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「私を通さず売買するのは不可能ですから、恐らく嘘が罷り通っているのでしょう。職務怠慢ですね」
ジョニーの両親が経営する宿に部屋を取り、食堂で隅のテーブルを都合してもらって夕食を囲んでいる。
私は後悔と反省と羞恥心に苛まれすぎて、もうどうでもいいような投げやりな気分になってきていた。だからといってこれ以上、逃れることはできないし、する気もない。
「あなたを責める人間なんていませんよ」
パーシヴァルがパンを千切りながら言った。
「しかし旨いシチューだなぁ!おかわりしよう」
騎士は夕食に夢中だ。
マクミラン司祭も年相応の人間らしいペースで食事をしているので驚いてしまうけれど、二人まとめて視界に収めるよう努めてあまり個人に注目しないようにしていた。
それでもマクミラン司祭が肉料理に手を付けているのは気に留めるべき事項だと思われた。但し私から踏み込んだ質問をする気はない。その資格もない。
「山荘に行ってルシアンがいても庇わないでくださいね」
マクミラン司祭が硬質な声で命じる。
私も肉を切り分けながら、対抗するように答える。
「この期に及んでこれ以上の御迷惑は掛けません」
「あなたを疑っているんじゃなく、心配しているんです」
次の瞬間、思わぬことが起きた。
咀嚼中のパーシヴァルが勢いよく手の甲でマクミラン司祭の腕の辺りを叩いたのだ。
「!?」
私の認識ではパーシヴァルという気さくな騎士はマクミラン司祭の従者ということになっていたので、驚かずにはいられなかった。
当然、食事の手も止まる。
嚥下したパーシヴァルは横目でマクミラン司祭を見遣り言った。
「不味くなるような話し方しないでくださいよ」
「……」
「ここまで来てくださったんだから、もっと優しくしないと」
マクミラン司祭も横目でパーシヴァルを見遣り手を止めた。
私への気遣いの仕方で揉めて欲しくはない。二人の関係が実際にどういうものであったとしても、私の過ちが迷惑を掛けている元なのだから、この場で叱責されようと本来なら文句は言えなかった。
私が口答えしたせいだ。
「すみません。私は平気ですから。マクミラン司祭のお気遣いを無駄にしないよう、精一杯のことはさせていただきます。それが罪滅ぼしの始まりになるでしょうから」
「いやいや、あなたに罪はないでしょう。騙した男が悪いんです」
「いえ、元はと言えば私が軽率でした。気を引き締めて明日に臨みます。お二人とも、よろしくお願いいたします」
心を込めて明日からの捜索に対する挨拶をすると、聖職者と騎士の間に一瞬生まれていた張り詰めた空気が消えた。
「レディ・ウィンダム、そんなに畏まらないで。何があっても俺たちでお守りしますから」
パーシヴァルが笑顔で言ったその言葉尻を奪うようにマクミラン司祭が私の目を覗き込んだ。
「エスター」
「……はい」
心して次の言葉を待つ。
するとマクミラン司祭が微笑んだ。
「!」
その神々しくも慈悲深い微笑みに抗える人間なんて、この世界に存在しない。
驚くと同時に胸が高鳴り、急激に顔が熱くなる。
マクミラン司祭が目を細め笑みを深めた。
「デザートを頼もう。ジョニーがおすすめを教えてくれる」
「……!」
それまでの出来事の全てが頭の中から完全に吹き飛び、私は甘い囁きにただ必死に頷いた。
それ以外、できることがなくて。
ジョニーの両親が経営する宿に部屋を取り、食堂で隅のテーブルを都合してもらって夕食を囲んでいる。
私は後悔と反省と羞恥心に苛まれすぎて、もうどうでもいいような投げやりな気分になってきていた。だからといってこれ以上、逃れることはできないし、する気もない。
「あなたを責める人間なんていませんよ」
パーシヴァルがパンを千切りながら言った。
「しかし旨いシチューだなぁ!おかわりしよう」
騎士は夕食に夢中だ。
マクミラン司祭も年相応の人間らしいペースで食事をしているので驚いてしまうけれど、二人まとめて視界に収めるよう努めてあまり個人に注目しないようにしていた。
それでもマクミラン司祭が肉料理に手を付けているのは気に留めるべき事項だと思われた。但し私から踏み込んだ質問をする気はない。その資格もない。
「山荘に行ってルシアンがいても庇わないでくださいね」
マクミラン司祭が硬質な声で命じる。
私も肉を切り分けながら、対抗するように答える。
「この期に及んでこれ以上の御迷惑は掛けません」
「あなたを疑っているんじゃなく、心配しているんです」
次の瞬間、思わぬことが起きた。
咀嚼中のパーシヴァルが勢いよく手の甲でマクミラン司祭の腕の辺りを叩いたのだ。
「!?」
私の認識ではパーシヴァルという気さくな騎士はマクミラン司祭の従者ということになっていたので、驚かずにはいられなかった。
当然、食事の手も止まる。
嚥下したパーシヴァルは横目でマクミラン司祭を見遣り言った。
「不味くなるような話し方しないでくださいよ」
「……」
「ここまで来てくださったんだから、もっと優しくしないと」
マクミラン司祭も横目でパーシヴァルを見遣り手を止めた。
私への気遣いの仕方で揉めて欲しくはない。二人の関係が実際にどういうものであったとしても、私の過ちが迷惑を掛けている元なのだから、この場で叱責されようと本来なら文句は言えなかった。
私が口答えしたせいだ。
「すみません。私は平気ですから。マクミラン司祭のお気遣いを無駄にしないよう、精一杯のことはさせていただきます。それが罪滅ぼしの始まりになるでしょうから」
「いやいや、あなたに罪はないでしょう。騙した男が悪いんです」
「いえ、元はと言えば私が軽率でした。気を引き締めて明日に臨みます。お二人とも、よろしくお願いいたします」
心を込めて明日からの捜索に対する挨拶をすると、聖職者と騎士の間に一瞬生まれていた張り詰めた空気が消えた。
「レディ・ウィンダム、そんなに畏まらないで。何があっても俺たちでお守りしますから」
パーシヴァルが笑顔で言ったその言葉尻を奪うようにマクミラン司祭が私の目を覗き込んだ。
「エスター」
「……はい」
心して次の言葉を待つ。
するとマクミラン司祭が微笑んだ。
「!」
その神々しくも慈悲深い微笑みに抗える人間なんて、この世界に存在しない。
驚くと同時に胸が高鳴り、急激に顔が熱くなる。
マクミラン司祭が目を細め笑みを深めた。
「デザートを頼もう。ジョニーがおすすめを教えてくれる」
「……!」
それまでの出来事の全てが頭の中から完全に吹き飛び、私は甘い囁きにただ必死に頷いた。
それ以外、できることがなくて。
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