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9(ビヨネッタ)
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ひたすら気絶したふりを貫いて、状況が落ち着いてから目を覚ます。
「ん……ぁ……」
只眠いのではなく体調が優れない時の気怠い寝起きの演技には自信がある。
「ああっ、ビヨネッタ!目が覚めたのね!よかった!」
「……お母様……私……?」
母に抱きかかえられ体を起こし、心配そうな父を見上げる。
「お父様……?一体、何があったの……?」
「お前、仮病なのか?」
姉が余計な他人を巻き込んだせいで、私たち家族の統率が乱れている。
「え……ごめんなさい、何のお話なの……?私、熱が……」
「あなた!ビヨネッタが仮病なんて、そんなはずないじゃありませんか!忘れたの!?この子は、何日も生死の境を彷徨ったのよ!?」
「昔の話だ」
両親のことは放っておいて構わない。
今は、あの生意気な姉だ。
なんの取り柄もないつまらない令嬢のくせに、第二王子なんか連れ歩いて。しかもあの王子は私の価値がわかっていない。
私は特別で、この世に生まれたのは奇跡で、生きているだけで尊いんだから。
まったく、嫌になっちゃう。
でも、姉がよくて私に靡かないなんてあり得ない。
「少し……思い出して来たわ。お姉様、男性と一緒にいらっしゃらなかったかしら」
「マチルダは……ええ、まあ、いいのよ。今は、あなたの体のことを考えましょう」
母がいつものように姉を貶さないことに気づく。
王子という味方を得て微妙に立場が変わりつつあった。姉のおかげで私たちが王家と親戚になるなんて、屈辱以外の何物でもない。
そういう栄誉は私のものだ。
「お相手が見つかったの?私、こうしてはいられない。お姉様にお祝いを言わなくちゃ」
「まあ、なんて優しい子なの。あなたは天使よ」
「……では、案内しようか?」
傍に佇んでいたレオポルドがぽつんと申し出る。
「……」
あのね。
今や、王子がいるのよ。
侯爵令息如きがしゃしゃり出て来ないでくださる?
「お母様、あの方は?」
「えっ?」
「えっ!?」
そもそも姉に惹かれるような、つまらない男。
「私、お酒を飲まされて……」
「えっ!?」
「なんだと!?」
両親は私を信じる。
何を言っても。何をやっても許される。
私を喪いかけたから、私の言いなり。
「君は何を言うんだ!?どうもおかしいぞ。君はやっぱり仮病じゃないか?さっきだって、あんなに──」
「娘に何をした!」
父が激高しレオポルドと口論になる。
私は混乱して怯えたふりで母にしがみつき、その言葉が放たれるのを待った。
「もう嫌だ!君との婚約は破棄する!!」
「そもそも許しておらん!我々の前から消えてくれ!!」
相手が侯爵令息だろうと父は立ち向かってくれる。
私は恍惚とした気持ちで父を見上げてから、憮然と立ち去るレオポルドを見送った。
そして時間をかけて体調がよくなったふりをして、私は姉を探した。
少し目を離しただけで姉は第二王子と随分うちとけて、憎らしいことに談笑している。
私は時を見計らい、姉に待つよう言い残し第二王子がその場を離れたところで突撃する。
「お姉様!」
「!?」
姉は驚いた様子で一瞬目を見開いたが、冷静に私を見つめた。
ああ、頭にくる。
「ちょっと、お姉様のくせに生意気よ?このまま王子と結婚でもするつもり?私と代わってよ。お姉様に御妃様は務まらないわ。意気地なしで鈍くて陰気で、あっという間に老けて、誰にも相手にされず虚しい人生を送ることになるわよ?今の内、私を薦めて!」
「悪いけど」
「は?」
いつもと違う、姉の態度。
私は面食らって何も考えられなくなってしまう。
姉は硬い表情で私を見つめると落ち着いた様子で断言した。
「あなたの言うことが理解できないわ。もう私に関わらないで」
「ん……ぁ……」
只眠いのではなく体調が優れない時の気怠い寝起きの演技には自信がある。
「ああっ、ビヨネッタ!目が覚めたのね!よかった!」
「……お母様……私……?」
母に抱きかかえられ体を起こし、心配そうな父を見上げる。
「お父様……?一体、何があったの……?」
「お前、仮病なのか?」
姉が余計な他人を巻き込んだせいで、私たち家族の統率が乱れている。
「え……ごめんなさい、何のお話なの……?私、熱が……」
「あなた!ビヨネッタが仮病なんて、そんなはずないじゃありませんか!忘れたの!?この子は、何日も生死の境を彷徨ったのよ!?」
「昔の話だ」
両親のことは放っておいて構わない。
今は、あの生意気な姉だ。
なんの取り柄もないつまらない令嬢のくせに、第二王子なんか連れ歩いて。しかもあの王子は私の価値がわかっていない。
私は特別で、この世に生まれたのは奇跡で、生きているだけで尊いんだから。
まったく、嫌になっちゃう。
でも、姉がよくて私に靡かないなんてあり得ない。
「少し……思い出して来たわ。お姉様、男性と一緒にいらっしゃらなかったかしら」
「マチルダは……ええ、まあ、いいのよ。今は、あなたの体のことを考えましょう」
母がいつものように姉を貶さないことに気づく。
王子という味方を得て微妙に立場が変わりつつあった。姉のおかげで私たちが王家と親戚になるなんて、屈辱以外の何物でもない。
そういう栄誉は私のものだ。
「お相手が見つかったの?私、こうしてはいられない。お姉様にお祝いを言わなくちゃ」
「まあ、なんて優しい子なの。あなたは天使よ」
「……では、案内しようか?」
傍に佇んでいたレオポルドがぽつんと申し出る。
「……」
あのね。
今や、王子がいるのよ。
侯爵令息如きがしゃしゃり出て来ないでくださる?
「お母様、あの方は?」
「えっ?」
「えっ!?」
そもそも姉に惹かれるような、つまらない男。
「私、お酒を飲まされて……」
「えっ!?」
「なんだと!?」
両親は私を信じる。
何を言っても。何をやっても許される。
私を喪いかけたから、私の言いなり。
「君は何を言うんだ!?どうもおかしいぞ。君はやっぱり仮病じゃないか?さっきだって、あんなに──」
「娘に何をした!」
父が激高しレオポルドと口論になる。
私は混乱して怯えたふりで母にしがみつき、その言葉が放たれるのを待った。
「もう嫌だ!君との婚約は破棄する!!」
「そもそも許しておらん!我々の前から消えてくれ!!」
相手が侯爵令息だろうと父は立ち向かってくれる。
私は恍惚とした気持ちで父を見上げてから、憮然と立ち去るレオポルドを見送った。
そして時間をかけて体調がよくなったふりをして、私は姉を探した。
少し目を離しただけで姉は第二王子と随分うちとけて、憎らしいことに談笑している。
私は時を見計らい、姉に待つよう言い残し第二王子がその場を離れたところで突撃する。
「お姉様!」
「!?」
姉は驚いた様子で一瞬目を見開いたが、冷静に私を見つめた。
ああ、頭にくる。
「ちょっと、お姉様のくせに生意気よ?このまま王子と結婚でもするつもり?私と代わってよ。お姉様に御妃様は務まらないわ。意気地なしで鈍くて陰気で、あっという間に老けて、誰にも相手にされず虚しい人生を送ることになるわよ?今の内、私を薦めて!」
「悪いけど」
「は?」
いつもと違う、姉の態度。
私は面食らって何も考えられなくなってしまう。
姉は硬い表情で私を見つめると落ち着いた様子で断言した。
「あなたの言うことが理解できないわ。もう私に関わらないで」
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