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パトリシアと変な再会をしてから1ヶ月。
仲良しの夫人同士で集まってお茶会を楽しんでいたら、驚くような事を言われた。
「例の二人、ついに駆け落ちなさったそうね」
一瞬、言われた意味がわからず、カップ片手に固まってしまう。
それから急に意味を理解した。
「えっ!?」
「まあ、御存じなかったの?それはごめんなさい。余計な事を言ってしまって」
「いいえ……」
知らなかった。
もしかして、グレッグが私の耳に入らないように気を遣ってくれていたのかしら。体調を整える一環で、リラックスして楽しい時間を過ごすように心がけているから。
「今はどこにいるのかしら」
「駆け落ちなんて、はしたない」
「そういう可笑しな人たちに付き纏われて、本当に苦労なさったわね」
「だけどもう、これで煩わされる事もなくなると思えばよかったわ」
次々に励まされ、私は笑顔を返す。
「もう昔の事ですわ」
すると夫人たちはほっとしたように笑顔を弾けさせた。
「そうよね!今は幸せいっぱいだもの、関係ないわね!」
「ワイズ子爵のような愛妻家と結婚なさって本当に羨ましいわ!」
「ワイズ子爵の溺愛は有名ね」
「私なんて結婚半年で化けの皮が剥がれて、優しさの欠片もありませんのよ?」
「またまた。あなた方の痴話喧嘩も可愛いものよ」
「そうよ。喧嘩するほど仲がいいと言うじゃない」
優雅なお茶会はいつも平和で、誰もが自分の幸せを自覚している。
私も私の幸せを再確認し、グレッグを思い出しては感謝と愛で胸が熱くなる。
その日の夕食で、私は例の件をグレッグに話した。
「あの二人、駆け落ちですって」
「おや。ついにやったか」
「あなた知ってた?」
「どうかな」
「知っていたのね」
軽く睨んでステーキを切る。
「まあ、どうでもいい事よ」
「うん。私も、そう思うよ」
「けれど、話題には上がるわよね。皆、噂好きだから」
「そういう時は?」
「『もう他人ですから』」
グレッグと笑顔を交わし、いつも通り楽しく会話を交わしながら夕食を終えた。
しばらくして母から手紙が届いた。
ブルック伯爵夫人と父が愛人関係にあった証拠が見つかり、ウェズレイ伯爵が裁判を起こすとの事。
既に社交界から爪弾き状態だったところへ、パトリシアの駆け落ち。
それも勘当された男と略奪愛を貫いての駆け落ちで、かなりの軽蔑を集めているのは、私の耳に届くほど最新のビックな話題となっていたのだ。
そこへ母親のほうまで亡き夫の友人と不倫関係にあったかもしれないという事で、様々な尾ひれもついて、ブルック伯爵家の母娘は酷い悪女として認識され、若干、父が同情を寄せられるようにすらなった。
ウェズレイ伯爵は最速で裁判に勝利した。
そしてあまりにも破廉恥という事で国王の逆鱗に触れ、パトリシアの母親は追放され、ブルック伯爵家はまったく血の繋がらない有力貴族の手に渡った。
父は爵位剥奪は免れたものの、全財産を母への慰謝料として支払い、反省の意を表す為に爵位を返上した。そして教会に身を寄せたらしい。
修道士にはなれず、今では罪を悔い改めるため番小屋で雑用などをしているそうだ。
私を殺すとまで言った父だから、同情はしない。
それでも、安全な場所で全うに生きようとしているという噂に私は胸を撫で下ろした。
仲良しの夫人同士で集まってお茶会を楽しんでいたら、驚くような事を言われた。
「例の二人、ついに駆け落ちなさったそうね」
一瞬、言われた意味がわからず、カップ片手に固まってしまう。
それから急に意味を理解した。
「えっ!?」
「まあ、御存じなかったの?それはごめんなさい。余計な事を言ってしまって」
「いいえ……」
知らなかった。
もしかして、グレッグが私の耳に入らないように気を遣ってくれていたのかしら。体調を整える一環で、リラックスして楽しい時間を過ごすように心がけているから。
「今はどこにいるのかしら」
「駆け落ちなんて、はしたない」
「そういう可笑しな人たちに付き纏われて、本当に苦労なさったわね」
「だけどもう、これで煩わされる事もなくなると思えばよかったわ」
次々に励まされ、私は笑顔を返す。
「もう昔の事ですわ」
すると夫人たちはほっとしたように笑顔を弾けさせた。
「そうよね!今は幸せいっぱいだもの、関係ないわね!」
「ワイズ子爵のような愛妻家と結婚なさって本当に羨ましいわ!」
「ワイズ子爵の溺愛は有名ね」
「私なんて結婚半年で化けの皮が剥がれて、優しさの欠片もありませんのよ?」
「またまた。あなた方の痴話喧嘩も可愛いものよ」
「そうよ。喧嘩するほど仲がいいと言うじゃない」
優雅なお茶会はいつも平和で、誰もが自分の幸せを自覚している。
私も私の幸せを再確認し、グレッグを思い出しては感謝と愛で胸が熱くなる。
その日の夕食で、私は例の件をグレッグに話した。
「あの二人、駆け落ちですって」
「おや。ついにやったか」
「あなた知ってた?」
「どうかな」
「知っていたのね」
軽く睨んでステーキを切る。
「まあ、どうでもいい事よ」
「うん。私も、そう思うよ」
「けれど、話題には上がるわよね。皆、噂好きだから」
「そういう時は?」
「『もう他人ですから』」
グレッグと笑顔を交わし、いつも通り楽しく会話を交わしながら夕食を終えた。
しばらくして母から手紙が届いた。
ブルック伯爵夫人と父が愛人関係にあった証拠が見つかり、ウェズレイ伯爵が裁判を起こすとの事。
既に社交界から爪弾き状態だったところへ、パトリシアの駆け落ち。
それも勘当された男と略奪愛を貫いての駆け落ちで、かなりの軽蔑を集めているのは、私の耳に届くほど最新のビックな話題となっていたのだ。
そこへ母親のほうまで亡き夫の友人と不倫関係にあったかもしれないという事で、様々な尾ひれもついて、ブルック伯爵家の母娘は酷い悪女として認識され、若干、父が同情を寄せられるようにすらなった。
ウェズレイ伯爵は最速で裁判に勝利した。
そしてあまりにも破廉恥という事で国王の逆鱗に触れ、パトリシアの母親は追放され、ブルック伯爵家はまったく血の繋がらない有力貴族の手に渡った。
父は爵位剥奪は免れたものの、全財産を母への慰謝料として支払い、反省の意を表す為に爵位を返上した。そして教会に身を寄せたらしい。
修道士にはなれず、今では罪を悔い改めるため番小屋で雑用などをしているそうだ。
私を殺すとまで言った父だから、同情はしない。
それでも、安全な場所で全うに生きようとしているという噂に私は胸を撫で下ろした。
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