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「ロベール、あなたは実に多才ね。こんなさりげない方法で二人を会わせるなんて、私には考えもしなかったわ。それにこの報告書……まるで恋愛物語の一節を読んでいるかのよう。早く続きが読みたくなってしまうわね……」
報告にやってきたロベールを笑いながら褒めるセシリアに、彼は「恐れ入ります」と頭を下げた。
「仕事とはいえ、奥方様に対して書く内容ではないと思いました。流石に、夫が別の女性と恋に落ちる部分はご不快に思われたことでしょう……」
「あら、いいのよ。自分で了承した以上、文句を言うつもりはないわ。それより、よくこんな方法をどうやって思いついたの? 私だったら、どうにかして二人を接触させ、それを指摘して離婚まで持って行くことしか考え付かないわ。まさかエリオット様自身がキャサリン様に惹かれるようにする方法なんて、到底思いつかないもの」
ロベールはセシリアが少しも不快に思っていないことに安堵した。
報告し終えてから、あれは不快に思ったのではないかと気を揉んでいたのだ。
こうして直接報告に来るのを躊躇うほどに。
「恐縮であります。偶然を装ってこっそり会わせる方法だと、エリオット様はおそらく拒否されるでしょう。なので、たまたま同じ場所で偶然顔を合わせた、という体をとれば拒まれないと考えました。最初は逃げようとしましたが、私が『予期せぬ場所で偶然会った程度ならば接触のうちには入りません』と言えばあっさりと受け入れてくださいました。この程度なら”接触した”と奥様に詰められても”偶然”だと反論できる、とも」
「たしかにね……。この程度で私が『接触した』と騒いでも、ガーネット公爵様あたりから諫められそうよ。『意図しない形で接触したことでそんなに騒いでは、エリオットは外出すらできないではないか』とか言ってきそうだわ」
「ええ、ですので、エリオット様自身からキャサリンお嬢様に会いたくなるよう仕向けました。私の見立てではそのうちご自身からお嬢様に”会いたい”と言ってくるかもしれません」
「あら? 最近、頻繁に出かけているのはキャサリン様に会いに行っているわけではないの?」
「厳密には”外出するとキャサリンお嬢様に高確率で会える”ので、出かけるのだと思います」
「……それ、エリオット様は変だと思わないの? 外出すれば必ずキャサリン様に会えるなんてこと、普通はあるわけないわよね。誰かに操られているって考えるのものではなくて?」
「多分、薄々それに気づいているかと思われます。ですが、御本人としては手紙のやり取りも言伝もなく、お目当ての相手に会える状況を喜んでおりますね」
「ああ……あの流され体質のエリオット様なら有り得そうね。労せず、好いた相手に会えるのならこれほど楽なことはないわ。疑問を感じることなく、楽な方へと流される彼らしいわね。……でも、それだとその状況下であえて自分からキャサリン様に会おうとするものかしら? 何もしなくとも会えるのなら、わざわざ自分から動こうとはしないのではなくて?」
「ええ、分かっております。ですので、そろそろ”外出先にキャサリンお嬢様がいる”という偶然を止めるつもりです。会えなくなれば、その分一層想いが募ることでしょう。我慢できなくなり、会いたいと言ってきましたらどこかの個室で密会させるつもりです」
「まあ……! 策士だこと……。実に簡単に引っかかってくれそうな罠ね」
「お褒めに与かり光栄です。……あの、ところで、ひとつだけお伺いしたいことがあります」
「あら、何かしら?」
どこか迷いを浮かべた目で視線をさまよわせるロベールに、セシリアは静かに続きを促した。
「その……男女が個室で密会となると、あの……体の関係までもつかもしれません。奥様は……それに耐えられますか? 一応はエリオット様は貴女の夫ですし……」
どうやらロベールは、夫が別の女と不貞を働いたら妻としては不愉快ではないかと聞いているようだ。
確かに、第三者的に見れば妻の立場にとってはかなり不快な状況だろう。夫が他所の女と恋愛を楽しんだ挙句、一線を越えようとしているというのは。
だが、セシリアにとっては、かえって好都合だ
それくらいしないと、あの公爵に離婚を認めてもらえない。
流石に令嬢の純潔を奪ったとなれば、責任を取らざるを得ないはずだ。
「構わなくてよ。むしろ、そのくらいしないとキャサリン様がこの家に嫁ぐのは難しいもの」
あれだけ公爵から嫌われているキャサリンがエリオットと結ばれる方法なんてそれ以外思いつかない。
セシリアから了承を得たロベールは、恭しく「かしこまりました」と一礼した。
報告にやってきたロベールを笑いながら褒めるセシリアに、彼は「恐れ入ります」と頭を下げた。
「仕事とはいえ、奥方様に対して書く内容ではないと思いました。流石に、夫が別の女性と恋に落ちる部分はご不快に思われたことでしょう……」
「あら、いいのよ。自分で了承した以上、文句を言うつもりはないわ。それより、よくこんな方法をどうやって思いついたの? 私だったら、どうにかして二人を接触させ、それを指摘して離婚まで持って行くことしか考え付かないわ。まさかエリオット様自身がキャサリン様に惹かれるようにする方法なんて、到底思いつかないもの」
ロベールはセシリアが少しも不快に思っていないことに安堵した。
報告し終えてから、あれは不快に思ったのではないかと気を揉んでいたのだ。
こうして直接報告に来るのを躊躇うほどに。
「恐縮であります。偶然を装ってこっそり会わせる方法だと、エリオット様はおそらく拒否されるでしょう。なので、たまたま同じ場所で偶然顔を合わせた、という体をとれば拒まれないと考えました。最初は逃げようとしましたが、私が『予期せぬ場所で偶然会った程度ならば接触のうちには入りません』と言えばあっさりと受け入れてくださいました。この程度なら”接触した”と奥様に詰められても”偶然”だと反論できる、とも」
「たしかにね……。この程度で私が『接触した』と騒いでも、ガーネット公爵様あたりから諫められそうよ。『意図しない形で接触したことでそんなに騒いでは、エリオットは外出すらできないではないか』とか言ってきそうだわ」
「ええ、ですので、エリオット様自身からキャサリンお嬢様に会いたくなるよう仕向けました。私の見立てではそのうちご自身からお嬢様に”会いたい”と言ってくるかもしれません」
「あら? 最近、頻繁に出かけているのはキャサリン様に会いに行っているわけではないの?」
「厳密には”外出するとキャサリンお嬢様に高確率で会える”ので、出かけるのだと思います」
「……それ、エリオット様は変だと思わないの? 外出すれば必ずキャサリン様に会えるなんてこと、普通はあるわけないわよね。誰かに操られているって考えるのものではなくて?」
「多分、薄々それに気づいているかと思われます。ですが、御本人としては手紙のやり取りも言伝もなく、お目当ての相手に会える状況を喜んでおりますね」
「ああ……あの流され体質のエリオット様なら有り得そうね。労せず、好いた相手に会えるのならこれほど楽なことはないわ。疑問を感じることなく、楽な方へと流される彼らしいわね。……でも、それだとその状況下であえて自分からキャサリン様に会おうとするものかしら? 何もしなくとも会えるのなら、わざわざ自分から動こうとはしないのではなくて?」
「ええ、分かっております。ですので、そろそろ”外出先にキャサリンお嬢様がいる”という偶然を止めるつもりです。会えなくなれば、その分一層想いが募ることでしょう。我慢できなくなり、会いたいと言ってきましたらどこかの個室で密会させるつもりです」
「まあ……! 策士だこと……。実に簡単に引っかかってくれそうな罠ね」
「お褒めに与かり光栄です。……あの、ところで、ひとつだけお伺いしたいことがあります」
「あら、何かしら?」
どこか迷いを浮かべた目で視線をさまよわせるロベールに、セシリアは静かに続きを促した。
「その……男女が個室で密会となると、あの……体の関係までもつかもしれません。奥様は……それに耐えられますか? 一応はエリオット様は貴女の夫ですし……」
どうやらロベールは、夫が別の女と不貞を働いたら妻としては不愉快ではないかと聞いているようだ。
確かに、第三者的に見れば妻の立場にとってはかなり不快な状況だろう。夫が他所の女と恋愛を楽しんだ挙句、一線を越えようとしているというのは。
だが、セシリアにとっては、かえって好都合だ
それくらいしないと、あの公爵に離婚を認めてもらえない。
流石に令嬢の純潔を奪ったとなれば、責任を取らざるを得ないはずだ。
「構わなくてよ。むしろ、そのくらいしないとキャサリン様がこの家に嫁ぐのは難しいもの」
あれだけ公爵から嫌われているキャサリンがエリオットと結ばれる方法なんてそれ以外思いつかない。
セシリアから了承を得たロベールは、恭しく「かしこまりました」と一礼した。
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