師匠の嫉妬で才能を奪われた薬師見習いの私、牢獄で本物の力を取り戻す

er

文字の大きさ
13 / 13

13

しおりを挟む

翌日、授与式が行われた。
国王の前で、わたしは治癒師のローブと徽章を受け取った。
金色の徽章が、胸の上で輝く。
民衆たちが、祝福の言葉を送ってくれた。拍手と歓声が、広間に満ちる。
式の後、ミレイユが駆け寄ってきた。

「セシリア! すごいわ! 王家専属だなんて!」

ミレイユは両手を広げ、飛びつくように抱きついてきた。

「ミレイユ」

わたしたちは抱き合った。温かさが、体に伝わる。

「信じてたのよ。セシリアには、絶対才能があるって」
「ありがとう。貴女が支えてくれたから、ここまで来れた」
「これからも、友達よ」

ミレイユは涙を拭い、笑顔を見せた。そばかすの顔が、喜びで輝いている。

「ええ、ずっと」

数日後、わたしは新しい薬草園で働き始めた。
宮廷の東側にある、広大な庭園だ。
様々な薬草が育てられていて、わたしの研究に必要なものは全て揃っていた。
ラベンダー、カモミール、セージ、ローズマリー。
色とりどりの花が咲き、様々な香りが混じり合う。
ラベンダーの株を丁寧に手入れしていると、足音が聞こえた。草を踏む、柔らかい音だった。

「また、ラベンダーか」

アルヴィンだった。白いシャツの袖をまくり上げている。

「はい。この香りが、好きなので」

わたしは笑顔で答えた。
アルヴィンは隣に膝をついた。土に膝をつき、ラベンダーの株を見つめる。

「手伝おう」
「殿下が、ですか?」
「構わん」

二人で作業をする。沈黙は、心地よかった。小鳥のさえずりと、風が葉を揺らす音だけが聞こえる。

「セシリア」
「はい」

わたしは顔を上げた。

「今後、医療改革を進めたい。貴女の意見を聞かせてほしい」

わたしは顔を上げた。アルヴィンの横顔を見つめる。

「民衆が、もっと簡単に治療を受けられるようにしたいです」
「具体的には」
「各地に治療院を作り、薬師を配置する。そして、治療費を抑えて、貧しい人々も利用できるように」

アルヴィンが頷いた。銀色の髪が、朝日を反射して輝く。

「いい案だ。実現させよう」
「本当ですか?」

わたしは顔を輝かせた。

「貴女となら、できる」

その言葉に、胸が温かくなった。

ラベンダーの花が、朝風に揺れている。
紫の小さな花から、甘い香りが立ち上る。
わたしは微笑み、また作業に戻った。
隣では、アルヴィンも黙々とラベンダーの手入れをしている。
二人の影が、朝日に照らされて地面に伸びていた。
影は、重なり合い、一つになっていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」それが妹の口癖でした、が……

四季
恋愛
「お姉さまみたいな地味な人を愛する殿方なんてこの世にいなくってよ!」 それが妹の口癖でした。

【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?

堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」 両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。 そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。 ◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。 ◆カクヨムにも掲載しています。

【完結】婚約破棄された令嬢リリアナのお菓子革命

猫燕
恋愛
アルテア王国の貴族令嬢リリアナ・フォン・エルザートは、第二王子カルディスとの婚約を舞踏会で一方的に破棄され、「魔力がない無能」と嘲笑される屈辱を味わう。絶望の中、彼女は幼い頃の思い出を頼りにスイーツ作りに逃避し、「癒しのレモンタルト」を完成させる。不思議なことに、そのタルトは食べた者を癒し、心を軽くする力を持っていた。リリアナは小さな領地で「菓子工房リリー」を開き、「勇気のチョコレートケーキ」や「希望のストロベリームース」を通じて領民を笑顔にしていく。

私から色々と奪う妹。男を見る目がなさすぎて私に素敵な男性を押し付けて私が超絶幸せに。妹は不幸に…。

つちのこうや
恋愛
わがままでなんでも私から奪う妹が嫌だと言って押し付けて、私と政略結婚することになった男性がめちゃくちゃいい人だった。性格の悪い妹とは合わなかったみたいだけど。

【完結】私を無知だと笑った妹は正真正銘のバカでした(姉はため息を吐くだけです)

花波薫歩
恋愛
ブリジットの妹メリザンドは、お金欲しさにペラ新聞に貴族の暴露話を書いている。そのことは家族の誰も知らなかった。もちろんブリジットも。 その記事を読んだブリジットは眉をひそめた。人の小さなミスをあげつらい、鬼の首を取ったかのように偉そうに見下す記事には品性のかけらもなかった。 人を見下して笑うのはそんなに楽しい?  自分がされたらどんな気持ちになる? ブリジットの幼馴染みで婚約者でもあるクロードは現在辺境伯の地位にある。ふざけて彼を「田舎貴族」と呼んだブリジットの言葉を真に受けて、メリザンドは姉をディスる話を新聞に書く。やがてそれを書いたのがメリザンドだと父にバレてしまい……。 短編。全12回。

私から婚約者を奪った妹が、1年後に泣きついてきました

柚木ゆず
恋愛
『お姉ちゃん。お姉ちゃんのヌイグルミ、欲しくなったの。あたしにちょうだい』  両親に溺愛される妹・ニナは私が大切にしている物を欲しがり、昔からその全てを奪ってきました。  そしてやがては私から婚約者を奪い、自分が婚約者となって彼の家で同棲を始めたのです。  ですが、それから1年後。 『お姉様助けてっ! あの男をどうにかしてっ!!』  そんな妹が突然帰ってきて、いつも見下していた私に様付けをしながら泣きついてきたのです。  あちらでは仲良く、幸せに暮らしていたはずなのに。何があったのでしょうか……?

聖女だけど婚約破棄されたので、「ざまぁリスト」片手に隣国へ行きます

もちもちのごはん
恋愛
セレフィア王国の伯爵令嬢クラリスは、王太子との婚約を突然破棄され、社交界の嘲笑の的に。だが彼女は静かに微笑む――「ざまぁリスト、更新完了」。実は聖女の血を引くクラリスは、隣国の第二王子ユリウスに見出され、溺愛と共に新たな人生を歩み始める。

没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。

木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。 不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。 当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。 多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。 しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。 その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。 私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。 それは、先祖が密かに残していた遺産である。 驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。 そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。 それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。 彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。 しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。 「今更、掌を返しても遅い」 それが、私の素直な気持ちだった。 ※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)

処理中です...