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「知り合い?」
軽蔑の色を目に浮かべるヒルダの問いかけに、私は一瞬だけ躊躇った後、可能な限り正確に答えた。
「派閥的な意味では、それなりに、よく知ってる」
「嫌われてるんじゃない?あいつ最悪。死ねばいいのに」
詳細はわからないが胸中は察して余りある。
一時は同情を示した相手ではあるものの、エヴァンズ伯爵夫人イライザに対する嫌悪が私の胸に生まれ、急速に膨張した。
とはいえ、この場にいない人間を罵倒したところで現状は一つも改善しない。
村の畑が焼かれ、村人たちは疲れ果てている。
「ヒルダ、もう一度聞くわ。怪我人は?どれくらいの救援物資が必要か言って」
「ああ」
ヒルダが降参したらしく天を仰いだ。しかし次の瞬間には私に屈託ない笑顔を見せる。
「大丈夫。やられたのは畑だけで、後引くような怪我人はいないの。ただ麦が全滅で家畜も逃げちゃったから古い人間ほど気が滅入っちゃって」
「……」
言葉を失う。
ヒルダは少し眉を絞り、苦笑いに表情を変えた。
「まあ、野菜は土があれば育つし、備蓄もあるし、川では魚が釣れるから」
「……」
「御親切どうもありがとう。村のことは自分たちでちゃんとやれるから、どうぞ、もう馬車に戻って、旅行を続けて、私たちのことは忘れてください」
ヒルダにくるりと体の向きを変えられ、背中を押される。
私が歩き出すとレジナルドとジェマもついて来た。
私たちは同じことを考えていたようで、無言のまま視線だけで互いに合図を出し合い、馬車に積んであった保存食の八割を次々に下ろし御者に運ばせた。
村に食料を運び込んだことで村人が集まりはしたものの、毒を警戒しているらしく手を付けなかった為、私とレジナルドはナッツや干し肉やビスケット等を無差別に齧って見せ、安全であることを伝えなくてはならなかった。
きょとんとするヒルダを残し、私はまた来ると約束し馬車に戻った。
そこで父に一筆したためる。鼻から布を離していたせいでまたくしゃみが出たが気にしている場合ではない。
私は短い手紙をレジナルドに託した。
「これを父に届けて。そして殿下に報告して、復興の手配を」
「君は?」
「周辺の貴族を回って食料を掻き集めるわ。地図をちょうだい」
偶然ながら馬車は二台あるのだ。
私たち夫婦は二手に分かれた。
地図を頼りに周辺の貴族を回るのは無謀かに思えたが、私は自分の体に流れる王家の血を最大限に利用すれば簡単だろうと予測していた。
そしてその予測は当たった。
「お願いがございます。今から何も聞かずに日持ちする食べ物を分けてください。百人分で構いません。どうかお願い致します」
跪き這い蹲るように頭を垂れて請い願うと、誰もが私にこう答えた。
「どうかお顔を上げてください、フェルネ様。あなた様がそう仰るのであれば、きっと尊い行いに用いてくださることでしょう。食べ物の他に何が必要ですか?布ですか?石ですか?鉄ですか?武器ですか?私でお役に立てることでしたら何でもさせて頂きます」
これを四ヶ所で繰り返した。
皆、宮殿で顔を合わせている。
誰もが私を王族の一員として敬ったのだから、造作もないことだった。
軽蔑の色を目に浮かべるヒルダの問いかけに、私は一瞬だけ躊躇った後、可能な限り正確に答えた。
「派閥的な意味では、それなりに、よく知ってる」
「嫌われてるんじゃない?あいつ最悪。死ねばいいのに」
詳細はわからないが胸中は察して余りある。
一時は同情を示した相手ではあるものの、エヴァンズ伯爵夫人イライザに対する嫌悪が私の胸に生まれ、急速に膨張した。
とはいえ、この場にいない人間を罵倒したところで現状は一つも改善しない。
村の畑が焼かれ、村人たちは疲れ果てている。
「ヒルダ、もう一度聞くわ。怪我人は?どれくらいの救援物資が必要か言って」
「ああ」
ヒルダが降参したらしく天を仰いだ。しかし次の瞬間には私に屈託ない笑顔を見せる。
「大丈夫。やられたのは畑だけで、後引くような怪我人はいないの。ただ麦が全滅で家畜も逃げちゃったから古い人間ほど気が滅入っちゃって」
「……」
言葉を失う。
ヒルダは少し眉を絞り、苦笑いに表情を変えた。
「まあ、野菜は土があれば育つし、備蓄もあるし、川では魚が釣れるから」
「……」
「御親切どうもありがとう。村のことは自分たちでちゃんとやれるから、どうぞ、もう馬車に戻って、旅行を続けて、私たちのことは忘れてください」
ヒルダにくるりと体の向きを変えられ、背中を押される。
私が歩き出すとレジナルドとジェマもついて来た。
私たちは同じことを考えていたようで、無言のまま視線だけで互いに合図を出し合い、馬車に積んであった保存食の八割を次々に下ろし御者に運ばせた。
村に食料を運び込んだことで村人が集まりはしたものの、毒を警戒しているらしく手を付けなかった為、私とレジナルドはナッツや干し肉やビスケット等を無差別に齧って見せ、安全であることを伝えなくてはならなかった。
きょとんとするヒルダを残し、私はまた来ると約束し馬車に戻った。
そこで父に一筆したためる。鼻から布を離していたせいでまたくしゃみが出たが気にしている場合ではない。
私は短い手紙をレジナルドに託した。
「これを父に届けて。そして殿下に報告して、復興の手配を」
「君は?」
「周辺の貴族を回って食料を掻き集めるわ。地図をちょうだい」
偶然ながら馬車は二台あるのだ。
私たち夫婦は二手に分かれた。
地図を頼りに周辺の貴族を回るのは無謀かに思えたが、私は自分の体に流れる王家の血を最大限に利用すれば簡単だろうと予測していた。
そしてその予測は当たった。
「お願いがございます。今から何も聞かずに日持ちする食べ物を分けてください。百人分で構いません。どうかお願い致します」
跪き這い蹲るように頭を垂れて請い願うと、誰もが私にこう答えた。
「どうかお顔を上げてください、フェルネ様。あなた様がそう仰るのであれば、きっと尊い行いに用いてくださることでしょう。食べ物の他に何が必要ですか?布ですか?石ですか?鉄ですか?武器ですか?私でお役に立てることでしたら何でもさせて頂きます」
これを四ヶ所で繰り返した。
皆、宮殿で顔を合わせている。
誰もが私を王族の一員として敬ったのだから、造作もないことだった。
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