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悪魔の囁き
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王女と婚約を果たしたダニエルは日増しに奇行が目立つようになった。
以前よりもやたらとジュリアーナと二人きりになろうとする。
いくら婚約者といえども未婚の淑女相手に下心丸出しの行動は見ていて気持ちいいものではない。むしろ不快だ。万が一王女の貞操に危険があっては大変なので、傍にいる侍女や護衛は一層警戒心を強めた。
警戒が強くなったことにますます焦りを覚えたダニエルはどうにかしてジュリアーナをオーガスタ領へと連れていこうとする言動も増えた。やたら二人きりになろうとし、己の領地へと誘うダニエルの姿に周囲は「この男は王女に対して下心しかないのか?」と不信感を募らせる。
相変わらず贈り物ひとつ寄越さないくせしてやたら二人きりになりたがり、領地に連れていこうとする。この男はもしや王女の体目当てで求婚したのかと王宮の者はダニエルに露骨なまでの嫌悪を向けるようになった。
そして、当のジュリアーナは涼しい顔でその状況を傍観していた。
心の中でダニエルの無様な姿を嗤いながら。
(面白いほど焦って自滅しているわ。このまま傍観していれば勝手に破滅してくれそうだけど……)
多分、このままの状態が続けば単純なこの男のことだ。力づくで襲いかかろうとしてくるかもしれない。いくら婚約者とはいえ未婚の王女を傷物にした場合はいくら貴族といえども重い処罰は免れない。王族を害した輩への処罰が甘いと王家の威信に関わるからだ。
特にジュリアーナの母は他国の王女だ。ジュリアーナを害した輩への罰が甘くては王妃の母国に示しがつかない。
そうなるともしかして死罪も有り得るかもしれない。
しかし、そんなにアッサリと破滅されてはこちらの溜飲が下がらない。
それに憎いのはダニエルだけではない。あの邸の連中も同じだ。
当主の命令に逆らえなかったとはいえ、王女が監禁されているのを見て見ぬふりをしていいと思っていること自体がまず有り得ない。辺境伯と王族、どちらの身分が上で、どちらの方を敵に回すべきでないか分かっていないことがもう有り得ない。
王族にあんな真似をすれば一族全員断頭台行きは確定だ。
あの門番は家族を守るためにジュリアーナを見殺しにするようなことを言っていたが、それはその大切な家族を断頭台へ送る行為だと理解していない。
あの時助けてくれたならジュリアーナは門番を家族ごと保護しただろう。
王家の庇護下にあるのならばダニエルが報復してこようとも太刀打ちできるはずもない。
そもそもダニエル自身が王女への監禁罪で捕縛されるから報復しようもない。
今更門番を含めた彼等に復讐しようとは思わない。
だが、王族という最高位にある存在を軽く見ている彼等には現実をいうものを知らしめてやりたいとは思っている。
これはただの自己満足でしかない。それは分かっている。
表向きは“王家の権威を理解していない輩に現実を分からせる”という大義があるようだが結局はただ自分がされたことへの仕返しをしたいだけだ。
歪んだ欲望という部分においては自分もダニエルとそう変わらないな、と自嘲の笑みを浮かべたジュリアーナは焦るあまりみっともない姿を晒し続ける婚約者へと悪魔の囁きを告げる。
「オーガスタ卿、是非わたくしを貴方様のお邸に招待してくださいませ」
ジュリアーナの言葉にダニエルは嬉しそうに顔を綻ばせ、侍女や護衛は驚愕の表情を浮かべるのだった……。
以前よりもやたらとジュリアーナと二人きりになろうとする。
いくら婚約者といえども未婚の淑女相手に下心丸出しの行動は見ていて気持ちいいものではない。むしろ不快だ。万が一王女の貞操に危険があっては大変なので、傍にいる侍女や護衛は一層警戒心を強めた。
警戒が強くなったことにますます焦りを覚えたダニエルはどうにかしてジュリアーナをオーガスタ領へと連れていこうとする言動も増えた。やたら二人きりになろうとし、己の領地へと誘うダニエルの姿に周囲は「この男は王女に対して下心しかないのか?」と不信感を募らせる。
相変わらず贈り物ひとつ寄越さないくせしてやたら二人きりになりたがり、領地に連れていこうとする。この男はもしや王女の体目当てで求婚したのかと王宮の者はダニエルに露骨なまでの嫌悪を向けるようになった。
そして、当のジュリアーナは涼しい顔でその状況を傍観していた。
心の中でダニエルの無様な姿を嗤いながら。
(面白いほど焦って自滅しているわ。このまま傍観していれば勝手に破滅してくれそうだけど……)
多分、このままの状態が続けば単純なこの男のことだ。力づくで襲いかかろうとしてくるかもしれない。いくら婚約者とはいえ未婚の王女を傷物にした場合はいくら貴族といえども重い処罰は免れない。王族を害した輩への処罰が甘いと王家の威信に関わるからだ。
特にジュリアーナの母は他国の王女だ。ジュリアーナを害した輩への罰が甘くては王妃の母国に示しがつかない。
そうなるともしかして死罪も有り得るかもしれない。
しかし、そんなにアッサリと破滅されてはこちらの溜飲が下がらない。
それに憎いのはダニエルだけではない。あの邸の連中も同じだ。
当主の命令に逆らえなかったとはいえ、王女が監禁されているのを見て見ぬふりをしていいと思っていること自体がまず有り得ない。辺境伯と王族、どちらの身分が上で、どちらの方を敵に回すべきでないか分かっていないことがもう有り得ない。
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あの時助けてくれたならジュリアーナは門番を家族ごと保護しただろう。
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これはただの自己満足でしかない。それは分かっている。
表向きは“王家の権威を理解していない輩に現実を分からせる”という大義があるようだが結局はただ自分がされたことへの仕返しをしたいだけだ。
歪んだ欲望という部分においては自分もダニエルとそう変わらないな、と自嘲の笑みを浮かべたジュリアーナは焦るあまりみっともない姿を晒し続ける婚約者へと悪魔の囁きを告げる。
「オーガスタ卿、是非わたくしを貴方様のお邸に招待してくださいませ」
ジュリアーナの言葉にダニエルは嬉しそうに顔を綻ばせ、侍女や護衛は驚愕の表情を浮かべるのだった……。
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