【完結】嘘も恋も、甘くて苦い毒だった

綾取

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絡まる思惑

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メリッサはユリウスに、親しげな口調で話しかける。
「ねえユリウス、気づいてる?学園中で、あなたとエリシアのことが噂になってるの」
 ユリウスが怪訝そうに眉をひそめると、メリッサは少し困ったような顔を見せる。
「特にレオンハルト様が…ちょっと誤解してるみたいなのよね。ユリウスとエリシアがすごく親しいって…まあ、そう見えなくもないし」
ユリウスは驚きつつも冷静に「俺とエリシアはただの友人だ」と答えるが、メリッサはため息をつきながら、まるで気遣うように続ける。
「もちろん、私はそう思ってるわ。でも…誤解って厄介じゃない?下手に説明しようとすると、かえって“庇っている”って思われることもあるし…」
ユリウスの表情が少し曇る。
「だからね、エリシアのためにも…少し距離を取ったほうがいいんじゃないかしら?あなたのせいで、彼女の立場が悪くなってしまったら可哀想だし…」
ユリウスはすぐには答えられなかった。エリシアが噂されているのは気になったし、レオンハルトの誤解が彼女に影響を与えるのは避けたい。
「俺が…エリシアの邪魔になってる、ってことか?」
「そんなつもりはないけれど…エリシアのことを大事に思うなら、最善の方法を考えるべきじゃない?」
メリッサは優しげに微笑みながら言う。ユリウスは迷い、そして静かにため息をついた。
「考えてみるよ」
メリッサは満足そうに微笑んだ。

放課後、ユリウスは静かな中庭のベンチに座り、ぼんやりと空を見上げていた。昼間、メリッサに言われた言葉が頭を巡り、心の中で反芻している。
「エリシアのためにも、少し距離を取ったほうがいいんじゃないかしら?」
 メリッサが言ったその一言が、ユリウスの胸に重く響いていた。確かに、エリシアに対して特別な気持ちを抱いている自分を、他の人々がどう思うかを考えたことがなかった。
 ましてや、レオンハルトが誤解しているとなると、彼女に余計な苦しみを与えてしまうのではないか。そう考えると、メリッサの言うことが少しずつ現実味を帯びてくる。
 ユリウスはため息をつく。
「距離を置くべき、か…」
呟きながら、エリシアとリリィが楽しそうに話している姿が目に入った。エリシアの笑顔を見ると、どうしても心が痛んだ。いつもならすぐに声をかけていたはずだが、今はその一歩が踏み出せない。
「少し、考えたほうがいいのかもしれない。」
そう呟くと、ユリウスは再びベンチに座り込んだ。しばらくその場を離れたくないという思いが湧く一方で、エリシアを守るためにどうするべきなのか、答えは見つからなかった。
 その時、柔らかな声が背後から響いた。
「ユリウス」
振り向くと、メリッサが微笑みながら立っていた。
「昨日のこと、考えてみてくれましたか?」
ユリウスは少しだけ顔をしかめてから、無理に、でも笑顔を浮かべて答える。
「ああ、考えたよ。でも、距離を取ると言っても、」
メリッサはそのまま隣に座り、心配そうに目を伏せながら話し続ける。
「実は、エリシアがあなたを利用しているって噂になっているの。」
ユリウスは思わず眉をひそめた。
「それは誤解だ。そんな事はない。」
「もちろん、エリシアがそんなことをするような人だとは思わないわ。でも、周りの人たちは違うの。特にレオンハルト様が。どうやらエリシアに対して誤解を抱いているみたいよ。」
ユリウスの胸に不安が広がった。レオンハルトが誤解しているとなると、その影響が彼女にとってどれほどの負担になるかを考えると胸が痛んだ。
「それにね、もしユリウスがエリシアと少し距離を取れば、誤解も解けるかもしれない。でも、もっと良い方法があるのよ。」
 メリッサは優しく微笑みながら、ユリウスに提案を持ちかける。
「どういう方法だ?」
ユリウスは興味深げに尋ねた。メリッサはまるで心配する友人のように、穏やかな口調で続ける。
「私たちが“付き合っている”ってことにすれば、みんなの関心が私たちに向くわ。それに、エリシアの誤解も徐々に解けるでしょう。」
ユリウスは驚いてメリッサを見つめた。
「え?それって…」
「そうすれば、エリシアのことを誤解している人たちが私たちに関心を持つから、エリシアはもう気にされなくなるわ。私たちが付き合っていることで、誤解も解けていく。何より、エリシアもこれ以上傷つけずに済むんじゃないかしら?」
メリッサは顔に微笑みを浮かべていたが、その笑顔には少しの計算が込められているようにも見えた。ユリウスは迷いながらも、メリッサの言葉に引き寄せられていた。
「でも、君が巻き込まれることになるんじゃないか?」
「構わないわ。少しの間だけのことだもの。それに、私が上手く振舞えば、噂もすぐに広まるし、エリシアの誤解も解けるわ。」
ユリウスは頭を抱えたくなるほど混乱していた。この方法がエリシアを守るためには一番良いのだろうか。だが、どうしても心の中で何かが引っかかる。
「少し考えてみるよ。」
ユリウスが答えると、メリッサは嬉しそうに微笑んだ。
「もちろん、無理にとは言わないわ。ユリウスが納得したときで構わない。」
メリッサは軽く頷くと、優雅に立ち去った。ユリウスはその背中を見送りながら、胸の奥に残る不安な気持ちを抱えたまま、再び空を見上げた。彼の心は揺れ動き、どんな選択をすべきか、依然として答えが出せなかった。
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