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騎士団
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「麗しのご尊顔を拝し恐悦至極に存じます。王女殿下が御自らこの地へお越しくださるとは光栄の極み。オーガスタ家当主の叔父にて子爵家当主、ギルバートと申します」
ラティーシャ夫人に連れられてきたオーガスタ子爵は恭しくジュリアーナの前に跪き、首を垂れる。
「お呼び立てしてごめんなさいね、子爵。どうぞ頭を上げてちょうだい」
「ありがたき幸せに存じます」
許可を得たうえで顔を上げるオーガスタ子爵に心なしか安堵を覚えた。
どうもこの邸に来てからラティーシャ夫人以外は非常識で礼儀作法もなっていない者が多かったせいか嫌な気分になっていたようだ。
「わたくしの我儘につきあわせてしまい申し訳ないわね」
「とんでもございません! 殿下のお望みを叶えることは臣下として望外の喜びにございます。それに畏れ多くも王家の姫君より直接労いの言葉をかけて頂けるなぞ末代までの自慢になりましょう。どうぞわたくしめに何なりとお申し付けくださいませ」
謹厳実直を体現したかのような人物というのがオーガスタ子爵の第一印象だった。
その精悍さから頼りがいも感じられ、彼が騎士団の纏め役だというのは見ただけで納得できるものがある。
「頼もしいわね。では、先ほどラティーシャ夫人に言伝を頼んだ件の準備は整っているかしら? 急だったから無理をさせてしまって申し訳ないのだけど……」
「勿論準備は整ってございます。我等は王家の剣にして盾、つまりは王族方のものにございます。姫様がご遠慮なさることなど何もございません。むしろお気を遣って頂いて大変有難く存じます」
王家の剣にして盾、という言葉は我が国の騎士が好んで使う言い回しだ。
国の為に戦っているのだと己を鼓舞するため、そして王家に忠実だということを示すために騎士達はよくこれを口にする。
ならば、いち騎士にしてオーガスタ家騎士団を統率する立場にあるダニエルもこれに当てはまるのだろうが、あいにく彼は王族を守るどころか王族を害する剣だ。王女を始末しようと考えている男が騎士を騙るなと責め立ててやりたい。
子爵に案内され、騎士団の詰め所へと向かう。
そこには綺麗に整列した騎士達が並んでいた。
「皆の者、こちらは我が国の至宝ジュリアーナ王女殿下であらせられる。跪き首を垂れよ」
子爵の号令とほぼ同時くらいに騎士達は皆その場に膝をつき頭を下げた。
その一糸乱れぬ動きは惚れ惚れするほど見事だ。よく統率がとれている証だろう。
「此度は畏れ多くも王女殿下自ら其方達に労いのお言葉をかけてくださる。謹んで拝聴せよ」
騎士達の間に動揺が走る。彼等にとって王族とは雲の上の存在。そんな王族より直接言葉をかけてもらえるという機会は彼等にとって奇跡に近い。
緊張する彼等の頭上にジュリアーナの鈴を転がすような可憐な声が響いた。
「勇猛なるオーガスタ家の騎士団諸君、先の戦での働きまことに大儀でありました。其方達の国への忠義に感謝を」
まさか直接王女から称賛の言葉をかけてもらえるとは思わず騎士達はどよめきだした。
雲の上の存在から賛辞を贈られるなんて、王宮に所属する騎士ですら滅多にないことだ。
あまりにも勿体ない言葉に感動で涙を滲ませる者まで出てくる。
「殿下のご高配に感謝を!」
子爵がよく通る声でそう告げると騎士は一斉に「ありがたき幸せ!」と叫ぶ。
その姿にジュリアーナはオーガスタ家の騎士団は国と王家への忠誠を失っていないことを確認した。
(よかった。王家への忠誠が薄いのはダニエルと彼に与する使用人達だけのようね。騎士団までもがダニエルと同じ考えだったらどうしようと思ったわ……)
時戻り前にジュリアーナを監禁した奴等は全員王家への忠誠心が薄いのだとあの時に嫌というほど分かった。そうでなければ王女を監禁のうえ始末するなんて考えもしないだろうし、ましてや実行にも移さないだろう。王女を害することは王家に牙をむくも同然。
それはオーガスタ家が王家に謀反を企てたも同然の行いだ。
万が一にも騎士団までもが王家への忠誠が薄かったのなら、オーガスタ辺境伯軍が王家への謀反を企てているとまで考えねばならなかった。
内乱という最悪の事態にはならなそうでホッとした。
彼等の様子を伺う限り、こちらの敵に回る気配は無さそうだ。
(そうなるとやっぱり獅子身中の虫はダニエルとその愉快な仲間達だけかしら……。改めて考えてみると王女をお飾りの妻にして監禁して始末しようなんて馬鹿げた考えは馬鹿にしか思いつかないわね)
王族を敵に回すのなら謀反覚悟で行う気概が欲しいものだが、きっとダニエルはそんなご大層なものなど持ち合わせていない。あの男の頭にあるのは好いた女と幸せになることだけだ。己の言動への責任や覚悟は最初から所持していない屑だと改めて分かった。
その気が全くなくとも王家への謀反も同然の行いをしようとしたことに対しての報いは受けてもらうとジュリアーナは改めて決意するのであった。
ラティーシャ夫人に連れられてきたオーガスタ子爵は恭しくジュリアーナの前に跪き、首を垂れる。
「お呼び立てしてごめんなさいね、子爵。どうぞ頭を上げてちょうだい」
「ありがたき幸せに存じます」
許可を得たうえで顔を上げるオーガスタ子爵に心なしか安堵を覚えた。
どうもこの邸に来てからラティーシャ夫人以外は非常識で礼儀作法もなっていない者が多かったせいか嫌な気分になっていたようだ。
「わたくしの我儘につきあわせてしまい申し訳ないわね」
「とんでもございません! 殿下のお望みを叶えることは臣下として望外の喜びにございます。それに畏れ多くも王家の姫君より直接労いの言葉をかけて頂けるなぞ末代までの自慢になりましょう。どうぞわたくしめに何なりとお申し付けくださいませ」
謹厳実直を体現したかのような人物というのがオーガスタ子爵の第一印象だった。
その精悍さから頼りがいも感じられ、彼が騎士団の纏め役だというのは見ただけで納得できるものがある。
「頼もしいわね。では、先ほどラティーシャ夫人に言伝を頼んだ件の準備は整っているかしら? 急だったから無理をさせてしまって申し訳ないのだけど……」
「勿論準備は整ってございます。我等は王家の剣にして盾、つまりは王族方のものにございます。姫様がご遠慮なさることなど何もございません。むしろお気を遣って頂いて大変有難く存じます」
王家の剣にして盾、という言葉は我が国の騎士が好んで使う言い回しだ。
国の為に戦っているのだと己を鼓舞するため、そして王家に忠実だということを示すために騎士達はよくこれを口にする。
ならば、いち騎士にしてオーガスタ家騎士団を統率する立場にあるダニエルもこれに当てはまるのだろうが、あいにく彼は王族を守るどころか王族を害する剣だ。王女を始末しようと考えている男が騎士を騙るなと責め立ててやりたい。
子爵に案内され、騎士団の詰め所へと向かう。
そこには綺麗に整列した騎士達が並んでいた。
「皆の者、こちらは我が国の至宝ジュリアーナ王女殿下であらせられる。跪き首を垂れよ」
子爵の号令とほぼ同時くらいに騎士達は皆その場に膝をつき頭を下げた。
その一糸乱れぬ動きは惚れ惚れするほど見事だ。よく統率がとれている証だろう。
「此度は畏れ多くも王女殿下自ら其方達に労いのお言葉をかけてくださる。謹んで拝聴せよ」
騎士達の間に動揺が走る。彼等にとって王族とは雲の上の存在。そんな王族より直接言葉をかけてもらえるという機会は彼等にとって奇跡に近い。
緊張する彼等の頭上にジュリアーナの鈴を転がすような可憐な声が響いた。
「勇猛なるオーガスタ家の騎士団諸君、先の戦での働きまことに大儀でありました。其方達の国への忠義に感謝を」
まさか直接王女から称賛の言葉をかけてもらえるとは思わず騎士達はどよめきだした。
雲の上の存在から賛辞を贈られるなんて、王宮に所属する騎士ですら滅多にないことだ。
あまりにも勿体ない言葉に感動で涙を滲ませる者まで出てくる。
「殿下のご高配に感謝を!」
子爵がよく通る声でそう告げると騎士は一斉に「ありがたき幸せ!」と叫ぶ。
その姿にジュリアーナはオーガスタ家の騎士団は国と王家への忠誠を失っていないことを確認した。
(よかった。王家への忠誠が薄いのはダニエルと彼に与する使用人達だけのようね。騎士団までもがダニエルと同じ考えだったらどうしようと思ったわ……)
時戻り前にジュリアーナを監禁した奴等は全員王家への忠誠心が薄いのだとあの時に嫌というほど分かった。そうでなければ王女を監禁のうえ始末するなんて考えもしないだろうし、ましてや実行にも移さないだろう。王女を害することは王家に牙をむくも同然。
それはオーガスタ家が王家に謀反を企てたも同然の行いだ。
万が一にも騎士団までもが王家への忠誠が薄かったのなら、オーガスタ辺境伯軍が王家への謀反を企てているとまで考えねばならなかった。
内乱という最悪の事態にはならなそうでホッとした。
彼等の様子を伺う限り、こちらの敵に回る気配は無さそうだ。
(そうなるとやっぱり獅子身中の虫はダニエルとその愉快な仲間達だけかしら……。改めて考えてみると王女をお飾りの妻にして監禁して始末しようなんて馬鹿げた考えは馬鹿にしか思いつかないわね)
王族を敵に回すのなら謀反覚悟で行う気概が欲しいものだが、きっとダニエルはそんなご大層なものなど持ち合わせていない。あの男の頭にあるのは好いた女と幸せになることだけだ。己の言動への責任や覚悟は最初から所持していない屑だと改めて分かった。
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