神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第10話 雨期に来るもの⑶

49 今後の方針

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 顕現の最後の一体は、リビングでロシュとブルージュとともに、昼食を食べていた。

 メニューはキンビーラ達と食べているのと同じ、しっぽくうどん。
 いりこ風のイワシ干物で出汁をとり、小芋、大根、ニンジン、油揚げの他、猪バラ肉の薄切りと山でみつけたキノコ(イグチ、ショウゲンジ)が入っている豪華版だ。

 イワシ干物は、大きさは大羽いりこと同じくらいだけれど、海水で洗った後魔法で乾燥させた、味が濃いもの。

 芋、大根、ニンジンは、私の知っているものと違って小さめ。たとえば大根は大人の人差し指サイズだ。
 そのかわり1ヶ月くらいで収穫可能だし大量に作れる。おまけに冬でもケカハやセキテツの気候なら生育が可能だ。

 キノコは山中から私が全知で探して全在で採取したもの。猪肉はブルージュが狩ったものではなく、昨日クエルチェが獲ってきてきたもの。

 このうどん、あれこれ出汁が出まくっていて、凄く美味しい。
 ロシュもブルージュも一緒にいるし、私としては最高の団欒の時間。

 その筈なのだけれど、並列思考でミョウドーをどうするか考えていたり、やはり並列思考でナハルの世話係の女性達の今後について、顕現を更に4体出して合計5体で意見聴取をしたり受け入れ先を探したりしている。

 その辺の思考が、きっと出てしまっていたのだろう。
 ロシュに、こう聞かれてしまった。

「コトーミ様、疲れている様に見えますけれど、先程はどちらかに出ていらっしゃったようですし、何かあったのでしょうか?」

 どう説明しよう。もしくは誤魔化そう。
 ちょっとだけ考えたけれど、肝心な部分は隠したくない気がした。

 それにロシュもブルージュも、地図帳でミョウドーのことは知っている。
 どんな土地神がいたのかは知らないだろうけれど。
 だからつい、正直に言ってしまった。

「今日からミョウドーの土地神もやることになったの。それでミョウドーをどうしようか考えていて……」

 チンカタカタカタ、食卓上で音が響いた。ブルージュがフォークを取り落とした音だ。
 そしてそのブルージュが、驚いたような表情で、私の方を向いている。

「コトーミ様、ここからいなくなっちゃうの!?」

 しまった! そう誤解されてしまったか。

「いなくはならないよ。ここは私の家だし、ケカハの土地神なのは変わらないから」

 ブルージュの表情から判断して、更に付け加える。

「ここは私の家だし、ロシュやブルージュは私の家族だからね。だからいなくなる事は絶対無いから、安心して」

「本当?」

「本当。コトーミという神の名にかけてもいいよ」

 表情が緩む。やっと安心してくれたようだ。
 そしてブルージュではなく、ロシュが口を開く。

「それならミョウドーの人にも、出来るだけ力を貸してあげて欲しいです。
 ミョウドーにも前の私達みたいに困っている人がいると思うんです。でも今の私達は、毎日が楽しい。この村へ来て、この神社へ住んでから、ずっと。
 本当はコトーミ様に、私達だけの神様でいて欲しいとも思っています。でもそれは、前の私達と今の私達のことを忘れてしまうことなんです。だからきっと、コトーミ様はミョウドーの神として、此処と同じようにするのが、正しいんです」

 そこまで言って、そしてロシュがはっとした表情をする。

「ごめんなさい。神様に対して生意気なことを言ってしまいました」

「ううん、ありがとう。今のロシュの言葉で、何となくだけれど何をやるべきか、整理できた」

 ロシュの意見は、文章にしてしまうと優等生的で面白くないかもしれない。
 でも全知で、言葉と同時に、言葉に出てこない思考も読み取れる私には、確かに伝わった。
 あとロシュとブルージュが、私と一緒の今の生活をどれだけ大事に思ってくれているかも。

 ならば期待に応えられるよう、頑張るとしよう。

 ◇◇◇

 ミョウドーは私が来た頃のケカハとは異なり、既に住民が3,143人いる。
 だから住民全員に対し、神託で所信表明的な説明を実施。

 まずは水対策について、こんな感じで神託を下した。
  〇 特に洪水被害が多いミドチ川とナガ川に対して、早急に洪水対策の工事を実施する
  〇 洪水対策の影響で、川の水位が低くなる。その代わり洪水は起こりにくくなる
  〇 洪水対策のため、山の中に湖を作る。此処に暮らしている者については、別の地域に移動して貰う。なお畑等は新たな地域に用意する。
  ○ 河川で漁をしている等で影響が出る者については、半年分の保障をする。
 
 ミョウドーはケカハと違い、水不足になる地域は少ない。山に遮られない為、夏でもそこそこ程度に雨が降る。

 その代わり洪水被害が深刻だ。例年3月と9月にはミドチ川とナガ川の何処かが溢れる。
 数年に一度はミョウドーの中心であるイノツの街やナガ川河口にあるミョウドー第二の街アーナン周辺の田畑が浸水する。
 更に十数年に一度は、イノツやアーナンの街そのものも浸水被害に遭う。
 こんな状況。

 ただ現地を全知で確認したところ、放水路を作ったり、川を真っ直ぐにした後浚渫したり、堤防を完備したりすれば、何とかなりそうだと感じた。
 あとミドチ川は途中に大規模なダム湖を作って、ケカハ山脈の下を通る導水路を掘り、香川用水ならぬケカハ用水を作る予定。

 そして魔法については、ケカハと同様の魔法を解禁するつもりだった。
 しかしこちらは素直には行かなかった。

『魔法を解禁した場合、内乱が起こる可能性が大きいです』
 
 全知がそう告げる位に、人間側の統治機構の評判が悪かったのだ。
 なのでこちらも神託で住民に状況説明。
 統治機構そのものは残した上で、土地神による強権を発動。全知を使用して状況を把握し、人事を刷新する。
 魔法の授与は、この作業が終わってからとなりそうだ。

※ しっぽくうどん
『香川県でいう「しっぽくうどん」は、秋から冬にかけてとれる数種類の野菜と油揚げを煮干しの出汁で一度に煮込み、ゆでたうどんの上から具材とともにかけてつくる料理で、野菜の甘みやうまみに油揚げの味が加わり、寒い季節にとても美味しく食べられる。「讃岐うどん」の特徴であるコシの強さとなめらかな食感に加えて、地元でとれる季節の野菜を活かした代表的な冬の郷土料理である』
(以上は農林水産省『うちの郷土料理 香川県 しっぽくうどん』のページより抜粋。https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sippoku_udon_kagawa.html )
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