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私は魔除けのお守りですか?
「それに、あの小娘では王女に簡単に言い包められて離婚しそうだ。そんな弱い女を妻にしておく意味は無い」
「え? 離婚? そこまでするんですか?」
「現に二番目の夫は妻帯者だった。大人しい奥方に離婚を迫り、まんまと侯爵夫人の座を手に入れたらしい」
「それは……奥様も侯爵様もお可哀そうに。無理やり引き裂かれるなんて……」
「いや、どうだろう。二番目の夫は若い王女を妻に出来ると喜んでいたらしいぞ。まあ、その対価として額を割ることになったのだが……」
そのまま頭も割れてしまえばよかったのに。若い女に鼻を伸ばす下劣な男に少しでも同情心を抱いたことをセシリアは後悔した。てっきり愛し合う二人の仲が割かれたものかと自分を重ねて無駄に切なくなってしまったじゃないか。
「王女が既婚者までも狙う節操のない方なのはよく分かりました。しかしながら、いくら私の気が強いといえども身分が上の王女に離婚を強要されては断れませんよ? それに他にも独身の貴族はいるのですし、旦那様が標的となる可能性は低いのでは?」
「問題ない。王女は気が強く堂々とした女性を避ける傾向があるそうだ。君がエリオットの妻として隣にいれば手出しされる可能性は低い」
私は魔除けのお守りか、とセシリアは内心うんざりした。
エリオットなど肋骨が折れようが額が割れようがどうとも思わない。むしろ王女に躾けてもらった方が幾分かマシな性根になるのではないか。
「……つまり、公爵様は王女避けの為に私をエリオット様の妻にしておきたいのですか?」
「その通りだ。セシリア嬢にはこのような阿呆の妻という不名誉な称号を与えて申し訳ないのだが、どうか耐えてほしい。儂には亡くなった弟の代わりにエリオットを守らねばならん義務がある。代わりといっては何だが君の父君と兄君の活躍を陰から支えると誓おう」
「……………………」
不名誉と分かっていながら婚姻を継続させようとすることに嫌悪を感じたが、父と兄─ひいてはサフィー家の今後を思えば公爵の庇護を蹴るのは得策ではない。
しばし考えた後、セシリアは「では、条件があります」と告げた。
「おお! 何だ? 何でも言ってくれ!」
「では、エリオット様が元婚約者と今後一切の縁を絶つこと。これが条件です。会う事はおろか手紙等の連絡も一切禁止します。そして、半年間接触が見られなかったことを確認してから寝室を共にします。それまでは寝室は別、社交以外で私に触れることも禁止します」
セシリアのあげた条件にそれまで黙っていたエリオットが「はあ!?」と喚き始めた。
「なんだそれは!? あまりにも無茶苦茶だ!」
「どこがです? こんなことは言われなくても当たり前に出来ているのが当然なのですよ。元婚約者に未練があるようですけど、私との結婚を承諾した以上は義務を果たしてもらわねば困ります。……言っておきますけど、私は恥をかかされたことを一生許しませんからね? あのような前代未聞の扱いを受けた屈辱は生涯忘れられぬことでしょう……」
圧を込めた低い声音で言うと、エリオットは一瞬怯んだ。
「い、いや、あれには訳があったんだ……。決して君に恥をかかせるつもりじゃなかった……。それに僕は別にキャサリンに未練があるわけでは……」
あれで恥をかかせるつもりじゃなかったと言える無神経さに辟易する。
初夜に夫が別の女のもとに行くと行為は何処からどう見ても花嫁を侮辱するモノ以外の何物でもない。
「今更言い訳などみっともないぞ、エリオット!」
「お待ちになって、公爵様。話くらいは聞いても構いません」
甥の情けない姿に激高する公爵を押さえ、セシリアは一応エリオットの言い分を聞こうとする。大分上から目線で。
「おお……なんと寛容な。セシリア嬢がそう言うのなら仕方ないな。おいエリオット、話してみろ」
セシリアを褒めちぎり、甥を貶す公爵に促され、複雑な気持ちでエリオットは理由を話し始めた。
「え? 離婚? そこまでするんですか?」
「現に二番目の夫は妻帯者だった。大人しい奥方に離婚を迫り、まんまと侯爵夫人の座を手に入れたらしい」
「それは……奥様も侯爵様もお可哀そうに。無理やり引き裂かれるなんて……」
「いや、どうだろう。二番目の夫は若い王女を妻に出来ると喜んでいたらしいぞ。まあ、その対価として額を割ることになったのだが……」
そのまま頭も割れてしまえばよかったのに。若い女に鼻を伸ばす下劣な男に少しでも同情心を抱いたことをセシリアは後悔した。てっきり愛し合う二人の仲が割かれたものかと自分を重ねて無駄に切なくなってしまったじゃないか。
「王女が既婚者までも狙う節操のない方なのはよく分かりました。しかしながら、いくら私の気が強いといえども身分が上の王女に離婚を強要されては断れませんよ? それに他にも独身の貴族はいるのですし、旦那様が標的となる可能性は低いのでは?」
「問題ない。王女は気が強く堂々とした女性を避ける傾向があるそうだ。君がエリオットの妻として隣にいれば手出しされる可能性は低い」
私は魔除けのお守りか、とセシリアは内心うんざりした。
エリオットなど肋骨が折れようが額が割れようがどうとも思わない。むしろ王女に躾けてもらった方が幾分かマシな性根になるのではないか。
「……つまり、公爵様は王女避けの為に私をエリオット様の妻にしておきたいのですか?」
「その通りだ。セシリア嬢にはこのような阿呆の妻という不名誉な称号を与えて申し訳ないのだが、どうか耐えてほしい。儂には亡くなった弟の代わりにエリオットを守らねばならん義務がある。代わりといっては何だが君の父君と兄君の活躍を陰から支えると誓おう」
「……………………」
不名誉と分かっていながら婚姻を継続させようとすることに嫌悪を感じたが、父と兄─ひいてはサフィー家の今後を思えば公爵の庇護を蹴るのは得策ではない。
しばし考えた後、セシリアは「では、条件があります」と告げた。
「おお! 何だ? 何でも言ってくれ!」
「では、エリオット様が元婚約者と今後一切の縁を絶つこと。これが条件です。会う事はおろか手紙等の連絡も一切禁止します。そして、半年間接触が見られなかったことを確認してから寝室を共にします。それまでは寝室は別、社交以外で私に触れることも禁止します」
セシリアのあげた条件にそれまで黙っていたエリオットが「はあ!?」と喚き始めた。
「なんだそれは!? あまりにも無茶苦茶だ!」
「どこがです? こんなことは言われなくても当たり前に出来ているのが当然なのですよ。元婚約者に未練があるようですけど、私との結婚を承諾した以上は義務を果たしてもらわねば困ります。……言っておきますけど、私は恥をかかされたことを一生許しませんからね? あのような前代未聞の扱いを受けた屈辱は生涯忘れられぬことでしょう……」
圧を込めた低い声音で言うと、エリオットは一瞬怯んだ。
「い、いや、あれには訳があったんだ……。決して君に恥をかかせるつもりじゃなかった……。それに僕は別にキャサリンに未練があるわけでは……」
あれで恥をかかせるつもりじゃなかったと言える無神経さに辟易する。
初夜に夫が別の女のもとに行くと行為は何処からどう見ても花嫁を侮辱するモノ以外の何物でもない。
「今更言い訳などみっともないぞ、エリオット!」
「お待ちになって、公爵様。話くらいは聞いても構いません」
甥の情けない姿に激高する公爵を押さえ、セシリアは一応エリオットの言い分を聞こうとする。大分上から目線で。
「おお……なんと寛容な。セシリア嬢がそう言うのなら仕方ないな。おいエリオット、話してみろ」
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