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暴力王女
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「セシリア嬢は南の大国についてご存じか?」
「南の大国? それって、大陸最強の軍事力を誇るという……」
「その通りだ。流石は騎士の家門の出、よく知っているな」
「いえ、それほどでも……。それより、その国がどうかなさったので?」
「うむ。そこの国の第一王女が我が国に留学することが決まった」
「留学? はあ、そうなのですか……」
それが自分達の婚姻継続と何の関係があるのだろう。
不思議そうな顔をするセシリアに公爵は沈痛な面持ちで口を開く。
「留学と言っても、本当の目的は婿探しだ。王女は我が国で自分の婿となる男を見繕うつもりでいる」
「はあ……婿探しを。大国の王女に見初められるのでしたら、それは大変な誉れでございますね」
セシリアのどうでもよさそうな世辞に気づくことなく、公爵は「普通ならそうであろうな……」とため息をついた。
「その王女に三度も結婚し、三度とも"暴力的な性格"を理由に離婚されたという経歴さえなければな。最初の夫は自国の若き公爵、肋骨を折られたことで裁判沙汰になったそうだ。二人目は他国の年の離れた侯爵、投げつけられたペーパーウェイトで額が割れたという噂がある。三人目は他国の公爵、傷だらけの体で教会に助けを求めてそのまま戻らなかったとか」
「あら、それは……なかなか気性の荒い女性でいらっしゃいますね」
自分と似たようなものだとセシリアは大して驚かなかった。
出来れば自分も腹の立つ夫の肋骨を折ってやりたいものだと。
妻のそんな攻撃的な部分など知らないエリオットは呑気に王女の乱暴な所業に分かり易く引いていた。そんな主人に使用人達は「お前の嫁も似たようなものだよ」と言いたげな視線を送る。
「……ここまで聞いて、君はどう思う?」
「そうですね……。王女のお相手は全員高位貴族で、三人目からは他国の男性になっておりますね」
そこじゃないだろう、と驚愕した顔でセシリアを見るエリオットと使用人達。
相違点を探せというのではなく、もっと王女の暴力的な部分を非難するのが正解ではないのかと。
「おお、よく分かったな! 流石はセシリア嬢だ。鋭いな!」
嘘だろう!と目を見開いて公爵を見るエリオット達。
そんな彼等を気にせず二人は会話を続ける。
「そう、もう王女の母国では彼女を受け入れる男はいない。王命で無理やり娶らせようとしたところ、危うく内乱を招くところだったとか」
「それはそうでしょうね……。あ、だから三人目からは他国の男性なのですね? もう国内は無理だから、他国で探すしかないと」
「うむ、その通りだ。セシリア嬢は聡いので話が早くて助かる。どこぞの阿呆とは大違いだ」
阿呆とは自分の甥をさしているのだと、この場の誰もが分かった。
鈍いエリオット以外は。
「お褒めに与かり光栄です。……あの、もしかして、それで旦那様─エリオット様を既婚者にしておきたかったのですか? 王女に目をつけられないようにするために……」
その通りだ、と頷く公爵を見てセシリアは白けたように顔から表情を失くす。
思ったよりどうでもいい理由だった。セシリアにしてみればエリオットが暴力王女に目をつけられようが別に構わない。もっと政治的な理由だったら納得できたのに、これではとても納得できない。
「あの、それでしたら何も私でなく旦那様の元婚約者のご令嬢でも事足りるのではないですか? ようは妻帯者であればよろしいのでしょう?」
「あの女は駄目だ! あんな礼儀も常識も知らぬ無礼な小娘をこのガーネット家に迎え入れるなど、儂は絶対に認めぬ……」
憎々し気に吐き捨てる公爵の様子から察するに、どうやらエリオットの元婚約者はよほど彼の不興を買ったらしい。いったい何をすればここまで怒らせるのだろう……。
「南の大国? それって、大陸最強の軍事力を誇るという……」
「その通りだ。流石は騎士の家門の出、よく知っているな」
「いえ、それほどでも……。それより、その国がどうかなさったので?」
「うむ。そこの国の第一王女が我が国に留学することが決まった」
「留学? はあ、そうなのですか……」
それが自分達の婚姻継続と何の関係があるのだろう。
不思議そうな顔をするセシリアに公爵は沈痛な面持ちで口を開く。
「留学と言っても、本当の目的は婿探しだ。王女は我が国で自分の婿となる男を見繕うつもりでいる」
「はあ……婿探しを。大国の王女に見初められるのでしたら、それは大変な誉れでございますね」
セシリアのどうでもよさそうな世辞に気づくことなく、公爵は「普通ならそうであろうな……」とため息をついた。
「その王女に三度も結婚し、三度とも"暴力的な性格"を理由に離婚されたという経歴さえなければな。最初の夫は自国の若き公爵、肋骨を折られたことで裁判沙汰になったそうだ。二人目は他国の年の離れた侯爵、投げつけられたペーパーウェイトで額が割れたという噂がある。三人目は他国の公爵、傷だらけの体で教会に助けを求めてそのまま戻らなかったとか」
「あら、それは……なかなか気性の荒い女性でいらっしゃいますね」
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出来れば自分も腹の立つ夫の肋骨を折ってやりたいものだと。
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「……ここまで聞いて、君はどう思う?」
「そうですね……。王女のお相手は全員高位貴族で、三人目からは他国の男性になっておりますね」
そこじゃないだろう、と驚愕した顔でセシリアを見るエリオットと使用人達。
相違点を探せというのではなく、もっと王女の暴力的な部分を非難するのが正解ではないのかと。
「おお、よく分かったな! 流石はセシリア嬢だ。鋭いな!」
嘘だろう!と目を見開いて公爵を見るエリオット達。
そんな彼等を気にせず二人は会話を続ける。
「そう、もう王女の母国では彼女を受け入れる男はいない。王命で無理やり娶らせようとしたところ、危うく内乱を招くところだったとか」
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鈍いエリオット以外は。
「お褒めに与かり光栄です。……あの、もしかして、それで旦那様─エリオット様を既婚者にしておきたかったのですか? 王女に目をつけられないようにするために……」
その通りだ、と頷く公爵を見てセシリアは白けたように顔から表情を失くす。
思ったよりどうでもいい理由だった。セシリアにしてみればエリオットが暴力王女に目をつけられようが別に構わない。もっと政治的な理由だったら納得できたのに、これではとても納得できない。
「あの、それでしたら何も私でなく旦那様の元婚約者のご令嬢でも事足りるのではないですか? ようは妻帯者であればよろしいのでしょう?」
「あの女は駄目だ! あんな礼儀も常識も知らぬ無礼な小娘をこのガーネット家に迎え入れるなど、儂は絶対に認めぬ……」
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