師匠の嫉妬で才能を奪われた薬師見習いの私、牢獄で本物の力を取り戻す

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その日、わたしは三十人以上の患者を治療した。
疲労困憊で離宮に戻ると、アルヴィン王子が待っていた。暖炉の火が燃え、部屋は温かかった。

「よくやった」

王子は椅子から立ち上がり、わたしに近づいた。

「いえ......これが、わたしの務めです」

わたしは深く頭を下げた。
王子は珍しく、かすかに微笑んだ。口角がわずかに上がり、冷たかった目が少しだけ温かくなる。

「休め。明日も、頼む」



数日間、わたしは治療を続けた。
患者たちは次々と回復し、疫病の勢いは弱まっていった。笑顔が戻り、感謝の言葉をかけられる。
そして、ある日。
治療の最中、わたしは気づいた。
患者の体内に残る毒素が、普通の病気のものではない。黒い、粘つくような魔力の痕跡が見える。
これは、呪術だ。

「殿下」

その日の夜、わたしはアルヴィンに報告した。離宮の書斎で、二人きりで向かい合う。

「この疫病は、自然発生したものではありません」
「......やはりか」

王子は窓の外を見つめた。月明かりが、横顔を照らしている。

「誰かが、呪術を使って毒を撒いた」
「証拠は掴んでいる」

アルヴィンが振り返った。青い目が、鋭く光る。

「わたしは以前から、宮廷内の不穏な動きを調査していた。
グスタフ大臣の屋敷に、怪しい呪術師が出入りしているのを、密偵が確認している」
「グスタフ大臣が......」

わたしは椅子の肘掛けを握り締めた。

「第二王子を擁立し、王権を簒奪する計画だ」

わたしは息を呑んだ。胸が締め付けられる。

「そして、エリザはその協力者か」
「そうだ。エリザは貴女の血統を知り、グスタフに報告した。貴女が力に目覚めれば、計画の障害になる。だから封印した」

全てが繋がった。パズルのピースが、一つ一つ嵌まっていく。
わたしは、ただの見習いではなかった。陰謀の駒にされていた。

「許せない......」

初めて、怒りが湧き上がった。
胸の奥から、熱いものが込み上げる。拳を握り締めると、爪が手のひらに食い込んだ。
アルヴィンが近づいてきた。机を回り、わたしの前に立つ。

「セシリア」

わたしを見つめる目は、もう冷たくなかった。

「貴女を、必ず守る。だから、共に戦ってほしい」
「はい」

わたしは頷いた。涙が溢れそうになるのを、必死でこらえる。

「真実を、明らかにしましょう」
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