異世界立志伝

小狐丸

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引き続き移住者集めに奔走する

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 50数人の獣人族達を運んでから、急いで領都予定地の整備をする。下水道は、魔導具を使用するので、俺の作業が終わらないと工事が進まない。

 今回は、ルシエルやスーラにも手伝って貰い、街の中の基幹道路と下水道の整備を急いで終わらせる。

 ルシエルには、精霊魔法を使った開墾を、スーラには下水道整備に浄化の魔導具設置を手伝って貰った。
 井戸を土魔法で数カ所掘り、ポンプを設置すると、ランカスに住居建設の指揮を任せ、俺はバルデスとボーデンで、前回の集落へ転移する。



「さて、今日はここから東へ向かうか」

 アイテムボックスから車を出して、乗り込むと東へ向けて発車する。

「どの位の集落があると思う?」

「ローラシア王国近辺に残っている集落は少ないでしょうな。奴隷狩りが行われるようになって、殆どの部族はサーメイヤ王国を目指しましたから」

「……そう、俺もバルデスも奴隷狩りから集落の民を逃す為に戦って捕らえられた」

 バルデスやボーデンは、それぞれの集落で、一番の戦士だったらしい。

「残る集落は、多くても三つか四つだと思います」

 ふん、もう少し広範囲に探索するか。



 北西部の海岸付近から一日走った頃、俺の探知に100人規模の人間の反応を捕らえた。

「100人位の集落があるな」

 その気配がする方向へ車を走らせると、バルデスが匂いに反応する。

「私が知ってる匂いがします。奴隷狩りから逃れて、他の種族と集落を作ったのでは」

 バルデスが身体を張って逃した同胞の気配を感じるそうだ。


 やがて集落の側で車を降りて収納すると、徒歩で集落へ歩いて行く。
 さすが獣人族だけあって、匂いや気配を感じ取った戦士が、集落の入り口で警戒している。
 俺達が近付くと、同胞のバルデスが一緒に居る事が分かり、緊張感がゆるむ。

「バルデス!」

 集落の入り口に集まる、虎人族や狼人族の戦士の中から、バルデスの名を呼び近付く者がいた。

「バルデス!無事だったか!」

 バルデスよりも年嵩の虎人族の男が、バルデスの肩を叩き嬉しそうに話し掛ける。

「親父も元気そうだな」

 なんと、バルデスの父親みたいだ。
 バルデスやボーデンは獣人の中でも動物よりというか、イリア、コレット、ユーファンみたいに耳や尻尾以外は、人と変わらない者も居れば、バルデスやボーデンみたいな、顔も動物の特徴が多く残る者も居る。
 何が言いたいかというと、俺には虎の区別はつき辛いのだ。
 この集落の虎人族や熊人族にも耳や尻尾以外は、人と変わらない者も居るので、その辺の違いはよくわからない。

 バルデスにより、集落の人達へ移民の説明をすると、話はスムーズに進んだ。

 さすがに100人以上居たので、領都予定地まで転移で運ぶのが大変だった。MPポーションを飲みながら運んだが、二日に渡ってしまった。
 持ち運び出来る簡易ゲートを造った方が良いかもな。

 早速、一度戻った俺は、スーラと簡易ゲートの魔導具を作成する。屋敷の地下室に、固定の転移ゲートを設置して置く。

「スーラ、領都予定地に建てる屋敷の地下室に、ゲートの設置を頼んで良いかな」

「お任せくださいです。設置するだけならスーラでも大丈夫なのです」

「頼むよ、屋敷がまだ出来ていないから、小屋を建てて地下室への入り口を造っておくから」




 それから俺はバルデスとボーデンを連れて、獣人族の集落を探してまわった。

 結果、新たに三つの集落が見つかり、どの集落も移住に前向きで、ドラーク子爵領内で自由に集落を作って暮らしたい人達も居たので、食料やお金の援助をして、集落を作る事には許可を出しておいた。

 最後に、イリアとルキナを連れて、ローラシア王国内にある兎人族の集落を探しに行く事にした。
 そこには、イリアの母が居るそうだ。

 以前の場所に在るかどうか分からないが、その付近を中心に探索しようと思っている。
 ルキナにとっても、可愛がってくれた祖母なので、会いたいはずだ。

「ねぇ、パパぁ、もうすぐかなぁ、」

 ルキナが待ち遠しいのか、何度も聞い手来る。

「そうだね、多分もう直ぐ着くよ」

 その度、そう言ってるけど、今度は本当に直ぐに着きそうだ。俺の探知範囲に集落らしき反応をとらえた。

「あっ!パパ!見つけたよ!」

 ルキナが指差す方向に、集落が見えて来た。

「間違いないと思います。私達が暮らしていた集落です」

 イリアと旦那さんが、小さなルキナを連れて、より良い環境を目指して旅立つまで暮らした集落。
 あの時は、イリア達の集落も食糧事情がギリギリだったらしい。奴隷狩りから逃れるという事もあったが、自分達家族が居なくなれば、集落の食い扶持が減るという側面もあったそうだ。


 集落は、兎人族だけの集落だった。

「イリア!イリアじゃないか!」

 兎人族の男性が、イリアの名前を呼び出て来た。

「アラン、久しぶりね。一年ぶりかしら」

「マイクはどうした?その人族は誰だ?」

 マイクとは、亡くなった旦那さんの名前か。

「マイクは死んだわ。この方は、カイト様。今私が仕えている方で、私達親子を救ってくれた方」

「ルキナのパパなのー!」

 ルキナの発言に、アランと呼ばれた男が俺を睨みつける。

「どういうことだイリア!
 この人族に騙されてるのか!
 それとも、弱味でも握られてるのか!」

 何か酷い言われようだな。
 アレかな、こいつイリアに気があるのかな。
 イリアは美人だし、スタイルも抜群だもんな。

「カイト様の事を悪く言わないで!私はカイト様に、身も心も捧げているの!」

「パパのことを悪くいうなー!」

 イリアとルキナが怒って、アランと呼ばれた男に反論する。

「どうしたんだい、騒がしいね」

 集落から中年の女性が出て来た。

「お母さん!」「おばあちゃん!」

 イリアの母親のようだ。

「……イリア、ルキナ、良く無事で……」

 イリアの母親が涙ぐみ、イリアとルキナを抱きしめる。

 その後、イリアの母親、名前をマーサさんを含め、集落の人達にドラーク子爵領への移民を持ちかけた。イリア達親子が、口減らしで集落を出る位の貧しさだ。集落の人達は喜んで移民する事に同意してくれた。……約一名を除いて。

「皆んな騙されるな!
 人族の言う事を信じるのか!
 俺達は人族に虐げられて来たんじゃないのか!」

 一人熱くなるアランに、他の集落の人達は引いている。

「そうかい、マイクは死んだのかい。残念だったね。
 それで、カイト様に命を救って頂いて、ルキナを含めて家族になってくれたのかい。それは何かい、イリアの旦那様という事かい。あゝ側室かい。それは仕方ないよ。カイト様は、貴族様になったんだから、妾でも恩の字じゃないか」

 マーサさんは、アランを無視してイリアとかしましく話している。

「じゃあ、領都に住居を用意していますから、そこまでは簡易ゲートで運びます。
 向こうで、住む場所と食事は支給しますが、お年寄りで身体が動かし辛い方以外は、農業でも職人でも、なんでも良いので職に就いて下さい」

 俺もめんどくさくなって、アランを無視して話を進める。細かな移住の条件を話しておく。

 その後、手早くその場に簡易ゲートを設置する。

 持っていく荷物で、持ち切れない物は、何時もの如く俺がアイテムボックスに収納する。
 準備が出来た人から順番にゲートを潜って貰う。

 気が付けば、アランだけは移住を拒否して、この場に残ると言いだした。他の人達から、馬鹿なことは言わず、一緒に行こうと説得されたが、一人集落に戻ってしまった。

「カイト様、アランの事は放って置くしかないよ。あの子はイリアの事が、マイクと一緒になる前から好きだったのさ。
 それがマイクが死んだと聞いて、自分がイリアと一緒に成れると思ったのかね。
 イリアを見れば、カイト様にゾッコンなのは直ぐに分かりそうなモノだけどね。
 厳しいこと言うけど、一人でもあからさまに不満を持つ人間は連れて行かない方が良いよ」

 結局、アラン一人残して皆んなはゲートで転移していった。
 最後に簡易ゲートを撤去すると、俺はイリア、ルキナ、マーサさんと領都へ転移する。

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