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無礼な態度
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(この男……あの時の……!!)
目の前に現れた人物は時戻り前にジュリアーナが監禁された別邸に待機していた執事だった。このいかにもやる気のなさそうな顔は一度会っただけでも強く記憶に刻まれている。
あの時の忌まわしい記憶が呼び起こされ、全身の血が沸騰しそうになる。
それでもこの場でヒステリックに怒り狂う真似など出来るわけもなく、湧き上がる怒りを抑えて冷静にその男を見据えた。
(あら…………?)
ふと、男の態度が異様に思えた。
なんだろうと考えている間に侍女達の叱責が飛び交う。
「無礼な! 控えなさい!」
「こちらの御方をどなたと心得ますか!? 畏れ多くも我が国の王女殿下であらせられますよ? 直ちに平伏なさい!」
そこでハッと気づいた。そうだ、この男は先ほどから頭を少しも下げていない。
それどころか不躾に王女であるジュリアーナの顔をじろじろと眺めている。
王族相手に正気? と驚いている間に護衛騎士達が男を無理やり跪かせた。
「痛っ!? 何をする! 離せ!」
「この無礼者が! 許可なく王女殿下のご尊顔を拝むとは不敬にも程がある!」
抑えつけられ喚く男を護衛騎士が一喝する。
騎士の言い分はもっともだ。いち使用人が王族相手に首を垂れないなど無礼にも程がある。
王族の御前では必ず頭を下げることが当たり前だ。
考えてみれば時戻り前もこの男はジュリアーナに頭を下げることをしなかった。
当主が阿呆だと使用人も阿呆なのかとため息をつきたくなる。
「私は旦那様とアニー様の真実の愛を邪魔する王女に一言いってやろうと思って……」
抑えつけられながらも戯言を吐く男に騎士は「黙れ! 許可なく口を開くなど無礼だぞ! 身の程を弁えろ!」と怒鳴りつける。
ジュリアーナは男の無礼な態度よりも男が余計なことを言うのを恐れて慌て出した。
「その男の口を塞ぎなさい。不愉快です」
冷静を装いながら騎士に命じる。
あくまでも“無礼な態度を不快に思う王女”という体で。
この男が何をしにここへやって来たのかはともかく、愛人の話をしてもらっては困る。
愛人がいることを理由に婚約破棄となってもダニエルにそこまでの痛みは与えられない。それでは婚約した意味が無い。
騎士によって手際よく猿轡を噛まされた男はそれでも何かを言おうとしてもがく。
床に転がされて抑えつけられてまで反抗的な態度を崩さない気概は呆れを通り越していっそ見事だ。そこまでして先ほど言った主人の真実の愛(笑)とやらを応援したいのか。
「失礼いたします、王女殿下! これは……如何いたしましたか!?」
そこに慌てた様子のラティーシャ夫人が現れ、部屋の様子を見て驚愕の表情を浮かべた。
オーガスタ家の使用人が王家の騎士に取り押さえられているあたり、どう見てもそいつが王女に無礼を働いたとしか思えない。最悪の事態を予想して夫人は顔を青くした。
「夫人、どうしてここへ?」
「あ……それは、先ほどの非礼の謝罪をと思いまして……」
タイミング良く夫人が現れたのは先ほどのダニエルの非礼を詫びに来てくれたからだそうだ。本来ならダニエル本人が詫びに来るのが筋だろうが、変にプライドが高そうなあの男には無理な話だ。
「この者は何か王女殿下に無礼を働きましたでしょうか? そうであればわたくしの管理が届かず申し訳ございません!」
「いえ、夫人を責めるつもりはないわ。この使用人はわたくし抗議をしにきたみたいよ。頭も下げず、許可も得ずに話し出したの」
「王族の御前で頭を下げなかった……? それに畏れ多くも殿下に抗議を……? 大変申し訳ございませんでした!」
事の重大さを知った夫人はその場で平伏した。
使用人がとった王族相手の有り得ない態度に申し訳なさと恐怖で顔面蒼白のまま体を震わせている。
「夫人、ドレスが汚れてしまうわ。どうか頭を上げてちょうだい」
「いいえ! そのようなことは構いません。当家の使用人が殿下に対してとんでもない恥知らずな真似を……本当に申し訳ございません! どんな沙汰でも受け入れますので、どうか平にご容赦を……!」
一時的とはいえ今のオーガスタ家の女主人はラティーシャ夫人だ。
そうなると使用人を管理するのも彼女の役割となり、使用人の無礼も彼女の責任となる。
しかし、ジュリアーナは夫人を罰するつもりはなかった。
目の前に現れた人物は時戻り前にジュリアーナが監禁された別邸に待機していた執事だった。このいかにもやる気のなさそうな顔は一度会っただけでも強く記憶に刻まれている。
あの時の忌まわしい記憶が呼び起こされ、全身の血が沸騰しそうになる。
それでもこの場でヒステリックに怒り狂う真似など出来るわけもなく、湧き上がる怒りを抑えて冷静にその男を見据えた。
(あら…………?)
ふと、男の態度が異様に思えた。
なんだろうと考えている間に侍女達の叱責が飛び交う。
「無礼な! 控えなさい!」
「こちらの御方をどなたと心得ますか!? 畏れ多くも我が国の王女殿下であらせられますよ? 直ちに平伏なさい!」
そこでハッと気づいた。そうだ、この男は先ほどから頭を少しも下げていない。
それどころか不躾に王女であるジュリアーナの顔をじろじろと眺めている。
王族相手に正気? と驚いている間に護衛騎士達が男を無理やり跪かせた。
「痛っ!? 何をする! 離せ!」
「この無礼者が! 許可なく王女殿下のご尊顔を拝むとは不敬にも程がある!」
抑えつけられ喚く男を護衛騎士が一喝する。
騎士の言い分はもっともだ。いち使用人が王族相手に首を垂れないなど無礼にも程がある。
王族の御前では必ず頭を下げることが当たり前だ。
考えてみれば時戻り前もこの男はジュリアーナに頭を下げることをしなかった。
当主が阿呆だと使用人も阿呆なのかとため息をつきたくなる。
「私は旦那様とアニー様の真実の愛を邪魔する王女に一言いってやろうと思って……」
抑えつけられながらも戯言を吐く男に騎士は「黙れ! 許可なく口を開くなど無礼だぞ! 身の程を弁えろ!」と怒鳴りつける。
ジュリアーナは男の無礼な態度よりも男が余計なことを言うのを恐れて慌て出した。
「その男の口を塞ぎなさい。不愉快です」
冷静を装いながら騎士に命じる。
あくまでも“無礼な態度を不快に思う王女”という体で。
この男が何をしにここへやって来たのかはともかく、愛人の話をしてもらっては困る。
愛人がいることを理由に婚約破棄となってもダニエルにそこまでの痛みは与えられない。それでは婚約した意味が無い。
騎士によって手際よく猿轡を噛まされた男はそれでも何かを言おうとしてもがく。
床に転がされて抑えつけられてまで反抗的な態度を崩さない気概は呆れを通り越していっそ見事だ。そこまでして先ほど言った主人の真実の愛(笑)とやらを応援したいのか。
「失礼いたします、王女殿下! これは……如何いたしましたか!?」
そこに慌てた様子のラティーシャ夫人が現れ、部屋の様子を見て驚愕の表情を浮かべた。
オーガスタ家の使用人が王家の騎士に取り押さえられているあたり、どう見てもそいつが王女に無礼を働いたとしか思えない。最悪の事態を予想して夫人は顔を青くした。
「夫人、どうしてここへ?」
「あ……それは、先ほどの非礼の謝罪をと思いまして……」
タイミング良く夫人が現れたのは先ほどのダニエルの非礼を詫びに来てくれたからだそうだ。本来ならダニエル本人が詫びに来るのが筋だろうが、変にプライドが高そうなあの男には無理な話だ。
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「いえ、夫人を責めるつもりはないわ。この使用人はわたくし抗議をしにきたみたいよ。頭も下げず、許可も得ずに話し出したの」
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使用人がとった王族相手の有り得ない態度に申し訳なさと恐怖で顔面蒼白のまま体を震わせている。
「夫人、ドレスが汚れてしまうわ。どうか頭を上げてちょうだい」
「いいえ! そのようなことは構いません。当家の使用人が殿下に対してとんでもない恥知らずな真似を……本当に申し訳ございません! どんな沙汰でも受け入れますので、どうか平にご容赦を……!」
一時的とはいえ今のオーガスタ家の女主人はラティーシャ夫人だ。
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しかし、ジュリアーナは夫人を罰するつもりはなかった。
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