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22(リディ)
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目が覚めた時ヒルダが優しい微笑みを浮かべ私の額を冷たい布で拭いていた。
酷く怠く若干の吐気があるものの、どこも痛くないし、私やお腹の子の命を心配しなければならない程の不調とは感じない。
「馬鹿野郎!こうやるんだよ!」
「……?」
小屋の外でワイラーが怒鳴っている。
私が目を覚ましたと気づいたヒルダがそっと顔を寄せて来て囁いた。
「少し大袈裟に言っておいたから、旦那は心を入れ替えたと思う」
「……赤ちゃんは?」
「心配しないで。だけど、今後は安静にすること」
「……つまり、無事なの?」
「そうよ」
安堵に涙が溢れてくる。
するとヒルダは全てを包み込むような優しさで私の涙を拭ってくれる。
「頑張り過ぎたのよ、リディ。これから毎日、決まった時間に来てあげる」
「ヒルダ……」
「旦那を働かせて、あなたのお世話をしてあげるわ」
「ありがとう……私……凄く辛くて……っ」
これまで耐えて耐えて耐え抜いてきたつもりが、寄り添ってくれる味方が現れたことで心が決壊してしまった。
嗚咽をあげ泣き始めた私の頭部をヒルダが豊かな胸を押し付けるようにして抱きしめる。それは聖母と呼ぶに相応しい慈悲深さであり、私は追放されたシスターとしてヒルダを見下していた自分を恥じた。
「今ワイラーが畑仕事を仕込んでるところよ。あなたが寝てる間、旦那はせっせと働いてた。父親になるのが嬉しいみたい」
「……っ」
「案外、ちゃんとしてくれるかもね」
「……うっく」
「もう大丈夫よ。あなたは元気な赤ちゃんを産むことだけを考えて。それ以外はもう頑張らなくていいの」
この日を境に私の生活は一変した。
頑張り屋の妊婦として同情を集めていた私に村人たちは優しくなり、出向かなくても食料を届けてくれるようになった。
ヒルダは毎日昼過ぎに来て夕方前に帰っていく。滞在中は身の周りの世話をしながらどんな我儘でも聞いてくれた。
ワイラーやその指示を受けた男たちが怒鳴り声を上げながらもサディアスに生活力を培わせてくれた。
そしてサディアスが本当の意味で夫になった。
「リディ、早く言ってくれたらよかったのに」
ベッドで休む私に寄り添い、出会った頃のような優しい微笑みで優しく頬を撫でてくれる。指先で髪を梳き、時折触れるだけのキスをして、私の望むままに足を摩ってくれる。
「僕は目が覚めたよ。この世界でこんなにも深く君を愛せるのは僕しかいないんだ。だから出し惜しみしちゃ逆に人生損だなって」
「サディアス……」
「もう君を泣かせはしない。君が笑顔でいられるように僕が全部やってあげるよ」
「ワイラーは厳しくない?」
私は随分と久しぶりに笑顔を浮かべたと思う。
するとサディアスも嬉しそうに笑みを深めた。
「今の内だけさ。それに、君の頑張る姿を見ていたからだいたいわかってる簡単な作業だし。問題ないよ。僕に任せて」
「あなたの子を産むのよ……」
眠い。
サディアスの愛に包まれて、とても安心できて、心地よくて、眠い。
「うん。ありがとう、リディ。愛してるよ」
「私も、愛してる……」
私は微睡みの中で見つめていた。
意識が途切れるまで、ずっと。ずっと。
サディアスの碧く美しい煌めく瞳を。
酷く怠く若干の吐気があるものの、どこも痛くないし、私やお腹の子の命を心配しなければならない程の不調とは感じない。
「馬鹿野郎!こうやるんだよ!」
「……?」
小屋の外でワイラーが怒鳴っている。
私が目を覚ましたと気づいたヒルダがそっと顔を寄せて来て囁いた。
「少し大袈裟に言っておいたから、旦那は心を入れ替えたと思う」
「……赤ちゃんは?」
「心配しないで。だけど、今後は安静にすること」
「……つまり、無事なの?」
「そうよ」
安堵に涙が溢れてくる。
するとヒルダは全てを包み込むような優しさで私の涙を拭ってくれる。
「頑張り過ぎたのよ、リディ。これから毎日、決まった時間に来てあげる」
「ヒルダ……」
「旦那を働かせて、あなたのお世話をしてあげるわ」
「ありがとう……私……凄く辛くて……っ」
これまで耐えて耐えて耐え抜いてきたつもりが、寄り添ってくれる味方が現れたことで心が決壊してしまった。
嗚咽をあげ泣き始めた私の頭部をヒルダが豊かな胸を押し付けるようにして抱きしめる。それは聖母と呼ぶに相応しい慈悲深さであり、私は追放されたシスターとしてヒルダを見下していた自分を恥じた。
「今ワイラーが畑仕事を仕込んでるところよ。あなたが寝てる間、旦那はせっせと働いてた。父親になるのが嬉しいみたい」
「……っ」
「案外、ちゃんとしてくれるかもね」
「……うっく」
「もう大丈夫よ。あなたは元気な赤ちゃんを産むことだけを考えて。それ以外はもう頑張らなくていいの」
この日を境に私の生活は一変した。
頑張り屋の妊婦として同情を集めていた私に村人たちは優しくなり、出向かなくても食料を届けてくれるようになった。
ヒルダは毎日昼過ぎに来て夕方前に帰っていく。滞在中は身の周りの世話をしながらどんな我儘でも聞いてくれた。
ワイラーやその指示を受けた男たちが怒鳴り声を上げながらもサディアスに生活力を培わせてくれた。
そしてサディアスが本当の意味で夫になった。
「リディ、早く言ってくれたらよかったのに」
ベッドで休む私に寄り添い、出会った頃のような優しい微笑みで優しく頬を撫でてくれる。指先で髪を梳き、時折触れるだけのキスをして、私の望むままに足を摩ってくれる。
「僕は目が覚めたよ。この世界でこんなにも深く君を愛せるのは僕しかいないんだ。だから出し惜しみしちゃ逆に人生損だなって」
「サディアス……」
「もう君を泣かせはしない。君が笑顔でいられるように僕が全部やってあげるよ」
「ワイラーは厳しくない?」
私は随分と久しぶりに笑顔を浮かべたと思う。
するとサディアスも嬉しそうに笑みを深めた。
「今の内だけさ。それに、君の頑張る姿を見ていたからだいたいわかってる簡単な作業だし。問題ないよ。僕に任せて」
「あなたの子を産むのよ……」
眠い。
サディアスの愛に包まれて、とても安心できて、心地よくて、眠い。
「うん。ありがとう、リディ。愛してるよ」
「私も、愛してる……」
私は微睡みの中で見つめていた。
意識が途切れるまで、ずっと。ずっと。
サディアスの碧く美しい煌めく瞳を。
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