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14 羊毛布団
しおりを挟むその日の夜、村は俺たちが狩ってきた魔物で「肉祭りだ!」とでも言うように賑わった。
様子が変わったステファンに敏感に反応したダミアンは、こんなにも楽しそうな村の雰囲気なのにも関わらず、ステファンの横にピッタリと寄り添いダミアンなりに兄を慰めていた。
ステファンも悲しみの表情を残しながらも口元に微笑みが出始めて、ステファンが父のようにならなくて良かったと、俺は肩をなでおろした。
この村には宿はないが、宿泊施設はある。
公民館とでも言えば良いのか、みんなで集まって何かをする時に使う建物があり、今日の魔物の肉を捌いて料理したのもこの建物だ。
2階に壁のない広い部屋あって、商人や護衛たちは羊毛敷き布団を並べて雑魚寝する。カトリーヌは女なので誰かの家に泊めてもらい、赤子も乳飲み子がいる女性が引き続き面倒をみてくれた。
「うわ~、フワフワ~!」
ダミアンがベッドの上で転がり喜んだ。村の人いわく、商品にならない草や汚れが混ざった部分の羊毛を集めて布団にしているらしい。フワフワ加減が前世で使っていた綿布団と同等レベルで、俺も柔らかな布団に寝るのが楽しみになった。
外ではまだ俺たち以外の大人が酒を飲んでいたので、寝る前の井戸での行水は諦めて大部屋の中で体を拭う。
「ディラン、体もちゃんと拭け。」
「えー、汚れてる所だけでいいだろー」
ディランがだらしがないのではなく、この世界では1週間くらい風呂に入らないのは普通だ。汚れた時だけ、水をかぶって洗い流したりするのみで、毎日風呂に入ると肌がひび割れる。なんて言われている。
蛇口をひねればお湯が出てくる前世と違って井戸から水を汲んできて、大きな釜でお湯を沸かして湯船に移す重労働が嫌われているので、使用人はそう言ってお風呂を悪く言うのだ。ただ、まぁ、乾燥した気候の土地だし、水もちょっと何かあるみたいで髪を洗うとすごくゴワゴワになる。
俺はステファンを拭いていたタオルをタライで洗って、ディランの背中にべチャリと貼り付けた。
「ひぇ、つべてぇ!」
「ハハハっ、ほら、濡れたぞ。ちゃんと拭けよ~」
「ったく、めんどうくせぇな。綺麗好きのお坊っちゃんめ。」
ダミアンが着替えられたのを確認したら俺も体を拭き始める。顔、腕、胸、上半身を拭いたら下半身の服を脱ぐ。全裸になるのは憚られるのでパンツだけは残して拭いていたら・・・それはそれは、もう、熱い視線というか、ねちっこい視線というか、ディランがいやらしい目でこっちを見ていることに気づく。
性の対象にされている相手の前でやることじゃなかったかもしれない。
「やっぱ、貴族だからかなぁ。綺麗な体してるよな。日焼けしてなくて、傷一つなくて、シミも無い。農民とは違う肌だ。」
「俺の肌に傷がないのは治癒魔法が出来た師匠のお陰であって、俺の父やローランは傷だらけだったぞ?」
ディランの腹には父と同じような大きな傷がいくつかあって、腕や肩にある傷まで似ている。ディランがロングブレードをぶん回すタイプであることから戦闘スタイルが『肉を切らせて骨を断つ』であることが予想できた。
結局のところ恐怖に打ち勝つことが出来なかった俺が弓を獲物にするようになったのとは違う。豪胆な精神を表すような傷は勇敢さの証で、俺の綺麗な肌は臆病者の証のように思える。
でも、綺麗な肌は若さの証でもあるから、ディランにとっては肌が綺麗であることには価値があるのかもしれないが。
「シミはディランだって無いだろう。俺的には、日焼けした肌は働き者の証だから・・・ディランのこの手袋の日焼け、俺は好きだ。」
肩や腕に出来る日焼けは腕まくりで位置がズレるせいかグラデーション状に日焼けしているけど、武器を振るう者がつける手袋の日焼けだけはズレることがないのでクッキリと境目が出来る。
黒く日焼けした手首と手袋の下で白いままの、俺が好きな境目をスッと撫でた。
「やば、撫でるのエロい。好きって言われただけで勃ったわ。」
「子どもの前だぞ、自重しろ。」
「わぁ~、ディランのお兄さん、ちんちんでっかい!」
「ダミア~ン? 下品なこと言わない。」
ディランは恥ずかしげもなく勃起したちんこを見せて、ダミアンはパンツの紐をほどいて自分のちんこと比べている。
ちんこのデカさを競うのは男同士の本能か。
俺は久方ぶりの柔らかい寝床と伸ばせる手足、赤子の存在を気にしなくて良い自由の広さに伸びをして、無駄にゴロゴロと寝返りをうって1人1枚の布団を満喫していたのに、ディランが俺の布団にやってきて太ももを撫でてきた。
「ぅわ、なんなんだ。こっち来るなよ。狭い。」
「ガキどもは寝たんだ。ここからは大人の時間だろ?」
「俺も14だし、早く寝なくっちゃー」
「寝ててもいいぞ。開発しとくから。」
「やめろ、何するつもりだ。」
***
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