虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される

高福あさひ

文字の大きさ
33 / 57

33

しおりを挟む
「レイフ様、今お時間よろしいでしょうか?」

「どうしたんだ、そんなにかしこまって。時間は大丈夫だが……」

「あ、あの……ご相談が、あり、ます」

「うん」

イアン兄さまに相談してすぐに、レイフ様に相談はできなかった。どうしても言えなくて、自分なりに考えをまとめてから、ようやく言える覚悟が決まった今日。

「実は、地方へ視察に行きたいと思っています。イアン兄さまに相談して、長期的にスケジュールを組むことで、一回の視察をしっかりと行えるように計画をしていて……」

「視察か。最近、護身術の練習をしていたのはそういうことだったか」

「はい……地方視察にはきちんと目的もあります。私はレイフ様のこ、婚約者として発表されていますが、一応その、皇女という身分をいただいております。その身分に恥じない働きをしたいです。やるべきことは、たくさんありますから」

「……急ぐ必要はないと思っていたが……ユーニスが望むのならば、俺は応援する」

「ありがとうございます、レイフ様」

眉根を寄せてはいるものの、イアン兄さまの言っていた通り、私の考えていることを否定することはなくて。それどころか、応援するとまで言ってくれた。その表情は、大手を振って賛成という感じではないが、私の意思を尊重するという、彼の気持ちを感じられる。

「視察に一緒に行けたらよかったんだがな、俺は帝都を離れられないだろう。その分、俺もやれることがあったらサポートできるようにするから、何でも相談してほしい」

レイフ様の温かな言葉に、少しだけ自信が出てきた。始まる前から、まだ何もしていないのに不安になっていた。何かあるかもしれない、と自信がなかった。決まってすらいないことに、そんなに頭を悩ませる必要はない、だって私は一人じゃないのだから。

「どこからまわっていく、とかも決まっていないので、気候状況などを含めて決定していくつもりです。アルムテアの気候状況も、今は勉強中です」

「アルムテアの北部はエインズワース領よりも厳しい積雪になるし、南部に行けば夏の気温が非常に高くなる。どちらも特徴のある気候だが、年によって南部は雨量が極端に多いん場合もあるしな。逆に北部は積雪量が多くなることもあるから、勉強することは重要だな」

「やはり、年によって変わりますよね……相手は自然ですし、エインズワース領も似たような感じでした。リリム王国内の他の領地がどういう感じだったかまでは、把握できていないですが……」

「それは仕方がないことだ。これから、頑張って行けばいい」

「はい、頑張ります」

もしや険悪ムードになるかも、なんて思っていたが、そんなことにはならずにレイフ様との話が進んでいく。彼自身もウェイン公爵領を治める立場だから、自分の領地を視察することはあるのだろう。気候に注意が必要だというのは、彼がよく感じたことの一つだったと考えられる。

エインズワース領も、年によっては積雪量の多さが全然違ってくるので、当然ながら作物の収穫量も変わる。そこは領地に住まう民たちの状況を正確に把握していなければ、対処できない状況に繋がっていくこともある。

実際に、あの領地では経営者が何も見ていなかったがゆえに、民たちが苦しんだ。通常であれば、収穫量に合わせて納める税金を一律どころか増額させ続けて徴収。その収入はあの一家の贅沢へ消えた。

私はあの場所では無力で、何かをすることはできなかった。少しでも止めることができる力があれば、変わっていたかもしれないと言うのに。発言どころか、存在さえも許されなかった私にできることなど、もう今では外からどうにかする以外にはない。

「レイフ様、私は……みんなが平等とは言いません。でも、みんなが幸せを感じられる場所を守ることは、大事なことだと思っているんです」

レイフ様には言えなかった言葉を、部屋に戻ってきたときにつぶやく。今はアルも窓から外へ出ていったために、本当に一人だ。心の中に秘めたものは、なかなかに言い難い。感情を抑えるため、ということもあるが、言いづらいことはそれなりにある。

「その幸せも、感じられる状況にするのが私たちの仕事だけどね……」

後悔ばかりが募っているけれど、それに囚われたままでは何もできない。私は、過去を悔いるのを辞めて前を向かなければならないのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

処理中です...