婚約者は私より親友を選ぶようです。親友の身代わりに精霊王の生贄になった私は幸せになり、国は滅ぶようです。

亜綺羅もも

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 イクス様に案内され森の中を進んで行く。
 森の中ではキラキラ精霊が輝いていて、大変綺麗だった。
 
「素敵な場所ですね……町ではこんな景色、見ることなんてできませんでした。精霊の姿がこんなにハッキリ見えることなんてありませんでしたから」
「私の近くにいればいるほど、精霊たちは人間に近い姿を持つことができる。この辺りにいる子たちはそこそこ私に近い場所に住んでいるからね。ルビアが住んでいたところにいる子たちよりも存在感があるんだよ」

 そうなんだ。
 レッドとヴァールはイクス様の傍で仕えているから、こんなにも人間らしい姿かたちをしているんだ。

 私がレッドの方に視線を向けると彼はニカッと歯を見せて笑い、そして明るく言う。

「僕はイクス様のお世話をしているからね。ルビア様の考えている通りだよ」
「まぁ……私の心が読めるの?」
「読めないよ。でも、そんな目をしていたじゃないか」

 イクス様はクスクス笑いながら足を進める。
 
「ルビアが気に入ってくれたようで嬉しいよ。じゃあ、私の住処へと向かうとするか」
「今、向かっているのですよね……?」
「ああ。でもこのままじゃ、到着するのに数日もかかってしまうよ」

 この森の大きさは把握できない程であったが……そんなにもかかってしまうとは。
 じゃあどうやって住処へと行くというのだろうか。

 するとヴァールが恭しく私に頭を下げる。
 下げたと思うと、私の身体がふわっと浮く。

「ヴァールは風の精霊。目的地まで君を運んでくれるよ」
「え……えええっ!?」

 私の隣をヴァールが浮き、そしてまさに風のような速度で森の中を飛翔する。
 
「わわわわ! 危ない……って」

 木々が目の前に迫ってきているというのに――それら全てが生き物のように動き、私たちの身体を避けていく。
 気が付けばイクス様も私の隣を飛び、優しい笑みを向けてくれていた。

「ヴァールはせこいよな。空を飛べるんだから」
「レ、レッドは飛べないの?」
「飛べないよ。だから走るしかないんだ」

 そう言って私たちに遅れないように地面を駆けているレッド。
 その速度は人間離れしたもので、私は呆然としてそれを見ていた。

「……ふふふ」
「どうしたんだい、ルビア」
「いいえ。とても不思議なことばかりが起きているので、すごく楽しいんです。こんなの、住んでいた場所じゃ考えられないことですから!」
「……本当に、気に入ってもらえたようで良かったよ」

 キラキラした太陽を思わせるような眩しい笑顔。
 私は不思議な体験にワクワクしつつ、イクス様のその笑顔に、心奪われてしまっていた。
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