神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第10話 雨期に来るもの⑶

48 事後処理

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 私が勝っても、ミョウドーがケカハに編入されて消えるという事はないようだ。
 そう思ったら、全知から説明が入る。

『新たに領地を手に入れた土地神の考え方次第です。コトーミがミョウドーの名を消してケカハに編入する気があるのなら、そうする事可能です』

 今はケカハにミョウドーを編入するつもりはない。
 今のケカハと同じように他の地域の細かく面倒をみるのは、私には不可能だ。
 複数顕現と並列思考を使いまくれば可能だけれど、私が消耗してしまう。

 だから当分の間ミョウドーについては、現在の行政組織をそのまま流用して治めて貰うつもりだ。
 そもそも私には、個人的にはケカハだけで充分。

 ただミョウドーからは、香川用水に相当するものを取水出来る。
 ナハルと戦った時点でそのつもりだったから、私の領域となるのはありがたいし助かる。

 という事で、まずはナハルが住んでいた場所へ移動。
 今は私の領域なので、意識すれば瞬間移動が可能だ。

 屋敷はケカハには無かった大きな川の河口部にある、そこそこ大きな街の中心にあった。

『イノツの街で、かつては人口が3,000人を越えていました。しかし最近は人口の流出が多く、居住してるのはおよそ900人程です』

 そして屋敷の中は……若い女性ばかり22人ほどいる。最年少は12歳で一番上が18歳。
 世話役というか、夜のお相手だろう。この辺りの身の振り方も考えなければなるまい。

 まずは家の中に入らず、街全体を見下ろすことが出来る近くの山に陣取る。
 まずはミョウドーの住民全員に対して、今回の件についての神託を下すとしよう。

『私はケカハの土地神、コトーミです。ミョウドーの土地神であったナハルは先程私と戦った結果、敗北して消滅しました。
 これから私、コトーミがミョウドーの土地神を併任する事になります。ですが今回の戦いの件について、住民やナハルの信徒の責を問うようなことはいたしませんから、安心して下さい。
 なお、ナハルに脅されて信徒となった者は、脱退していただいても大丈夫です。ナハルは消滅しましたから、もはや恐れることはありません。
 以降のミョウドーのまつりごとについては、こちらで現状を調査した上で判断する事とします。以上です』

 長すぎたかな。そう思うけれど、言ってしまったものは仕方ない。
 当座はナハルが消滅し、私がミョウドーの土地神を継いだ事を理解して貰えば充分だ。
 
 あとミョウドーで、やらなければならない事はないだろうか。
 というかナハルは、ミョウドーに対して何かしていたのだろうか。

『ナハルはミョウドーの土地や政策等については、特に何もしていませんでした。以前ケカハに攻め込んで以降の住民に関わる行動としては、以下のようなものがあげられます。
 〇 気に入った女性を使用人として強制的に召し上げた(合計35人)
 〇 今回ケカハに攻め込む前に、住民を脅して強制的に信徒にした(合計2,212人)
 〇 食べ物や道具、衣服類等について、気に入った物があったら随時見返り無く召し上げた(計2,124件)
 〇 これらの行動について苦情等を申し立てた者に危害を加え、あるいは殺害した(計57件)』

 何というか……抑えが効かない駄々っ子が神になると、こんな感じだろうか。
 取り敢えずナハルを消滅させた事に対しては、罪悪感を感じないで済みそうだ。

 なら現時点で、至急手当てしなければならない事はあるだろうか。

「使用人として召し上げた女性達のうち、現時点でナハルの館に残っている22人について、本日現時点以降の食事等の手当をするとともに、今後の身の振り方を考える必要があります。
 また例年3月半ばに、ミドチ川流域やナガ川流域が洪水に襲われます。対策をとるなら2月中旬までに、ある程度の工事を完成させる必要があります」

 水の方は、ちょっと楽しみだ。
 頭の中でミョウドーの地図を思い浮かべたところ、ミドチ川からはケカハに水が引けそうだ。
 しかもミドチ川、流域面積がケカハ全体の面積より広い。これなら香川用水ならぬケカハ用水を作っても何とかなりそうだ。

 一方ナガ川の方もケカハ平野全体くらいの流域面積があるけれど、こちらはケカハに接する部分は無い。
 こちらは導水路を作って、ある程度水が増えたら海へ流すしか無さそうだ。

 しかし早急に何とかしなければならないのは、女性の方だ。
 面倒だけれど、仕方ない。
 私はナハルの屋敷へと移動する。

 ◇◇◇

 私の顕現の一体は、セキテツとの境にあるあの建物で、しっぽくうどんを食べながら、キンビーラとアルツァーヤに相談中だ。

「とりあえずナハルには勝ちました。ただ正直なところ、ミョウドーの領地や領民に対してどこまで手を出すべきか、悩んでいます」

「ナハルの後でしたら、何もしなくても住民には喜ばれるのではないでしょうか」

 その通りなのだ。だから私は頷く。

「ええ。神託でナハルを倒した旨を流しただけで、信者が1,000人近く出来てしまいました。ですので出来るだけの事はしてやりたいとは思うのですけれど」

「あまり難しく考えなくても、大丈夫ですわ」

 そうなのだろうか。
 アルツァーヤは私に微笑んで、そして続ける。

「たとえば私はここ100年程度、セキテツ内にほとんど手を加えていませんし、一般住民に対して神勅を下してもいません。例外はアナートからの依頼で避難民を受け入れた際、3,000人を受け入れられる場所を探した時くらいです。あとは神職からの祈願に応え、世話役と日常の会話をする。その程度ですわ」

 そう言えば以前、全知が言っていた。

『仕事とかやるべき事というものは、普通の神にはありません。土地や海、空域があれば、そこを治める神は当然在るべきもので、それ以上ではないのです。
 領域内にいる者の要望を聞いてもいいですし、無視してもいい。それに限らず何かをしてもいいし、しなくてもいい。ただそこに在る。それが通常の神の在り方です。維持神等、他の役割を持つ神は例外ですし、ナハルのように自分の領域拡大を志す神もいますけれども』

 全知の説明は、アルツァーヤの説明と内容的には一致している気がする。

「海神、それも沿海海の場合はもっと単純だ。祈りに応え助言する。あとは神職と多生のやりとりがある程度で、人と関わるのはそれくらいだ。
 ただ、アナートなら違う意見があったかもしれない。あれは人とともに在る神だったから」
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