分は恩田君による再設計の手が入っている。
なおこの研究室、表看板では魔法制御科学研究室となっている。
他には魔法生体工学とか魔法制御工学、魔法基礎工学や魔法基礎理論や魔法情報学という感じ。
魔法制御工学はうちの研究室と名前が似ているが、
○ こっちは「魔法を制御する」
○ 向こうは「魔法で制御する」
と中身が大きく違っている。
なお魔法制御工学室には、もう一人の俺の親友にしてライバル、上野毛遥輝君が所属している。
ロボット等も今の段階では魔法制御工学の担当だ。
◇◇◇
さて、今日は金曜日4限。
最初の卒業研究の授業だ。
「この研究室には、卒業研究又は制作の課題として魔道具制作をあげた学生が配属された訳だが、その方針でいいんだね」
新地先生の言葉に、全員が頷く。
「ならまずはお手並み拝見といこうか。田奈先生がそれを認めたという事は、それなりの土台をもう作っているんだろ。こんな感じに」
新地先生はそう言って、タバコの箱程度の大きさの装置を机上に出した。
「これは僕が高専で卒業制作した汎用型魔力電池。ここの魔力導線から魔力を出力する装置で、効果は半永久的。まだ魔法特区外持ち出し禁止だから、せいぜい協定を結んだEUや北米の特区で使っている位だけれども。充電池と違って何時でもそのまま使える」
いきなりとんでもない代物が出てきた。
これを量産すれば、魔力がない人間でも魔道具なり魔法機械を使用可能だ。
産業界に与える衝撃を考えれば、確かに特区外持ち出し禁止も頷ける。
「こんな感じで一人ずつ、今日持ってきた魔道具を見せてくれ。ここにいるのは全員審査魔法のB以上持ちだから、杖の名前以外の解説はしなくていい。では時計回りで恩田君から」
確かに、自分が開発した最新又は自信作の魔道具を持ってくるように、という事前指示があった。
これがゼミにどう関係するのだろう、
そう思いながら、俺は状況を見ている。
恩田君は一見シンプルなグリップとシャフトの木製杖を取り出す。
「グラウコーピス。基本的には量産前提の攻撃魔法用の杖です」
「その際は手間をかけたな、申し訳ない」
新地先生の苦笑いと言葉の意味は、この場の全員が了承済みだ。
さて、これが横流しした杖か。そう思いつつ俺は審査魔法を発動する。
実はある事情で、俺はこの杖についてはよく知っている。
でも一応念のために再確認。
基本的なメカニズムは玉川先輩設計のヤグルシに近いが、発振系統が更に高効率化している。
構造は洗練されていてかつシンプル。
それでいて増幅率も、俺のテュルソスのオリジナルより上。
製造も、ちょっとの工作知識があれば誰でも作れそうだし、量産も難しくなさそうだ。
ただ微細領域での操作性がちょっと不安かな。
「私のは残念ながら自作ではありません。授業以外用として恩田君に作ってもらった物です」
世田谷さんが出したのは、見慣れたヤグルシ。
玉川先輩設計による創造制作研究会のベストセラーな杖だ。
俺の設計したヴァナルガンドの再設計版であるヨルムンガンドの再設計改良版。
玉川先輩が手を入れただけあって、元のヨルムンガンドの理論こそ引き継いでいるが、構造は大幅に変わっている。
安くて頑丈で使い易く、性能も一線級。
ただ審査魔法で見ると、内容は市販品のヤグルシとは別物だ。
増幅機能も固定2倍と強力だけれど、きっとこの杖の最大の特徴は発動の恐るべき早さ。
その分使い心地が恐ろしく神経質な筈。
これを使っているという事は、魔力制御に相当な自信があるのだろう。
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