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父親と息子でこうも違う
「貴女が想像した通りよ。亡くなった夫はお金とは別に海辺にある別荘をわたくしに遺してくれたの。そこは二人で行った思い出の場所でね……」
イザベラは亡き夫との思い出に心を馳せ、どこか遠くを見つめていた。
恋い慕う想いを憂いににじませたような表情はひときわ美しく、そして切なげだ。
彼女が亡き先代を深く愛していたことはそれだけで十分に伝わってくる。
「自分の死後、わたくしがここに残れば肩身の狭い想いをすると分かっていたのよ。わたくしにはもう帰る場所がないと知っていたからこそ、せめて穏やかに過ごせるように二人の思い出の場所を遺してくれたのでしょう……」
「先代様はお義母様のことを深く愛していらっしゃったのですね」
「ええ……夫はわたくしのことをとても大切にしてくださったわ。わたくしはね、とある下位貴族が愛人に産ませた庶子なの。亡くなった母に似て見目がいいというだけの理由で引き取られ、金持ちの貴族の後妻にするつもりで最低限の淑女教育だけを施されたのよ。希望など微塵も抱かぬまま嫁いだというのに、夫は思いがけず誠実で優しい人だった。わたくしはすぐにあの人に恋をしてしまったの。嬉しいことに夫も同じ気持ちをわたくしに抱いてくださった。結婚生活は今までの人生の中で一番幸せで満ち足りたものだったわ……」
うっとりと語るイザベラは恋する乙女そのものだった。
彼女にこんな表情をさせるほど先代は素敵な男性だったのだと分かる。
(先代様はとても素敵な方のようだけど……息子のエリオット様はどうしてああなのかしら。素敵な要素が微塵も見当たらないわ……)
父親が素敵だからといって、その息子まで同じとは限らない。セシリアはどこか落胆を覚えた。息子は妻を大切にするどころか、新婚初日から前代未聞の無礼な態度を取ったというのに。もしもエリオットが先代のように妻を大切にする人であったなら、セシリアもこの家に骨を埋める覚悟を保てたはずだ。
義母が羨ましい、と素直に思う。そんな素敵な人と添い遂げることが出来て。
「何もなければわたくしは夫の遺言に従いこの家を出たはずなのよ。そして今頃はその別荘で夫との思い出に浸りながら暮らしていたはずなの。でも、エリオットが『その別荘は侯爵家の持ち物だから、あなたが貰うのはおかしい』って、待ったをかけてきたのよ」
「……それ、公爵様もおっしゃっていましたけど、おかしいことは何もありませんね。後妻といえども先代様の正式な奥方なのですから、お義母様は立派な侯爵家の一員です。先代様の遺産を相続する権利はございます。エリオット様の言い分ですと、侯爵家の血を継ぐ者もしくは次代の当主が全てを受け継ぐようもの。かつてはそれが成立していた時代もございますが、現行法では認められておりません。妻にも正当な相続分がきちんと定められております」
エリオット様は法律にあまりお詳しくないようですね、とため息交じりにそう言い放つセシリアにイザベラは目を見開いて驚いた。
イザベラは亡き夫との思い出に心を馳せ、どこか遠くを見つめていた。
恋い慕う想いを憂いににじませたような表情はひときわ美しく、そして切なげだ。
彼女が亡き先代を深く愛していたことはそれだけで十分に伝わってくる。
「自分の死後、わたくしがここに残れば肩身の狭い想いをすると分かっていたのよ。わたくしにはもう帰る場所がないと知っていたからこそ、せめて穏やかに過ごせるように二人の思い出の場所を遺してくれたのでしょう……」
「先代様はお義母様のことを深く愛していらっしゃったのですね」
「ええ……夫はわたくしのことをとても大切にしてくださったわ。わたくしはね、とある下位貴族が愛人に産ませた庶子なの。亡くなった母に似て見目がいいというだけの理由で引き取られ、金持ちの貴族の後妻にするつもりで最低限の淑女教育だけを施されたのよ。希望など微塵も抱かぬまま嫁いだというのに、夫は思いがけず誠実で優しい人だった。わたくしはすぐにあの人に恋をしてしまったの。嬉しいことに夫も同じ気持ちをわたくしに抱いてくださった。結婚生活は今までの人生の中で一番幸せで満ち足りたものだったわ……」
うっとりと語るイザベラは恋する乙女そのものだった。
彼女にこんな表情をさせるほど先代は素敵な男性だったのだと分かる。
(先代様はとても素敵な方のようだけど……息子のエリオット様はどうしてああなのかしら。素敵な要素が微塵も見当たらないわ……)
父親が素敵だからといって、その息子まで同じとは限らない。セシリアはどこか落胆を覚えた。息子は妻を大切にするどころか、新婚初日から前代未聞の無礼な態度を取ったというのに。もしもエリオットが先代のように妻を大切にする人であったなら、セシリアもこの家に骨を埋める覚悟を保てたはずだ。
義母が羨ましい、と素直に思う。そんな素敵な人と添い遂げることが出来て。
「何もなければわたくしは夫の遺言に従いこの家を出たはずなのよ。そして今頃はその別荘で夫との思い出に浸りながら暮らしていたはずなの。でも、エリオットが『その別荘は侯爵家の持ち物だから、あなたが貰うのはおかしい』って、待ったをかけてきたのよ」
「……それ、公爵様もおっしゃっていましたけど、おかしいことは何もありませんね。後妻といえども先代様の正式な奥方なのですから、お義母様は立派な侯爵家の一員です。先代様の遺産を相続する権利はございます。エリオット様の言い分ですと、侯爵家の血を継ぐ者もしくは次代の当主が全てを受け継ぐようもの。かつてはそれが成立していた時代もございますが、現行法では認められておりません。妻にも正当な相続分がきちんと定められております」
エリオット様は法律にあまりお詳しくないようですね、とため息交じりにそう言い放つセシリアにイザベラは目を見開いて驚いた。
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