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セシリアの怒り
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「驚いた。貴女は法律に詳しいのね? わたくしは疎いからそれを知ったのはずっと後のことだったのよ。とはいえ……知っていたとしても強く出ることはできなかったでしょうけど」
イザベラはずいぶんとエリオットに遠慮しているように見える。
いくら後妻とはいえ、義母なのだからもう少し強く出てもいいのに。
「今からでも遅くはありませんよ? なんでしたら裁判をおこすと脅せばあの気弱な鶏野郎のことです、すぐにでも本来のお義母様の取り分を渡すでしょう」
「鶏野郎……!? い、いえ、今更いいわ。エリオットがわたくしに侯爵家の物を渡したくないという気持ちは分かるもの。いくら義理とはいえ、自分と年の変わらない女が母だなんて嫌だったのでしょう……。エリオットにとってわたくしは父親を誑かした女も同然だもの」
「あの男の気持ちなど、どうでもいいですよ。亡き父君の気持ちを無視し、己の欲だけを優先させるような屑の気持ちなど考える義理はございません。それに、どうせあの屑はお義母様のことを父親を誑かした女だとか何とか嘘を使用人にまで吹き込んだのでしょう? だから使用人まで本来は敬うべき立場の貴女に冷たくあたった。違いますか?」
「……見ていたの、というくらい当たっているわ。なんでそんなに勘が鋭いの? いや、もう勘で済む話ではないような……」
実際に見てきたと言っても過言はないほど自分の境遇を言い当てるセシリアにイザベラは驚愕した。
「許せませんね……。やはり今からでも使用人を躾け直さなくては。まずは自分の立場を分からせてやります」
「い、いえ、その必要はないわ! 貴女が脅したあの日から使用人の態度がガラリと変わって、怖いくらい丁寧になったから」
「脅した? はて……いつそんなことをしましたかね?」
「え……自覚ないの? 嘘でしょう……」
使用人の心に消えない恐怖を刻み込んだあの朝のことをセシリアは本気で覚えていないようだった。それくらい彼女の中ではどうでもいいことなのかもしれない。
「そんなことより、お義母様が理不尽な目に遭われていることが納得できません。受け取るはずだった遺産を訳の分からない理由でエリオット様に奪われ、他に行く場所がないからここにいるしかないのに邪魔者扱いされているなど理不尽にも程があります。おまけにエリオット様と元婚約者との破談の理由にまでさせられて、こんな酷い話がありますか!」
「ええ!? どうして貴女が元婚約者とエリオットの破談の理由まで知っているの……」
「話し合いの際、公爵様とエリオット様がそんなことを言っておりました。公爵様はそれについてエリオット様と元婚約者に怒っておりましたが、私も怒りを覚えましたね。エリオット様は自分がお義母様の行く宛てを潰したくせに被害者面、元婚約者はお義母様がいることを分かったうえで婚約したでしょうに土壇場になって被害者面。本当にお似合いの二人ですこと。腹が立ちます」
セシリアが自分の怒りを代弁してくれたので、イザベラは何も言えず呆気にとられた。
夫を亡くし、彼との思い出の場所まで奪われて、すべてを諦めていたイザベラだったが、セシリアが自分の代わりに怒ってくれたことで、不思議と胸がすく思いがした。
「そう……ね。本当にその通りだわ。エリオットの婚約がわたくしのせいで破談になって、申し訳なく思っていたけれど……あちらは最初からわたくしの存在を知っていたはずなのよね。それなのにどうして土壇場になって急にそんなことを言い出したのかしら……」
ずっと自分が悪いと思い込んでいたイザベラだったが、セシリアに言われて初めて違和感を覚えた。
イザベラはずいぶんとエリオットに遠慮しているように見える。
いくら後妻とはいえ、義母なのだからもう少し強く出てもいいのに。
「今からでも遅くはありませんよ? なんでしたら裁判をおこすと脅せばあの気弱な鶏野郎のことです、すぐにでも本来のお義母様の取り分を渡すでしょう」
「鶏野郎……!? い、いえ、今更いいわ。エリオットがわたくしに侯爵家の物を渡したくないという気持ちは分かるもの。いくら義理とはいえ、自分と年の変わらない女が母だなんて嫌だったのでしょう……。エリオットにとってわたくしは父親を誑かした女も同然だもの」
「あの男の気持ちなど、どうでもいいですよ。亡き父君の気持ちを無視し、己の欲だけを優先させるような屑の気持ちなど考える義理はございません。それに、どうせあの屑はお義母様のことを父親を誑かした女だとか何とか嘘を使用人にまで吹き込んだのでしょう? だから使用人まで本来は敬うべき立場の貴女に冷たくあたった。違いますか?」
「……見ていたの、というくらい当たっているわ。なんでそんなに勘が鋭いの? いや、もう勘で済む話ではないような……」
実際に見てきたと言っても過言はないほど自分の境遇を言い当てるセシリアにイザベラは驚愕した。
「許せませんね……。やはり今からでも使用人を躾け直さなくては。まずは自分の立場を分からせてやります」
「い、いえ、その必要はないわ! 貴女が脅したあの日から使用人の態度がガラリと変わって、怖いくらい丁寧になったから」
「脅した? はて……いつそんなことをしましたかね?」
「え……自覚ないの? 嘘でしょう……」
使用人の心に消えない恐怖を刻み込んだあの朝のことをセシリアは本気で覚えていないようだった。それくらい彼女の中ではどうでもいいことなのかもしれない。
「そんなことより、お義母様が理不尽な目に遭われていることが納得できません。受け取るはずだった遺産を訳の分からない理由でエリオット様に奪われ、他に行く場所がないからここにいるしかないのに邪魔者扱いされているなど理不尽にも程があります。おまけにエリオット様と元婚約者との破談の理由にまでさせられて、こんな酷い話がありますか!」
「ええ!? どうして貴女が元婚約者とエリオットの破談の理由まで知っているの……」
「話し合いの際、公爵様とエリオット様がそんなことを言っておりました。公爵様はそれについてエリオット様と元婚約者に怒っておりましたが、私も怒りを覚えましたね。エリオット様は自分がお義母様の行く宛てを潰したくせに被害者面、元婚約者はお義母様がいることを分かったうえで婚約したでしょうに土壇場になって被害者面。本当にお似合いの二人ですこと。腹が立ちます」
セシリアが自分の怒りを代弁してくれたので、イザベラは何も言えず呆気にとられた。
夫を亡くし、彼との思い出の場所まで奪われて、すべてを諦めていたイザベラだったが、セシリアが自分の代わりに怒ってくれたことで、不思議と胸がすく思いがした。
「そう……ね。本当にその通りだわ。エリオットの婚約がわたくしのせいで破談になって、申し訳なく思っていたけれど……あちらは最初からわたくしの存在を知っていたはずなのよね。それなのにどうして土壇場になって急にそんなことを言い出したのかしら……」
ずっと自分が悪いと思い込んでいたイザベラだったが、セシリアに言われて初めて違和感を覚えた。
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