ゲーム世界のキャンセラー~不遇なキャンセルスキルが実はあらゆるものをキャンセル出来る万能スキルだった件~

空地大乃

文字の大きさ
31 / 68

第31話 再び現れた仮面

しおりを挟む
 銀色の光が地面を抉った。後方に下がりながらその様子を確認して汗が滲む。今のは危なかった。地面はかなり陥没しておりその威力を物語っている。

 しかし、今のでヒットにわかったことがある。敵は他にもいるということだ。そうでなければ今相手していた仮面の男が吹っ飛んでいったにも関わらず魔法が行使された理由がつかない。

「ヒット、これって――」
「あぁ、あの連中は他に潜んでる」

 メリッサに注意を促す。ここで問題なのは敵の数だ。目に見えてわかったのはさっきの1人だが、他に何人いるかは判断がつかない。今のところメタリックスライムを倒した魔法と同じものがヒットにも行使されている。

 全く別々の人間が同じ魔法を行使してきているという可能性もなくはないが、通常は同じタイプが組むことは考えにくい。

 つまりメタリックスライムとヒットに魔法を行使したのは同じ人物、そして魔法職だと理解できる。

 ただ、この魔法はヒットの記憶にない魔法でもある。何よりスキルや魔法の種類が多いゲームでもあった為、その全てを覚えているわけではないが。

 ただ、大雑把な特徴は理解出来る。先ず魔法は位置指定タイプの魔法であること、そして相手の防御力を無視して一定値のダメージを与える魔法だということだ。

 それはメタリックスライムを倒せた点からも理解できる。メタリックスライムは魔法に対しても直接攻撃に対しても耐性がある。それだけ固いのだ。故にメタリックスライムを倒すのに防御無視のクリティカルヒットを利用した。

 つまり今の銀色の光はそれと同じ効果があるとみていい。しかも威力は地面を見ても想像できる。防御無視な上、この威力は看過できない。

 この相手の厄介な点は2つある。先ず気配を消すのに長けている点。そもそもで言えばメタリックスライムは相手の気配にも敏感だ。位置指定の魔法など、ゲームではカーソルが触れた瞬間に察して逃げ出した程だった。

 そのメタリックスライムに気づかれることなく魔法を当てたのだ。そんな相手の居場所を突き止めるのは至難の業だ。

 そして厄介な点その2は、ヒットのキャンセルは基本的に認識外の相手や行動には使えないという点だ。キャンセルは相手の行動を目視してなければ発動させる事ができない。

 故に相手がどこに潜んでいるかわからない上、認識の外から行使される位置指定の魔法には対処が出来ない。

 一応、これに関しても唯一設置型キャンセルだけは別でもある。これは設置した場所とその縦軸に干渉した物をキャンセル出来る。

 ただ、今の熟練度だと設置できるのは1つだけだ。これで凌ぐのは中々に厳しいだろう。

「しかし、魔法系でここまで気配を消せるとは……」

 ヒットは考える。一部の魔法は気配を薄めたりも可能だが、それは動的行動をしていないことが条件だ。魔法で気配を消しても攻撃などを行うと魔法の効果は消えるはずである。

 そう考えた場合、残る可能性は装備品だ。レアリティの高い装備品は強力な魔法効果が付与されていることが多い。
 
 尤もこの場合、効果が永続する分、魔法なんかより更に厄介なわけだが――

「あ~くっそ死ぬかと思った――」

 その時、奥からあの仮面男が愚痴りながら戻ってきた。ヒットが眉をひそめる。

「生きてたのかよ」
「そ、そんな直撃だったのに……」
「あん? 当然だろが。あんなのでやられっかよ」

 強気な声音だった。強がりとは思えない。怪我がほぼないからだ。

「……ポーションか」
「ば~か、そんなもん答えるかよ」
「完治してるようだな。80%ポーションか100%ポーションを持ってたのか?」
「かか、100%なわけないだろうが」

 100%か、とヒットは判断した。町には売ってないものだがギルマスが言っていたように闇ギルドや邪教関係ならそれぐらい持っていてもおかしくはないのかもしれない。

 だが、それよりふとこの仮面について思いついたことがあった。

「ところでお前、他に仲間がいるだろう?」
「は、誰がそんなこと教えるかよ、といいたいとこだが、特別に教えてやる。なんとここには他にも仲間が1万人潜んでるのさ!」
「それは嘘だな」
「い、1万人って……」
「あん! なんで嘘だってわかったんだよ!」

 メリッサも呆れ顔だ。しかしやはりヒットの思ったとおりこの男はウソをつくのが下手らしい。

「流石に1万人はもりすぎだ。お前含めて5人ってところか?」
「か、馬鹿が! そんな目立つ人数でくるかよ!」

 つまり5人以下か、とヒットは判断する。最初に言った1万人も十分多いだろうと思いつつ。

「なら、お前ともう1人ってとこか?」
「……言うわけ無いだろう」

 これで隠れているのは1人だとわかった。この男は嘘が下手だ。

「くだらない話は終わりだ!」

 男が両手にナイフを持ち、襲いかかってきた。戦士系でナイフをメインにするとは考えにくい。

 そうなると斥候系と見るべきだろう。とりあえず振られたナイフを盾で防いだ。だが仮面の男はその反動を利用し回転を加えての連続攻撃を繰り出してくる。

 短剣系の武技であるスピンエッジの可能性を考える。だが、刃から不気味な気体が漏れ出しているのに気がついた。

「これは、毒――さてはお前、ヴァイパーだな?」
「だから答えるかよ!」

 ナイフの刃が紫色に染まった。間違いないなとヒットは考える。ヴァイパーは斥候系のジョブであり毒を扱うのを得意としている。

 スキルで毒を生成し武器に塗布して扱う。つまり男の攻撃は全て毒が絡むと考えていい。
 
「キャンセル」
「チッ」

 男の動きが止まる。ただ毒は無理だ。ヴァイパーは当たり前のように毒を扱うのでこのジョブが扱う毒をキャンセルすることは出来ない。
 
 ならば攻撃そのものをキャンセルするほかない。そしてキャンセルで動きが止まった直後にカウンターを叩き込めば――

「ヒット危ない!」

 メリッサの声に、ヒットは反撃を止めて飛び退いた。するとまたあの銀の光がヒットのいた場所を貫いた。

 油断すると魔法が飛んでくる。この認識外からの攻撃には気をつける必要があるだろう。

「チッ、シルバーブレイクを躱すかよ。あの女ウゼェな。なんであいつを先に狙わないんだ」

 今ので使用している魔法の名前がわかった。そして愚痴るように呟く。この男はメリッサのことを言っているようだが、それはこの男が気がついていないだけで、実は先程からメリッサは狙われていた。

 そのたびにヒットの合図で移動している。メリッサが立っている場所にはキャンセルを設置している。設置したキャンセルは味方には反応しない。つまり味方に重ねるようにキャンセルを設置しておけばメリッサに魔法を行使されても発動しない。

 ただ、精神はガリガリ減っている。タイミングを見て精神安定薬を呑む必要がある。だが何より、もう1人をできるだけ早く何とか対処したいところだ――。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件

おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。 最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する! しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

処理中です...