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10(最終話)
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「しつこいな。向こうへ行こう、マチルダ。もっとゆっくり話がしたい」
「はい、殿下」
「え?あ、ちょっと!」
クラウディオ殿下のおかげで私は初めて快適に過ごしている。
今までとは違う世界に舞い込んだようだ。
それに、クラウディオ殿下は私の目をまっすぐ見つめ、いろいろな話をしてくれる。私が何を考えているか尋ねてくれる。
誰かと意見を交わしたり、何気ない穏やかな会話を重ねていくのがこんなに楽しいなんて知らなかった。
クラウディオ殿下は私に新しい世界を見せてくれる。
優しい空気が私を洗い流し、新しい私にしてくれる。
まず感謝が芽生え、次第に、彼の視線や優しさの意味に気づいていく。
「マチルダ、私のお気に入りの場所だ。星が綺麗だろう?」
「はい……」
人気の無いバルコニーに誘われ、夜風を浴びながら静寂を嗜む。
「君に見せてあげたい景色がたくさんある。私に君といる権利を与えてほしい」
「殿下……」
先刻、聞いた言葉通り。
クラウディオ殿下は少し理解した私の前で跪いた。
「君を目にした瞬間、光に包まれた。君の美しさと、溢れ出る優しさ、それは離れて見ていた時に想像したよりこうして間近で語り合っているとその素晴らしさがよくわかる」
「……」
「私は君に恋をした。そして命を懸けて愛するたった一人の人だと確信した」
「……」
胸が高鳴り、息が苦しくなる。
私は胸を押さえた。
「マチルダ、どうか私と結婚してください」
答えは決まっている。
「……はい!」
「ああ、マチルダ……ありがとう。一生大切にする」
クラウディオ殿下が私を抱きしめた。
温かく力強い腕の中で私は人生で最高の幸せと安らぎを感じていた。
その後、舞踏会の終盤で二人の王子は其々婚約を発表した。
王太子でもある第一王子アレックス殿下の隣には、所謂、恐いくらい美しいという美貌と貫禄を備えた侯爵令嬢オクタビアが佇んでいる。
いずれ王妃となるに相応しい令嬢だと、誰の目にも映ったはずだった。
ところが……
なぜか……
二人の王子の妃が決まったお祝いムードの中、私の妹であるビヨネッタが、私に鋭い一瞥を浴びせてから王太子アレックス殿下の方へと忍び寄っていき……
「心配するな、マチルダ。兄上は馬鹿ではない」
「……は、い……」
私の隣ではクラウディオ殿下が大真面目に請け負ってくれる。
ハラハラしながら目が離せないでいる私の視線の先で、妹が王太子に媚びを売った。何を言っているのか距離があり声そのものは届かない。でも、自信たっぷりに上機嫌で自分を売り込んでいるのだとわかる。
クラウディオ殿下に相手にされなかったから、更に高位である王太子アレックス殿下の心を射止めて、それで私に見せつけたいのだろうか。
本当に理解できない。
しかし全ての懸念や不安は次の瞬間、杞憂に変わる。
「無礼者!」
美しい侯爵令嬢オクタビアが威厳たっぷりに激高し、私の妹の頬を張り飛ばしたのだ。
「あなたのような低俗で無礼な者が貴族の令嬢を名乗るなど罷りなりません!」
未来の王妃の逆鱗に触れたと気づかないのか、妹は頬を押さえてきょとんとしていた。そこへ両親が駆けつけ誠心誠意らしい謝罪を繰り返したものの、オクタビアの心証は生涯変わることはなかった。
私はクラウディオ殿下の支えのもと家族と縁を切った。
妹が私の人生から消え去ると同時に、まるで私の不幸を全て奪い去っていったかのように、私の暮らしは穏やかになっていた。
クラウディオ殿下と私は王太子とオクタビアの結婚を待ち、その一月後に結婚した。
ちなみに私はクラウディオ殿下のおかげもあり、後に王妃となったオクタビアとも良好な関係を築くことができた。宮廷ではあらゆる出来事が起きたけれど、クラウディオ殿下は愛情深く私を安全な場所に留まらせ、守ってくれた。
私の世界は変わった。
結婚前は不幸に塗り固められたような日々だったのに、今では愛と安らぎに包まれて、素晴らしい環境で暮らしている。
良き妻、善き妃殿下でいること。
その為の努力は惜しまない。
肉親に恵まれなかった私だけれど、私には大勢の家族がいる。
親族となった王家の人々、毎日のように顔を合わせる王城で暮らす貴族たち、其々の日々を営む大勢の民。
誰もが幸せであるようにと私が願えるようになったのも、あの日、クラウディオ殿下に見つけてもらえたから。
「愛してるわ、クラウディオ」
今私は、愛する幸せを噛み締めている。
「はい、殿下」
「え?あ、ちょっと!」
クラウディオ殿下のおかげで私は初めて快適に過ごしている。
今までとは違う世界に舞い込んだようだ。
それに、クラウディオ殿下は私の目をまっすぐ見つめ、いろいろな話をしてくれる。私が何を考えているか尋ねてくれる。
誰かと意見を交わしたり、何気ない穏やかな会話を重ねていくのがこんなに楽しいなんて知らなかった。
クラウディオ殿下は私に新しい世界を見せてくれる。
優しい空気が私を洗い流し、新しい私にしてくれる。
まず感謝が芽生え、次第に、彼の視線や優しさの意味に気づいていく。
「マチルダ、私のお気に入りの場所だ。星が綺麗だろう?」
「はい……」
人気の無いバルコニーに誘われ、夜風を浴びながら静寂を嗜む。
「君に見せてあげたい景色がたくさんある。私に君といる権利を与えてほしい」
「殿下……」
先刻、聞いた言葉通り。
クラウディオ殿下は少し理解した私の前で跪いた。
「君を目にした瞬間、光に包まれた。君の美しさと、溢れ出る優しさ、それは離れて見ていた時に想像したよりこうして間近で語り合っているとその素晴らしさがよくわかる」
「……」
「私は君に恋をした。そして命を懸けて愛するたった一人の人だと確信した」
「……」
胸が高鳴り、息が苦しくなる。
私は胸を押さえた。
「マチルダ、どうか私と結婚してください」
答えは決まっている。
「……はい!」
「ああ、マチルダ……ありがとう。一生大切にする」
クラウディオ殿下が私を抱きしめた。
温かく力強い腕の中で私は人生で最高の幸せと安らぎを感じていた。
その後、舞踏会の終盤で二人の王子は其々婚約を発表した。
王太子でもある第一王子アレックス殿下の隣には、所謂、恐いくらい美しいという美貌と貫禄を備えた侯爵令嬢オクタビアが佇んでいる。
いずれ王妃となるに相応しい令嬢だと、誰の目にも映ったはずだった。
ところが……
なぜか……
二人の王子の妃が決まったお祝いムードの中、私の妹であるビヨネッタが、私に鋭い一瞥を浴びせてから王太子アレックス殿下の方へと忍び寄っていき……
「心配するな、マチルダ。兄上は馬鹿ではない」
「……は、い……」
私の隣ではクラウディオ殿下が大真面目に請け負ってくれる。
ハラハラしながら目が離せないでいる私の視線の先で、妹が王太子に媚びを売った。何を言っているのか距離があり声そのものは届かない。でも、自信たっぷりに上機嫌で自分を売り込んでいるのだとわかる。
クラウディオ殿下に相手にされなかったから、更に高位である王太子アレックス殿下の心を射止めて、それで私に見せつけたいのだろうか。
本当に理解できない。
しかし全ての懸念や不安は次の瞬間、杞憂に変わる。
「無礼者!」
美しい侯爵令嬢オクタビアが威厳たっぷりに激高し、私の妹の頬を張り飛ばしたのだ。
「あなたのような低俗で無礼な者が貴族の令嬢を名乗るなど罷りなりません!」
未来の王妃の逆鱗に触れたと気づかないのか、妹は頬を押さえてきょとんとしていた。そこへ両親が駆けつけ誠心誠意らしい謝罪を繰り返したものの、オクタビアの心証は生涯変わることはなかった。
私はクラウディオ殿下の支えのもと家族と縁を切った。
妹が私の人生から消え去ると同時に、まるで私の不幸を全て奪い去っていったかのように、私の暮らしは穏やかになっていた。
クラウディオ殿下と私は王太子とオクタビアの結婚を待ち、その一月後に結婚した。
ちなみに私はクラウディオ殿下のおかげもあり、後に王妃となったオクタビアとも良好な関係を築くことができた。宮廷ではあらゆる出来事が起きたけれど、クラウディオ殿下は愛情深く私を安全な場所に留まらせ、守ってくれた。
私の世界は変わった。
結婚前は不幸に塗り固められたような日々だったのに、今では愛と安らぎに包まれて、素晴らしい環境で暮らしている。
良き妻、善き妃殿下でいること。
その為の努力は惜しまない。
肉親に恵まれなかった私だけれど、私には大勢の家族がいる。
親族となった王家の人々、毎日のように顔を合わせる王城で暮らす貴族たち、其々の日々を営む大勢の民。
誰もが幸せであるようにと私が願えるようになったのも、あの日、クラウディオ殿下に見つけてもらえたから。
「愛してるわ、クラウディオ」
今私は、愛する幸せを噛み締めている。
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あり寄りのありな世界線ですね☺
面白そうな話だったので一気読みしました。面白かったです😃
マチルダ、何年も頭のおかしい家族によく我慢したね😣
どんなに逃げたいと思っても逃げられない地獄みたいな日々、私にも経験あります。
自分の心を守るために行動に出ようとしても《毒母と毒妹》が邪魔をしてきて何度、無かった事にされた事か。
でも、マチルダの事をちゃんと分かってくれる人に出会えて良かった😄
クラウディオのぶっきらぼうで不器用な慰め方を書いたシーンはとてもステキでした。
素敵な小説を読ませていただきありがとうございます😆💕✨
ご感想ありがとうございます!
ぶっきらぼうな良い人が好きなので、クラウディオが不器用にも慰めるシーンを気に入って頂けて嬉しいです。
お楽しみ頂けてよかったです✨
こちらこそお読み下さってありがとうございました😊💕
完結お疲れ様でした。
ざまぁタグがあるのでその様子がもっと書かれるかと思ってました(^^;)
できれば番外編ででもその後の元両親、元妹のそれぞれのその後を書いていただけるとありがたいのですが。。
ご感想ありがとうございます!
さっくり終わらせてしまいましたね💦
王子に相手にされず、次期王妃の逆鱗に触れるくらいでは、ざまぁとは呼べないと…
勉強させていただきました!
ご期待に添えず申し訳ありませんでした!
また別の作品でこってりしたざまぁをお楽しみ頂けたら嬉しいです。
拙い作品ですが、お読み頂きありがとうございました!