機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第32章 学生会は卒業したけれど

168 懇親会も初回です

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 そして色々盛り沢山の説明や質疑応答の後、研究室初回懇談会という名の飲み会に突入する。
 俺を含む学生全員がぎりぎり飲酒不可年齢なので、実際にはアルコールは入れない。

 この島にある2軒の飲み屋は、常にサラリーマン諸氏や講師陣等で目一杯。
 ただ大学のカフェテリアは、17時以降ディナーバイキングに早変わりする。
 例年4月からGWまでの間、つまり新人歓迎時期だけの措置だ。
 そして少なくとも今日は大分賑わっている。

 何とか全員分の席を確保して、懇談会という名の食事会に突入する。
 勿論食事を食べて遅くなる件については、SNSで由香里姉と香緒里ちゃんとジェニーに連絡済みだ

 なお学生会にも、既に新人2人が見学に来ていたらしい。
 いきなり露天風呂で顔見せなんて事にならずによかったなと、俺はちょっと安心する。

 でもルイスにはちょっと申し訳ない。
 彼は今日も生贄なのだろうか。

「さて、今日の第一回ゼミはどうだった。率直な感想」

「テンポが早いですね。皆慣れているから、いいですけれど。世田谷さんには、悪かったかもしれないですね。大学3年を持つ時は、注意したほうがいいと思います。皆いきなり専門分野突入なんて、慣れていないと思いますから」

「あと、自己紹介一切なしというのも容赦ないな」

 俺と等々力による容赦ない攻撃。

「ははは、確かに。何せ慣れないもので。でも自己紹介って言っても、いまさらだろ。魔法工学科とは腐るほど付き合っているし、世田谷さんについても、研究室配属の前に散々面談したから」

「世田谷さんの配属は、やっぱり色々揉めたのですか」

 高井戸の質問に、新地先生と恩田、それに俺と等々力が苦笑する。

「まあね。仮にも魔法攻撃科の学年筆頭だし。その際は恩田君を始め色々色々手間かけたね」

「お代は貰っていますから」

 恩田は3月末に、新地先生からの緊急依頼で学校に呼び出され、最新規制値の2倍まで許容の、講師以上用杖作りを依頼された。
 自分のゼミ配属予定学生で創造制作研究会の部長という、なかなか頼みやすい立場だったせいもあるだろう。

 でも恩田も、流石に40本以上という数の杖を独りで量産するのは辛かったようだ。
 なおかつ部外秘という事情のため、研究会の後輩を動かすわけにもいかない。

 なので恩田は先生にゼミ所属予定の学生の名前を聞き、世田谷さん本人を除く全員に招集をかけ、海外放浪中だった高井戸を除く俺と等々力が4月頭に合流。
 量産に最適化して設計した杖2種を、3人で3日かけて量産した訳だ。

 それでも3日で作業が終わったのは、恩田の設計のおかげ。
 構造が見事なまでに簡素化されていて、量産向きになっていた。
 それに材料も、加工しやすく入手も簡単なアルミや銅を多用していて、量が少なく取り扱いが面倒な魔法銀や高価な貴金属等を殆ど使っていない。

「あれが長津田の設計だったら2週間はかかるな。絶対」

「言うな、自覚はある」

 俺が設計すると、微細回路を多用するとか希少金属や希少素材を多用するとかで、どうしても量産向きでない代物になってしまうのだ。
 自覚はあるのだが治らない。

「でも長津田のあの杖、名前は相変わらず厨二だけど威力は確かよね。あれは量産や市販の予定は無いの」

「あれはあくまで超えるための目印として作ったしな。材料費だけで20万かかるし島内で材料揃わないしで、これ以上作るつもりはない。まあ厳密にはもう1本だけ作って、使用している奴がいるけれど」

「それって長津田の恋人か何か? ひょっとして香緒里さん」

 おいおい。

「じゃない。強いて言えば始末に負えない妹分。危なすぎるのでお守り代わりに持たせている」

「呼びましたですか」

 いきなり横に、浴衣に羽織という姿の詩織ちゃんが登場する。
 普通だったら周りが驚くところだが、ここは魔法特区。
 多少の事では皆驚かない。
 それでも特異な魔法ではあるので、まあ何人かはこっちをちらりと見たけれど。

「呼んでいない。それより何だその服」

 浴衣と言っても、夏の花火大会に来ていくような作りが良くて華やかなものではない。
 よく温泉旅館にあるような、白地に紺色の模様という奴だ。
 ご丁寧に安っぽい羽織をはおって、イグサのスリッパまで履いていやがる。

「学生会恒例、金曜夜の行事用に作成したですよ。修先輩用のもあるので後でよろしくなのです」

 ますます温泉旅館化してしまっているようだ。
 まあいい。その話は後だ。

「今日はゼミの懇親会だから遅くなる。なので先に帰ってろ」

「了解なのです。では失礼するのです」

 グレムリンは消えた。

「……何だったの、今の娘」

「田奈先生の末娘だね」

 新地先生はある程度事情を知っているらしい。

「田奈先生の娘で魔法工学科3年で学生会の後輩で、マンションの隣の住民です。噂をすると時々本当に出現しますが無視して下さい。グレムリンみたいのものです」

「しかし今のは瞬間移動かい。始めて見たけどさあ」

 高井戸が興味深げに聞いてくる。

「本人に言わせると、移動する空間と方法が違うだけで瞬間移動では無いらしい。より大きな次元で見ると微分可能な動きだから、出現時の衝突問題等も無いんだと」
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