やりなおしジュリアーナ姫の復讐劇

わらびもち

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閑話・ダニエルの閃き

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 定期的に行われるオーガスタ家の親族会議。そこでダニエルは親族に向かって堂々とアニーが身ごもったことを発表し、その子が男児だった場合は跡継ぎにするとまで宣言した。

 まあ当然全員から非難の嵐で、普段は穏やかな叔父も烈火の如く怒り狂いダニエルを罵倒した。

「馬鹿も休み休み言え! 平民の愛人を邸内に招き入れただけでも許しがたいというのに……その愛人との子を跡継ぎにするだと!? そんなことが許されるわけがないだろう!!」

 叔父の迫力にダニエルは怯んだが、彼も武人なだけあって無駄に度胸はあった。
 負けじと叔父を睨みつけ「当主は私だ! 私が決めたことは絶対だ!」と言い返す。

「いい加減にしろ! いくら当主であるお前が決めても国王陛下は決してお許しにならない。正式な妻との間に出来た子でない限りその家の子だと認められないことを知らんのか!」

「えっ……!?」

 知らなかったと言わんばかりに驚くダニエルに叔父を始めとした親族一同は侮蔑の目を向けた。こんな知っていて当たり前のことを何故知らないのかと。

「じゃ、じゃあ……アニーを正式な妻にする! どこか貴族家の養女にでもさせれば娶ることは可能だろう?」

「平民は貴族家の養女にはなれん! なれるとしたら片親が貴族の場合のみだ。貴族の青い血を一滴も受け継いでいない平民は貴族家の養女になる資格すらない。……こんなことは常識だろう? 何故お前はこんな貴族として知っていて当たり前のことを知らんのだ?」

 ダニエルの無知さに叔父は怒りを忘れて困惑する。
 先代は貴族としてまともな価値観と倫理観を持っていたはずなのに、息子はどうしてこうも非常識な考えしか持ち合わせていないのかと。

「お前の愛人が子を産んだとしてもそれは庶子として扱われる。庶子には何の権利も発生しない。継承権も相続権も、このオーガスタの家名を名乗ることもだ!」

「そ、そんな……あんまりだ! 愛する女との間に出来た待望の我が子に何の権利も無いだなんて……」

「この期に及んで戯言しか吐けんのかお前は! そんなにその平民の愛人が好きならお前が当主を辞して貴族籍も抜け! それで平民同士結婚でも何でもすればいい! ここまで常識がない人間をこれ以上当主の座に就けておけるか! 陛下に奏上してお前を廃嫡にしてもらってもいいんだぞ!」
 
 叔父の発言にダニエルは顔面蒼白となった。
 何だかんだ言って当主の血を継ぐ子は優遇されるに違いないと本気で思っていたからだ。たとえ母親が平民だとしても、自分という尊い辺境伯家当主の血を継ぐ子であるのなら許されると。

(マズイ……流石に陛下に奏上されたら当主の座を降ろされるかもしれない。いや、それだけじゃなく貴族籍すら剥奪されるかもしれない。そんな、嫌だ……どうしよう、どうしたら……)

 当主の座を追われると知ってダニエルは初めて危機感を覚えた。
 ここで大人しくアニーと別れるか、外で囲うかを選べばよかったのだが彼はとんでもない発想に至ってしまった。

(そうだ……貴族の令嬢をお飾りの妻にすればいい。それでアニーの子をその妻との間にできた子にすればいい! それなら愛する我が子を跡継ぎに出来るはずだ。我ながら名案だ……!)

 貧乏貴族の娘であれば金で黙らせることも出来るはず。
 名案だと浮かれるダニエルに親族の一人が発言する。

「ダニエル様には当主の座は重かったようですな。それなら身軽になられるがよろしかろう。幸いにしてクリストファー様という血筋の優れた男児もおられることですし」

 この発言はダニエルに衝撃を与えた。
 そして自分の何が駄目なのか全く分かっていないダニエルは当主の座に年の離れた従弟の方が相応しいというのを  
 完全にによるものだと勘違いした。

(クリストファーだと? なんであんな子供を私の代わりに当主に据えようなどと考えるんだ……。もしや血筋か? 叔父上の奥方は侯爵家の令嬢で、私の母は下位貴族の出身だ。確かに血筋ではクリストファーには敵わない……)

 常識や人間性からして負けているから親族は常識人のクリストファーを推しているだけなのだが、自分に劣っている部分は血筋のみと勘違いしているダニエルは理解しない。それどころか斜め上の発想に至る。

(まてよ……下手に爵位の低い令嬢を妻に迎えれば、甥のクリストファーに血筋で負けるな。侯爵家の後ろ盾があれば次の辺境伯は僕の子じゃなくてクリストファーになりかねない……。ならばもっと高位の令嬢を妻に迎えねば……)

 血筋の優れた……と親族が言ったのはただ遠回しに表現しただけにすぎない。
 いくら非常識人とはいえ当主に向かって「お前とは比べ物にならないほどクリストファーがマトモだから」と言うわけにはいかないのであえて血筋を持ち出しただけ。

 それはこの場にいるダニエル以外の人間は分かっていたが、当の本人は言葉通り……いや、大分捻じ曲がった方向に受け取ってしまった。この場にいる誰もが思いつかないような斜め上の発想に至ったダニエルは、丁度先の戦の褒美を国王より賜る予定だったことを思い出す。

(そうだ……王女ならば血筋も身分も申し分ない。侯爵家出身の叔母上にだって簡単に太刀打ちできる。よし……)

 この時、ダニエルは戦勝の褒美にことを思いついた。
 王女をお飾りの妻にしようと考えるなど正気ではない。だが、浅慮なダニエルは恐ろしい事にこれが名案だと疑わなかった。

 この閃きこそがジュリアーナの不幸の始まりである。
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