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「おめでとう、エスター。とっても綺麗よ」
ミシェルが心からのお祝いを込めて言ってくれる。
「本当に。二人にも見せてあげたい……」
叔母が涙ぐみながら微笑み私の頬をそっと撫でた。
「大丈夫よ。きっと見てる」
「ええ、そうね……」
ミシェルと叔母が私を見つめながら優しい会話を重ねている。それだけでも心が温まる。
私も天国から両親が見守ってくれていると信じている。二人は生涯愛し合い、精一杯生きその命果てた後、神様の元で永遠になった。
私は今日、オーウェンと結ばれる。
オーウェンの出自は王都発信で大々的に広まったため、ウィンダム城にほど近い小さな教会では収まらなくなった。領内でいちばん大きい、規模としては中規模な聖堂で私たちは結婚式を挙げる。
二度目の結婚式は前回を思い出す時間もない程忙しく、ふと思い出したとしても気にならない程に別物だった。
ただ想い合う男女の結婚という枠に収まりきらない規模の参列者が押し寄せている。オーウェンは名誉叙爵と言っていたけれど、やはり現実はそうも言ってはいられない。
この結婚式。
祝福の鐘と共にウィンダムは公爵領になる。
元カヴァナー公爵令息であるウィンダム公爵とその妻。接点を持ちたいと思う貴族がいて当然であり、結婚式の参列者にさえなればそれは叶うのだ。
国王陛下からも直々のお祝いの品々が届いた。含みはあるかもしれないけれど、純粋に祝福する気持ちも込められていると私は信じている。
言うまでもなく届けてくれたのはパーシヴァルで、彼は友人という参列者だ。
教皇庁からは相手が誰であれ物質的な贈り物というのはしない。けれど複数の枢機卿から個人的なお祝いが届いており、内二人は参列してくれる。
聖職者の参列者はもう一人いた。
私が幼い頃から過ごした小さな教会の、年老いた司祭。私を責めもせず、父の葬儀も心を込めて執り行ってくれた。そして今日、一参列者として祝福してくれるのだ。
愛と希望に満ちた美しい結婚式。
付添人はミシェルと叔母がつとめてくれる。
私は鏡の中で微笑む幸せな花嫁と目を合わせる。
母の生きた歳月を越える日はそう遠くない。
万が一私にもしもの事があっても、今はオーウェンがいてくれる。オーウェンを遺しては逝けないし、これから皺くちゃになるまで共に手を取り合って歩いていきたいと強く思っているけれど、ほっとしたのは事実だ。彼の存在は大きかった。
優しくも厳かなパイプオルガンの音が響く。
ミシェルが私を立たせ、叔母が純白のベールを掛けてくれる。
二人に守られ、私は控室から穏やかな陽の差し込む回廊へと歩き出す。
やがてパイプオルガンの音が一層高らかに空へと突き抜けていくのに合わせ、聖堂の扉が開かれた。
私は足元へ目を伏せていたけれど、振り向いた参列者たちの数多の視線が注がれているのを感じた。一歩、一歩と足を進める。視線は私やオーウェンが背負うべき責任の重さだけでなく、他者への純粋な祝福の尊さを教えてくれる。
今日この日ここへ集った人々が、愛し、愛され、永久に祝福されますように。
病める時も、健やかなる時も、大切な人の傍で意義のある人生を送れますように。
貴族の結婚は政治と言うけれど、確かな愛もある。
そう信じ、祈り、歩むヴァージンロードの先に、彼が……オーウェンが待っていた。
「……」
彼に並び、司祭の祝福を受ける。
互いの指に誓いが輝く。
「今二人は夫婦となり神の御前に誓いを立てた。花婿は花嫁にキスを」
オーウェンが私のベールを恭しく捲りあげ、やっと、私たちは互いを見つめた。
一瞬だけ互いに微笑み、誓いのキスを交わす。
鐘が高らかに鳴り響く。
全ての、愛の為に。
ミシェルが心からのお祝いを込めて言ってくれる。
「本当に。二人にも見せてあげたい……」
叔母が涙ぐみながら微笑み私の頬をそっと撫でた。
「大丈夫よ。きっと見てる」
「ええ、そうね……」
ミシェルと叔母が私を見つめながら優しい会話を重ねている。それだけでも心が温まる。
私も天国から両親が見守ってくれていると信じている。二人は生涯愛し合い、精一杯生きその命果てた後、神様の元で永遠になった。
私は今日、オーウェンと結ばれる。
オーウェンの出自は王都発信で大々的に広まったため、ウィンダム城にほど近い小さな教会では収まらなくなった。領内でいちばん大きい、規模としては中規模な聖堂で私たちは結婚式を挙げる。
二度目の結婚式は前回を思い出す時間もない程忙しく、ふと思い出したとしても気にならない程に別物だった。
ただ想い合う男女の結婚という枠に収まりきらない規模の参列者が押し寄せている。オーウェンは名誉叙爵と言っていたけれど、やはり現実はそうも言ってはいられない。
この結婚式。
祝福の鐘と共にウィンダムは公爵領になる。
元カヴァナー公爵令息であるウィンダム公爵とその妻。接点を持ちたいと思う貴族がいて当然であり、結婚式の参列者にさえなればそれは叶うのだ。
国王陛下からも直々のお祝いの品々が届いた。含みはあるかもしれないけれど、純粋に祝福する気持ちも込められていると私は信じている。
言うまでもなく届けてくれたのはパーシヴァルで、彼は友人という参列者だ。
教皇庁からは相手が誰であれ物質的な贈り物というのはしない。けれど複数の枢機卿から個人的なお祝いが届いており、内二人は参列してくれる。
聖職者の参列者はもう一人いた。
私が幼い頃から過ごした小さな教会の、年老いた司祭。私を責めもせず、父の葬儀も心を込めて執り行ってくれた。そして今日、一参列者として祝福してくれるのだ。
愛と希望に満ちた美しい結婚式。
付添人はミシェルと叔母がつとめてくれる。
私は鏡の中で微笑む幸せな花嫁と目を合わせる。
母の生きた歳月を越える日はそう遠くない。
万が一私にもしもの事があっても、今はオーウェンがいてくれる。オーウェンを遺しては逝けないし、これから皺くちゃになるまで共に手を取り合って歩いていきたいと強く思っているけれど、ほっとしたのは事実だ。彼の存在は大きかった。
優しくも厳かなパイプオルガンの音が響く。
ミシェルが私を立たせ、叔母が純白のベールを掛けてくれる。
二人に守られ、私は控室から穏やかな陽の差し込む回廊へと歩き出す。
やがてパイプオルガンの音が一層高らかに空へと突き抜けていくのに合わせ、聖堂の扉が開かれた。
私は足元へ目を伏せていたけれど、振り向いた参列者たちの数多の視線が注がれているのを感じた。一歩、一歩と足を進める。視線は私やオーウェンが背負うべき責任の重さだけでなく、他者への純粋な祝福の尊さを教えてくれる。
今日この日ここへ集った人々が、愛し、愛され、永久に祝福されますように。
病める時も、健やかなる時も、大切な人の傍で意義のある人生を送れますように。
貴族の結婚は政治と言うけれど、確かな愛もある。
そう信じ、祈り、歩むヴァージンロードの先に、彼が……オーウェンが待っていた。
「……」
彼に並び、司祭の祝福を受ける。
互いの指に誓いが輝く。
「今二人は夫婦となり神の御前に誓いを立てた。花婿は花嫁にキスを」
オーウェンが私のベールを恭しく捲りあげ、やっと、私たちは互いを見つめた。
一瞬だけ互いに微笑み、誓いのキスを交わす。
鐘が高らかに鳴り響く。
全ての、愛の為に。
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