12 / 20
企て
しおりを挟む
昼下がり、学園の庭でエリシアは一人ベンチに腰掛けていた。しばらくすると、メリッサがゆっくりと近づいてくる。
「まあ、エリシア。今日は一人なのね?」
エリシアは少し驚き顔を上げたが、すぐに微笑んで応じた。
「ええ。少し風が気持ちよかったから、ここで休んでいたの」
「そうなの。でも、最近あなたをよく見かけるのよ。ほら、レオンハルト様とご一緒のところを」
メリッサは意味深な笑みを浮かべながら言った。エリシアは少し照れくさそうに微笑んだ。
「ええ。学園でお会いすることが増えたの。お話しできるのは嬉しいわ」
その言葉を聞いて、メリッサの笑みがさらに深まる。
「ふふ、やっぱり特別な方なのね」
「えっ?ええ、そうね」
エリシアは戸惑いながらも頷いた。その反応を見てメリッサは満足げに微笑んだ。
そして、その会話の一部を、偶然耳にした人物がいた。ユリウスだ。
庭園を通りかかった彼は、エリシアとメリッサのやり取りを聞き、足を止めた。もう噂は薄らいでいるようだが、エリシアとは随分会話を交わしていない。言葉にできない感情を抱えながら、彼はその場を静かに離れた。
ふたりは気づいていない。あの会話こそが、メリッサがユリウスに「偶然」聞かせるために用意した舞台だったことを。
メリッサはユリウスがここを通りかかる事を計算に入れていてエリシアに話しかけたのだった。
翌日、ユリウスと顔を合わせたメリッサはさりげなく「そう言えば昨日エリシアに会ってね、レオンハルト様とは順調なようだったので、『ユリウスとの噂はもう心配なさそうで良かったわね』って言ったら『ユリウスは友人よ。レオンハルト様もいらっしゃるしもう大丈夫。』と言っていたわ。」答えたところを都合よく切り取って脚色しユリウスに伝える。
更に「ユリウスにはあなたがいらっしゃるから、もうそんな噂は立たないでしょ?」と言っていたと嘘の言葉まで付け足した。
メリッサの言葉に、ユリウスの胸がざわついた。
(エリシアが……)
「そうか。エリシアは君との事は本当だと思っているんだな。」
ユリウスの声はどこか力なく響いた。それを見て、メリッサは内心ほくそ笑む。
「でも、私はユリウスがそばにいてくれると安心するわ。もう偽りの関係だなんて忘れてしまいたいくらい。」
彼の心の隙間に入り込むように、メリッサは微笑んだ。揺れる彼の想いを、確かにメリッサは捕らえつつあった。
リリィは最近、ユリウスとほとんど話せていないことが気がかりだった。話しかけようとしても、いつも彼の隣にはメリッサがいて、妙な圧を感じて足が止まってしまう。
以前は、エリシアとユリウスと三人でよく一緒に過ごしていたのに──あの穏やかな時間が、遠いものになってしまった気がした。
気づけば、自分も含めてエリシアとユリウスが話している姿すら、ほとんど見かけない。エリシアも、それをどこか寂しそうに感じているように見える。
それに、ユリウス自身も、私たちと距離を置いているように見えるのは、気のせいだろうか。
……いいえ、たとえ気のせいでも、このままにはしたくない。
リリィは決めた。一度、ちゃんとユリウスと話してみようと。
「まあ、エリシア。今日は一人なのね?」
エリシアは少し驚き顔を上げたが、すぐに微笑んで応じた。
「ええ。少し風が気持ちよかったから、ここで休んでいたの」
「そうなの。でも、最近あなたをよく見かけるのよ。ほら、レオンハルト様とご一緒のところを」
メリッサは意味深な笑みを浮かべながら言った。エリシアは少し照れくさそうに微笑んだ。
「ええ。学園でお会いすることが増えたの。お話しできるのは嬉しいわ」
その言葉を聞いて、メリッサの笑みがさらに深まる。
「ふふ、やっぱり特別な方なのね」
「えっ?ええ、そうね」
エリシアは戸惑いながらも頷いた。その反応を見てメリッサは満足げに微笑んだ。
そして、その会話の一部を、偶然耳にした人物がいた。ユリウスだ。
庭園を通りかかった彼は、エリシアとメリッサのやり取りを聞き、足を止めた。もう噂は薄らいでいるようだが、エリシアとは随分会話を交わしていない。言葉にできない感情を抱えながら、彼はその場を静かに離れた。
ふたりは気づいていない。あの会話こそが、メリッサがユリウスに「偶然」聞かせるために用意した舞台だったことを。
メリッサはユリウスがここを通りかかる事を計算に入れていてエリシアに話しかけたのだった。
翌日、ユリウスと顔を合わせたメリッサはさりげなく「そう言えば昨日エリシアに会ってね、レオンハルト様とは順調なようだったので、『ユリウスとの噂はもう心配なさそうで良かったわね』って言ったら『ユリウスは友人よ。レオンハルト様もいらっしゃるしもう大丈夫。』と言っていたわ。」答えたところを都合よく切り取って脚色しユリウスに伝える。
更に「ユリウスにはあなたがいらっしゃるから、もうそんな噂は立たないでしょ?」と言っていたと嘘の言葉まで付け足した。
メリッサの言葉に、ユリウスの胸がざわついた。
(エリシアが……)
「そうか。エリシアは君との事は本当だと思っているんだな。」
ユリウスの声はどこか力なく響いた。それを見て、メリッサは内心ほくそ笑む。
「でも、私はユリウスがそばにいてくれると安心するわ。もう偽りの関係だなんて忘れてしまいたいくらい。」
彼の心の隙間に入り込むように、メリッサは微笑んだ。揺れる彼の想いを、確かにメリッサは捕らえつつあった。
リリィは最近、ユリウスとほとんど話せていないことが気がかりだった。話しかけようとしても、いつも彼の隣にはメリッサがいて、妙な圧を感じて足が止まってしまう。
以前は、エリシアとユリウスと三人でよく一緒に過ごしていたのに──あの穏やかな時間が、遠いものになってしまった気がした。
気づけば、自分も含めてエリシアとユリウスが話している姿すら、ほとんど見かけない。エリシアも、それをどこか寂しそうに感じているように見える。
それに、ユリウス自身も、私たちと距離を置いているように見えるのは、気のせいだろうか。
……いいえ、たとえ気のせいでも、このままにはしたくない。
リリィは決めた。一度、ちゃんとユリウスと話してみようと。
20
あなたにおすすめの小説
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
告白相手を間違えた令嬢に待っていたのは、暴君皇帝からの寵愛でした。
槙村まき
恋愛
イヴェール伯爵令嬢ラシェルは、婚約前の最後の思い出として、ずっと憧れていた騎士団長に告白をすることにした。
ところが、間違えて暴君と恐れられている皇帝に告白をしてしまった。
怯えるラシェルに、皇帝は口角を上げると、告白を受け入れてくれて――。
告白相手を間違えたことから始まる恋愛ストーリー。
全24話です。
2月5日木曜日の昼頃に完結します。
※小説家になろうに掲載している作品を改題の上、連載しています。
婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。
石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。
その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。
実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。
初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。
こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
機械仕掛けの夜想曲
柊
恋愛
名ピアニストである伯爵令嬢フローリア・ベルクレイン。素晴らしい演奏技術を持つ彼女だが、完璧すぎる旋律故に「機械仕掛けの演奏」と陰口を叩かれていた。さらにそのことで婚約解消をされ、妹に乗り換えられてしまう。妹にもそれをなじられ、心が折れてしまったフローリアは「少し休みたい」とピアノを弾くことをやめてしまう。
そして、ある夜、アルベルト・シュタインヴァルトが突如来訪。「人命を救うために、フローリア嬢のピアノの演奏技術が必要だ」と告げる。それにフローリアがとった行動は……。
※他のサイトにも重複投稿してます。
[異世界恋愛短編集]私のせいではありません。諦めて、本音トークごと私を受け入れてください
石河 翠
恋愛
公爵令嬢レイラは、王太子の婚約者である。しかし王太子は男爵令嬢にうつつをぬかして、彼女のことを「悪役令嬢」と敵視する。さらに妃教育という名目で離宮に幽閉されてしまった。
面倒な仕事を王太子から押し付けられたレイラは、やがて王族をはじめとする国の要人たちから誰にも言えない愚痴や秘密を打ち明けられるようになる。
そんなレイラの唯一の楽しみは、離宮の庭にある東屋でお茶をすること。ある時からお茶の時間に雨が降ると、顔馴染みの文官が雨宿りにやってくるようになって……。
どんな理不尽にも静かに耐えていたヒロインと、そんなヒロインの笑顔を見るためならどんな努力も惜しまないヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
「お望み通り、悪役令嬢とやらになりましたわ。ご満足いただけたかしら?」、その他5篇の異世界恋愛短編集です。
この作品は、他サイトにも投稿しております。表紙は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:32749945)をおかりしております。
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる