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大変なことになった
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大変なことになった……。
ダニエルの側近、シーザーは主から嬉々として伝えられたことに対して頭を抱えていた。
なんと我が国の至宝であり、阿呆な主と婚約してくださった女神のような淑女、ジュリアーナ姫がオーガスタ家への訪問を希望しているらしい。
王族の邸への訪問は名誉なことだと普通なら喜ぶべきことだ。
そう、邸が普通の状況であるならば。
言わずもがな当代のオーガスタ家は普通ではない。
平民の愛人が女主人気取りでのさばっているし、使用人の中には当主と愛人の関係を応援する馬鹿も紛れているし、とてもじゃないが王女を迎えられる状況にない。
「ダニエル様……。王女殿下をご招待するのでしたらまずはアニー嬢を何処か別の場所へと移動していただきませんと……」
浮かれているダニエルに釘を刺すと、途端に怪訝そうな顔に変わる。
「馬鹿を言うな、身重のアニーにそんな負担をかけさせるわけにはいかないだろう?」
「馬鹿はどちらですか……。身重の愛人なんて王女殿下の目に晒せませんよ。体の負担が気になるなら病院にでも入院させたらいかがです?」
「病院なんて駄目だ! あそこは病気に罹っている患者だっているじゃないか。アニーが何かの病気に感染したらどうするつもりだ!?」
オーガスタ領には出産専用の産院はない。
そういう専門の病院があるのは王都を含めた近郊の領地くらいだ。
「でしたらどうなさるおつもりで? 愛人の姿など見られたら婚約破棄は免れませんよ?」
「それくらい貴族の妻になるなら許容すべきだろう……」
「いえ、少しも“それくらい”ではありません。不誠実極まれりの案件です。そもそも愛人を許容してまでダニエル様と婚約を続ける利益は何ひとつございません」
「なんだと!? 辺境伯家の夫人になれるんだぞ?」
「王女殿下のご身分ならその程度を惜しむ必要はありません。望めば一国の王妃にだってなれるような御方だということが分かりませんか? いち貴族家の夫人の立場なぞこだわらなくてよいのです。正直……何故王女殿下がダニエル様と婚約なさったのかが不思議でなりません。もっといい縁談なぞ山ほどあったでしょうに……」
「なっ……!? 無礼だぞ! 王女が私に惚れたからに決まっているではないか!」
「でも、王女殿下のダニエル様を見つめる目に少しも熱が灯っておりませんよね? 惚れたというのであればもう少し恋した乙女の顔になってもおかしくないと思うのですが……」
シーザーはずっと王女が何故ダニエルと婚約したのか不思議でならなかった。
ダニエルは見た目だけはいいからそこに惚れたのかと思いきや、恋の欠片もない“無”の表情しか向けない。
何か理由があるのだろうかといくら考えてもその答えは分からない。
はっきり言って主人に顔以外の取り柄があるとは思えない。
その顔にすら興味を示していないというなら、王女は何故婚約を承諾したのだろうか。
「とにかく、王女殿下を邸に招待したいのであればまずは邸を綺麗にすることが最低条件です。間違っても愛人を王女殿下の目に触れさせてはなりません」
不満そうな顔をするダニエルに「ご理解いただけましたか?」と念を押すと彼は渋々頷いた。
「それではわたくしの方で邸を整えるよう指示を出して参ります。ダニエル様は王女殿下をもてなす練習でもしておいてください」
シーザーの馬鹿にしたような発言にダニエルは反応しなかった。
どうやら彼の頭の中はアニーを移動させることへの不満と心配で一杯のようだ。
この期に及んで愛人のことしか考えない主人を情けなく思う。
ダニエルの側近、シーザーは主から嬉々として伝えられたことに対して頭を抱えていた。
なんと我が国の至宝であり、阿呆な主と婚約してくださった女神のような淑女、ジュリアーナ姫がオーガスタ家への訪問を希望しているらしい。
王族の邸への訪問は名誉なことだと普通なら喜ぶべきことだ。
そう、邸が普通の状況であるならば。
言わずもがな当代のオーガスタ家は普通ではない。
平民の愛人が女主人気取りでのさばっているし、使用人の中には当主と愛人の関係を応援する馬鹿も紛れているし、とてもじゃないが王女を迎えられる状況にない。
「ダニエル様……。王女殿下をご招待するのでしたらまずはアニー嬢を何処か別の場所へと移動していただきませんと……」
浮かれているダニエルに釘を刺すと、途端に怪訝そうな顔に変わる。
「馬鹿を言うな、身重のアニーにそんな負担をかけさせるわけにはいかないだろう?」
「馬鹿はどちらですか……。身重の愛人なんて王女殿下の目に晒せませんよ。体の負担が気になるなら病院にでも入院させたらいかがです?」
「病院なんて駄目だ! あそこは病気に罹っている患者だっているじゃないか。アニーが何かの病気に感染したらどうするつもりだ!?」
オーガスタ領には出産専用の産院はない。
そういう専門の病院があるのは王都を含めた近郊の領地くらいだ。
「でしたらどうなさるおつもりで? 愛人の姿など見られたら婚約破棄は免れませんよ?」
「それくらい貴族の妻になるなら許容すべきだろう……」
「いえ、少しも“それくらい”ではありません。不誠実極まれりの案件です。そもそも愛人を許容してまでダニエル様と婚約を続ける利益は何ひとつございません」
「なんだと!? 辺境伯家の夫人になれるんだぞ?」
「王女殿下のご身分ならその程度を惜しむ必要はありません。望めば一国の王妃にだってなれるような御方だということが分かりませんか? いち貴族家の夫人の立場なぞこだわらなくてよいのです。正直……何故王女殿下がダニエル様と婚約なさったのかが不思議でなりません。もっといい縁談なぞ山ほどあったでしょうに……」
「なっ……!? 無礼だぞ! 王女が私に惚れたからに決まっているではないか!」
「でも、王女殿下のダニエル様を見つめる目に少しも熱が灯っておりませんよね? 惚れたというのであればもう少し恋した乙女の顔になってもおかしくないと思うのですが……」
シーザーはずっと王女が何故ダニエルと婚約したのか不思議でならなかった。
ダニエルは見た目だけはいいからそこに惚れたのかと思いきや、恋の欠片もない“無”の表情しか向けない。
何か理由があるのだろうかといくら考えてもその答えは分からない。
はっきり言って主人に顔以外の取り柄があるとは思えない。
その顔にすら興味を示していないというなら、王女は何故婚約を承諾したのだろうか。
「とにかく、王女殿下を邸に招待したいのであればまずは邸を綺麗にすることが最低条件です。間違っても愛人を王女殿下の目に触れさせてはなりません」
不満そうな顔をするダニエルに「ご理解いただけましたか?」と念を押すと彼は渋々頷いた。
「それではわたくしの方で邸を整えるよう指示を出して参ります。ダニエル様は王女殿下をもてなす練習でもしておいてください」
シーザーの馬鹿にしたような発言にダニエルは反応しなかった。
どうやら彼の頭の中はアニーを移動させることへの不満と心配で一杯のようだ。
この期に及んで愛人のことしか考えない主人を情けなく思う。
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