私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

文字の大きさ
260 / 363
第7部 才能と現実の壁

2-6因縁が渦巻く町内対抗の交流イベント

しおりを挟む
 私は〈東地区〉にある〈緑風公園〉に来ていた。折り畳み椅子が、たくさん並んでおり、敷地内には『東地区町内会』の主だったメンバーが、勢ぞろいしていた。定期的に、この公園に集まって、何らかのイベントを行うからだ。

 ただ、特に用がない時でも『町内会議』と称して、世間話や情報交換などをやっていた。料理を持ち寄ったり、バーベキューをしたり、ただ、楽しく食事会をする場合もある。基本は、懇親会みたいな感じかな。

 そういえば、こないだやったバーベキュー、すっごく美味しかったなぁ。肉屋のハリスさんは、超高級肉や希少部位を。八百屋のメイズさんは、とても新鮮な野菜を提供してくれた。お店をやってる人が多いから、食材が何気に豪華なんだよね。

 ここの町内会の人たちは、みんな、とても仲がいい。なにより、滅茶苦茶、結束力が強かった。問題があれば、腹を割って話し合うし。困った人がいれば、みんなで助け合う。まるで、全員が、家族のような存在だ。

 今日は『大事な会議がある』と聴いて、私が〈ホワイト・ウイング〉の代表としてやってきた。この町の伝統の『広場会議』にのっとり、この町内会の会議も、いつも公園で行われている。青空の下で話すのも、開放感があっていいと思う。

 ちなみに、町内会のイベントは、ほとんど、私が参加している。リリーシャさんは、相変わらず予約が一杯で、物凄く忙しいからだ。本来の仕事とは、ちょっと違うけど。町内会の参加も、会社への貢献になるから、全力で頑張っている。

 参加者は、年配の人が多いけど、みんな凄く元気だ。年齢を感じさせない、エネルギッシュな人が多い。会議が始まるまでの間は、ワイワイと世間話で盛り上がる。普段から仲良しだから、いざイベントをやる時も、一致団結するんだよね。

 私も、その中に交じって、色々な話をする。商店街の人たちは、たくさんのお客様を相手にしているせいか、私の知らない、様々な情報を持っていた。特に、奥様方の情報網は広く、滅茶苦茶、勉強になる。

 人気のお店、新店の評判、特売の情報など。やはり、買い物や飲食店に関しては、主婦の情報に勝るものはない。私は、自分の生活と観光案内のため、物凄く真剣に、話を聴き入っていた。必要に応じて、メモもとっておく。

 しばらくすると、みんなの前に、町内会長さんが現れた。彼が、ゴホンと咳払いをすると、急に静まり返る。

「えー、それでは〈東地区商店街〉の、定例会議を始めたいと思います。まず、本題に入る前に、何か話すべき案件は、あるでしょうか?」
 
 町内会長さんは、皆の顔を見回したが、何も意見は出てこなかった。

「では、さっそく、本題について話を始めましょう。ご存知の通り、我が商店街は、ここ数年、非常にマズイ状況にあります。何とか、今年こそは、挽回したいのですが。何か、よい意見は、あるでしょうか?」

 会長さんの言葉のあと、皆の表情が、とても険しくなる。腕を組んだり、顔をしかめたりして、黙り込んでしまった。いつもの明るい雰囲気とは、正反対だ。

 以前やった『ホワイトウイング・フェア』以降、お客さんの数が、かなり増えたと聴いてたけど。また、売り上げが、落ち込んでしまったのだろうか? 

「あの……一ついいでしょうか?」
 状況がよく分からないので、私は、小さく手を挙げる。
 
 すると、周囲にいた全員の視線が、私に集中した。しかも、なにやら、期待に満ちた目をしている。

 えぇっ――?! いったい、何事?

「おぉ、風歌ちゃん。また、何かいいアイディアでも、あるのかな?」
「いえ……そうではなくて。状況が、今一つ、呑み込めていないのですが。また、お客様が、減ってしまったのでしょうか――?」

「そういえば、風歌ちゃんは『東西戦』については、初めてだったね」
「えっ、東西戦……?」

 何かの勝負事? 二つに分かれて、売り上げを、競ったりとかするのかな?

「それについては、俺から説明しよう」
 スッと立ち上がったのは、牛乳屋の御主人の、ドナさんだった。身長が高く、体つきも筋肉質で、がっちりしている。何か、スポーツでも、やってそうな感じだ。

「実は、年に一度『東地区町内会』と『西地区町内会』の、交流イベントが行われるんだ。もう、かれこれ、十年以上も続いている、伝統行事でな」
「なるほど、そんな事をやってたんですか。何か、楽しそうですね」

「いや、そんな、楽しいもんじゃないんだ。その交流イベントってのは、東西対抗の、野球試合だからな」
「へぇー、スポーツ交流ですか。いいじゃないですか、野球の試合」

 私は、それを聴いた瞬間、急にワクワクしてきた。しかも、試合と聴いて、血が騒いでくる。子供のころは、よく男子たちに交じって、野球をやっていた。足が速いので、結構、活躍してたし。球技系全般は、かなり得意なので。

 ただ、私のテンションとは逆に、周囲にいた人たちの表情は暗く、なぜか、空気が重かった。いつも、ノリのいい商店街の人たちが、こんなに大人しいのは珍しい。

 しばしの沈黙のあと、ドナさんは、大きなため息をついてから、話を続けた。

「まぁ、俺は野球が好きだし、試合するのは構わん。だが、勝てればの話だ。ここ十年の結果は、0勝10負。完膚なきまでに、やられているんだ――」

「しかも、あいつら。そのことで、やたらと小馬鹿にしてきやがる。新参者の癖しやがって。歴史的には〈東地区商店街〉のほうが、はるかに昔からやってるんだから、大先輩だというのに」

 ドナさんは、物凄く悔しそうな表情で語る。

「そーだ、そーだ。あいつら、野球に勝ったぐらいで、でかい顔しやがって!」
「まったく、何も分かっちゃないんだよ。新参者たちは!」
「だいたい、やつらは、やり方が汚いんだ!」

 ドナさんの言葉に同調して、次々と不満の声が上がった。

 ちなみに〈東地区商店街〉は、この町で、一番、最初に作られた商店街。四魔女がいた、戦時中からあったため、非常に歴史が古い。対して〈西地区商店街〉は、戦後、かなり経ってから作られた、新しい商店街だ。

 客層も雰囲気も、真逆だし。元々〈西地区〉に対しては、何となく、ライバル心があるような気はしていた。でも、流石に、ここまでとは思わなかった。

 うーむ……これって、ただの交流イベントじゃ、なさそうだよね? なんか、色々と因縁があって、ややこしい事になってるみたいだし。これじゃ、むしろ、イベントをやるだけ、逆効果な気がするけど――。 

 皆の不満の声が、一段落したところで、私は、遠慮がちに提案してみた。

「あのー……そんなに嫌なら『やらない』という、選択肢はないのですか?」
 やればやるほど、遺恨が深まって行くような気がする。

「そんなの、絶対にダメだ! もし、ここで引いたら、奴ら『逃げ出した』と言うに決まってる」

「そーだ、そーだ。勝つまでは、絶対に止めないぞ!」
「そーよ、鼻を明かしてやらないと、気が済まないわ!」
「今年こそは、コテンパンにしてやる!」
 
 私の一言で、ますます、過熱してしまった。

 これは、やっぱり、試合するしかないのかなぁ――。確かに、負けっぱなしというのも、気分がよくないよね。交流イベントなのに、勝ち負けにこだわるのも、大人げない気がするけど。私も、かなりの負けず嫌いなので、気持ちは分かる。

「でも、十連敗って、相手は、そんなに強いんですか? ある程度、力が拮抗していれば、だいたい、五分五分になると思うんですけど……」

 素人の草野球なら、よほど強い選手でもいない限りは、そこまで、極端な戦績にはならないと思う。

「それがな『西地区町内会』の奴ら、毎回、強い助っ人を連れ来るんだよ」
「まったく、えげつないよな。ただの交流試合に、助っ人とか」
「奴らは、勝つためなら、手段は選ばないからな」
 
 あー、なるほど、そういうことね。でも、助っ人を呼ぶということは、相手は、かなり本気で、勝ちに来ているようだ。

「助っ人ありのルールなんですか? なら、うちも助っ人を呼んでは?」
「ルール上は、禁止ではないからな。だが、俺たちは、正々堂々やりたいんだ」
「そうだ。正々堂々勝ってこそ、意味があるってもんよ」

「でも、それで、ずっと負けちゃってるんですよね?」
 私の言葉で、シーンと静まり返った。

〈東地区商店街〉の人たちって、歴史が古いせいか、昔気質で、物凄く真っ直ぐなんだよね。対して〈西地区商店街〉は、比較的、新しいし、考え方が柔軟なんだと思う。

「別に、助っ人は、悪いことじゃないと思いますよ。プロ野球だって、助っ人枠がありますし。相手が使ってないのに使ったら、ズルいかもしれませんけど。同じ条件なら、フェアプレイじゃないですか?」

「とは言っても、うちらには、助っ人なんて、当てがないしなぁ」
「若い者は、みんな、大陸に行ってしまっているからねぇ」
「この地域は、年寄りばかりだからな」

 確かに、若者が多い〈西地区〉に比べ〈東地区〉は、年配の人たちが多い。お店の店主や女将さんたちも、ほとんどが中高年だ。

「助っ人は〈東地区〉に住んでいれば、誰でもいいんですか?」
「いや、あいつらの助っ人は〈西地区〉以外の者もいるからな」
「とりあえず、この町に住んでれば、いいんじゃないか? 厳密なルールもないし」

「そうですか。それなら、私に心当たりが有りますけど」
 私が答えた瞬間、みんなの視線が、一斉に突き刺さる。

「おぉ、流石は風歌ちゃん!」
「やっぱり、風歌ちゃんは〈東地区商店街〉の救世主だな!」
「いやー、頼りになるわね、風歌ちゃんは!」
「風歌ちゃんがいれば、今年こそ、勝てるな!」

 私の、何気ない一言で、偉い盛り上がりになってしまった。

「あの――心当たりが、少しあるだけで。まだ、決まった訳では……」
 知り合いのシルフィードに、当たってみるだけで、正直、確証はない。いきなり頼んでも、試合に出てくれるかどうか――?

「平気、平気。わしらなんか、何の当てもないからなぁ」
「そうそう、風歌ちゃんなら、また、やってくれるわ」
「また、こないだのフェアの時みたいに、パーっと頼むよ」
 
 みんなが、あまりにも、嬉しそうに声をあげるので、断るに断れない状況になってしまった。

 ぐっ――なんか、期待が重すぎる。とはいえ〈東地区商店街〉は、私のホームだし。何とかして、力になってあげたい。

 それに、スポーツなら、私は何だって得意だし。大事な人たちが、負けるのも見たくないし。こうなったら、私が一肌脱いで、とことんやるしかないよね。

 よし、商店街のみんなのためにも、勝利のためにも、全力で頑張りまっしょい!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『ちょっと本気だしたらドリームチームが出来てしまった』

 本気ですればたいていの事はできる。本気ですれば誰かが助けてくれる
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...