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風に乗って森の奥深くまで進むと、そこには大きな城があった。
周りには川が流れており、色とりどりの花が咲き乱れている。
森の中でも一番幻想的で、見ているだけで胸がときめく場所であった。
「イクス様はこんな所に住んでいらっしゃるのですね」
「ああ。だがこれからは、ルビアもここで暮らしてほしいと私は思っているよ」
イクス様は目を細め、私のことを見ていた。
優しさと強さを感じる瞳。
私を見つめるその瞳から、目を逸らせないでいた。
会ったばかりだと言うのに……生贄として死ぬことがなくなった安堵からだろうか。
イクス様のお顔に、私は安らぎを覚え始めていた。
城の中に入ると、そこは人間が住む城とよく似た空間が広がっていた。
これならストレスを感じることもなく、普通に暮らせていけそうだ。
「ほらほら、ルビア様。ルビア様の部屋はあっちだよ」
レッドが私の手を引っ張り、部屋へと案内してくれる。
「レッドも君のことが気にいったようだね」
「気にいっただなんて……まだ会ったばかりだというのに」
「会ったばかりだけど、私たちは外見だけを見ているわけではない。ルビアの優しい心に惹かれているんだよ」
「そ、そうなのですか?」
「ああ。もちろん、私もね」
ニコリと笑うイクス様。
こんなストレートに好意を口にされると、どうも照れてしまう。
レッドが大きな扉の前で立ち止まり、勢いよくその扉を開ける。
「わぁ……」
室内には綺麗な花が部屋いっぱいに用意されていた。
花瓶に入れられた花の周りには精霊が舞っており、部屋全体が眩く輝いているようだ。
「綺麗……これ、イクス様が用意してくださったのですか?」
「ああ。だけど、精霊は私が呼んだわけではない。皆君を歓迎しているようだよ」
凄く嬉しかった。
ラース様に捨てられ、レイに裏切られた心が癒されるようだ。
捨てる人もいれば、こうやって私を迎え入れてくれる人もいる。
イクス様の純粋な優しさがとても心に沁み、私は涙を流した。
「どうしたんだい? 何故泣いているんだ?」
「嬉しくて安心して……とても一言では伝えることができそうもありません。でも、イクス様に言っておきたいことがあります」
「なんだい?」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「…………」
イクス様は少し戸惑いながらも手を伸ばし、私の肩を抱いた。
彼の腕はとても暖かく、そして不思議な安らぎを感じる。
私は涙を流しながらも、彼の顔を見上げて笑みを浮かべていた。
周りには川が流れており、色とりどりの花が咲き乱れている。
森の中でも一番幻想的で、見ているだけで胸がときめく場所であった。
「イクス様はこんな所に住んでいらっしゃるのですね」
「ああ。だがこれからは、ルビアもここで暮らしてほしいと私は思っているよ」
イクス様は目を細め、私のことを見ていた。
優しさと強さを感じる瞳。
私を見つめるその瞳から、目を逸らせないでいた。
会ったばかりだと言うのに……生贄として死ぬことがなくなった安堵からだろうか。
イクス様のお顔に、私は安らぎを覚え始めていた。
城の中に入ると、そこは人間が住む城とよく似た空間が広がっていた。
これならストレスを感じることもなく、普通に暮らせていけそうだ。
「ほらほら、ルビア様。ルビア様の部屋はあっちだよ」
レッドが私の手を引っ張り、部屋へと案内してくれる。
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「気にいっただなんて……まだ会ったばかりだというのに」
「会ったばかりだけど、私たちは外見だけを見ているわけではない。ルビアの優しい心に惹かれているんだよ」
「そ、そうなのですか?」
「ああ。もちろん、私もね」
ニコリと笑うイクス様。
こんなストレートに好意を口にされると、どうも照れてしまう。
レッドが大きな扉の前で立ち止まり、勢いよくその扉を開ける。
「わぁ……」
室内には綺麗な花が部屋いっぱいに用意されていた。
花瓶に入れられた花の周りには精霊が舞っており、部屋全体が眩く輝いているようだ。
「綺麗……これ、イクス様が用意してくださったのですか?」
「ああ。だけど、精霊は私が呼んだわけではない。皆君を歓迎しているようだよ」
凄く嬉しかった。
ラース様に捨てられ、レイに裏切られた心が癒されるようだ。
捨てる人もいれば、こうやって私を迎え入れてくれる人もいる。
イクス様の純粋な優しさがとても心に沁み、私は涙を流した。
「どうしたんだい? 何故泣いているんだ?」
「嬉しくて安心して……とても一言では伝えることができそうもありません。でも、イクス様に言っておきたいことがあります」
「なんだい?」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「…………」
イクス様は少し戸惑いながらも手を伸ばし、私の肩を抱いた。
彼の腕はとても暖かく、そして不思議な安らぎを感じる。
私は涙を流しながらも、彼の顔を見上げて笑みを浮かべていた。
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