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閑話 計画性の無いダニエル①
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「なんでアタシの部屋の物を勝手に片付けたの!? ダニエルの馬鹿!」
「お、落ち着いてアニー……そんなに怒ったら体に良くないよ」
「誰がそうさせていると思ってんのよ! あれほどアタシの部屋は勝手にいじらないでねって言ったのに……! 嘘つき!」
自分が不在に間に勝手に部屋を片付けられたことに激怒するアニー。
近くにある物を手当たり次第ダニエルへと投げつけた。
「もうすぐ赤ちゃんだって産まれるんだよ!? その準備だってしてないんでしょう? アタシの部屋も赤ちゃんの部屋もないならあの邸に帰れないじゃん! どうするのよ!」
「そこは安心してくれ! 王女が帰ればすぐ準備するから!」
「その王女はいつ帰るのよ!? もういつ産まれてもおかしくないんだけど?」
「ええっと……それは……」
予定では王女は一か月ほど滞在すると聞いた。
当初はその間に別邸へと監禁し、王宮に王女はこのままオーガスタ家に住むと言っているとでも報告するつもりだった。そうしてアニーの子が産まれたらそのまま王女の子として届け出て、用済みとなった王女は始末し、親子で幸せに暮らす予定だったのだ。
どう考えても合理性皆無の計画だが、頭がお花畑に侵食されているダニエルもアニーもその異常さを理解しようとしない。そんな短期間では犬猫の子すら産まれてこないというのに。アニーは自分が妊娠しているというのにそんな簡単なことにすら気づかなかった。
ちなみにその阿呆な計画はラティーシャ夫人の介入により使用人を上手く動かすことが出来なくなり、未だ実行出来ずにいた。おまけに王女は小隊並の護衛を引きつれてきたせいで迂闊に手が出せない。
「ここの居心地だって悪くないだろう……? 何か欲しい物があればすぐ用意させるからさ、少し我慢してくれないか?」
「家自体はいいけど人が嫌! なんか皆冷たいし怖いんだもん! 邸の皆に会いたいよぉ……!!」
堰を切ったかのように泣きじゃくりだしたアニーにダニエルはどうしていいか分からずただおろおろするだけだった。邸ではこういう時真っ先にダニエル寄りの乳母や家令、執事がアニーに慰めの言葉をかけてくれていたのですぐに機嫌が直っていたのだ。ダニエルはその機嫌が良くなったアニーを抱きしめるだけで済んでいたのに、ここでは慰めの言葉をかけてくれる者は誰もいない。
ここは領内にある人里離れた邸だ。本邸から馬車で一刻ほどの場所にあるオーガスタ家所有の建物。一昔前は隠居した当主夫妻が住んでいたらしく、古いが建物自体はそれなりに豪華な造りとなっている。
アニーの姿、その存在を決して王女に晒すことは許さない。
そうラティーシャ夫人に厳しく言いつけられたダニエルは渋々ながらもアニーをこの邸へと移した。そしてその際に本邸の使用人を連れていくことを禁じられ、新しく使用人を雇うよう言われたのだ。
王女が訪問するというのに邸の使用人が減るなど言語道断、そんなことをしてもてなしが行き届かなかったら責任はとれるのかと問われればダニエルは何も言えない。彼は自分が責任をとるということを何より厭うから。
それで急遽アニーの為に新しい使用人を雇ったのだが、どうにも本邸の使用人に比べると対応が事務的だ。本邸のダニエル寄りの使用人はアニーのことを“主人の大切な人”と認識しているが、ここにいる新しい使用人は“平民の孤児”と見下しているのが態度から分かる。アニーはそれが嫌でたまらないのだ。
「ご、ごめん、アニー……。けど、本当にどうしようもなくて……」
「なんで!? ダニエルはご当主様なんでしょう? 偉いんでしょう? なのにどうして言う事を聞かせられないの!?」
「いや、それはそうだけど……今はまだ王女の方が身分は上だし……」
呆れたことにダニエルは降嫁さえしてしまえばジュリアーナは王女の身分を失い自分よりも格下の存在になると本気で思っている。王女から妻になった女ならば好きに扱っても構わないだろうととんでもない認識を抱いていた。降嫁してもジュリアーナは王家の血を引く高貴な女性ということは変わりないのに。
「だったらもう王女を追い出してよ! 王女がいるからアタシは邸に戻れないんでしょう?」
「そうだけど……それは無理だよ。私だって大変なんだから少しは我慢してよ……」
自然と口からアニーへの不満が零れ、言った後にそれに気付いたダニエルはハッとなった。恐る恐るアニーの方を見れば怒りの表情で顔を真っ赤に染めている。
「ダニエルの馬鹿っ! 嫌い! 嫌い! 大っ嫌い!」
もともと癇癪持ちのアニーは感情が爆発したように再び手当たり次第物を投げつける。
先程はクッションや小物などの軽い物だったが、今は花瓶や置物などの重い物まで手をつけた。
「ご、ごめん、アニー! 私が悪かったから落ち着いて!」
興奮したアニーが椅子に手をかけ持ち上げようとした瞬間だった。
「あっ…………い、イタタタ! 痛い! お腹! お腹が痛い!」
「アニー!? 大丈夫か?」
急にお腹を抱えて蹲るアニーにダニエルは焦りだす。
そうこうしている間に騒ぎを聞きつけた使用人が医師を呼んだ。
「お、落ち着いてアニー……そんなに怒ったら体に良くないよ」
「誰がそうさせていると思ってんのよ! あれほどアタシの部屋は勝手にいじらないでねって言ったのに……! 嘘つき!」
自分が不在に間に勝手に部屋を片付けられたことに激怒するアニー。
近くにある物を手当たり次第ダニエルへと投げつけた。
「もうすぐ赤ちゃんだって産まれるんだよ!? その準備だってしてないんでしょう? アタシの部屋も赤ちゃんの部屋もないならあの邸に帰れないじゃん! どうするのよ!」
「そこは安心してくれ! 王女が帰ればすぐ準備するから!」
「その王女はいつ帰るのよ!? もういつ産まれてもおかしくないんだけど?」
「ええっと……それは……」
予定では王女は一か月ほど滞在すると聞いた。
当初はその間に別邸へと監禁し、王宮に王女はこのままオーガスタ家に住むと言っているとでも報告するつもりだった。そうしてアニーの子が産まれたらそのまま王女の子として届け出て、用済みとなった王女は始末し、親子で幸せに暮らす予定だったのだ。
どう考えても合理性皆無の計画だが、頭がお花畑に侵食されているダニエルもアニーもその異常さを理解しようとしない。そんな短期間では犬猫の子すら産まれてこないというのに。アニーは自分が妊娠しているというのにそんな簡単なことにすら気づかなかった。
ちなみにその阿呆な計画はラティーシャ夫人の介入により使用人を上手く動かすことが出来なくなり、未だ実行出来ずにいた。おまけに王女は小隊並の護衛を引きつれてきたせいで迂闊に手が出せない。
「ここの居心地だって悪くないだろう……? 何か欲しい物があればすぐ用意させるからさ、少し我慢してくれないか?」
「家自体はいいけど人が嫌! なんか皆冷たいし怖いんだもん! 邸の皆に会いたいよぉ……!!」
堰を切ったかのように泣きじゃくりだしたアニーにダニエルはどうしていいか分からずただおろおろするだけだった。邸ではこういう時真っ先にダニエル寄りの乳母や家令、執事がアニーに慰めの言葉をかけてくれていたのですぐに機嫌が直っていたのだ。ダニエルはその機嫌が良くなったアニーを抱きしめるだけで済んでいたのに、ここでは慰めの言葉をかけてくれる者は誰もいない。
ここは領内にある人里離れた邸だ。本邸から馬車で一刻ほどの場所にあるオーガスタ家所有の建物。一昔前は隠居した当主夫妻が住んでいたらしく、古いが建物自体はそれなりに豪華な造りとなっている。
アニーの姿、その存在を決して王女に晒すことは許さない。
そうラティーシャ夫人に厳しく言いつけられたダニエルは渋々ながらもアニーをこの邸へと移した。そしてその際に本邸の使用人を連れていくことを禁じられ、新しく使用人を雇うよう言われたのだ。
王女が訪問するというのに邸の使用人が減るなど言語道断、そんなことをしてもてなしが行き届かなかったら責任はとれるのかと問われればダニエルは何も言えない。彼は自分が責任をとるということを何より厭うから。
それで急遽アニーの為に新しい使用人を雇ったのだが、どうにも本邸の使用人に比べると対応が事務的だ。本邸のダニエル寄りの使用人はアニーのことを“主人の大切な人”と認識しているが、ここにいる新しい使用人は“平民の孤児”と見下しているのが態度から分かる。アニーはそれが嫌でたまらないのだ。
「ご、ごめん、アニー……。けど、本当にどうしようもなくて……」
「なんで!? ダニエルはご当主様なんでしょう? 偉いんでしょう? なのにどうして言う事を聞かせられないの!?」
「いや、それはそうだけど……今はまだ王女の方が身分は上だし……」
呆れたことにダニエルは降嫁さえしてしまえばジュリアーナは王女の身分を失い自分よりも格下の存在になると本気で思っている。王女から妻になった女ならば好きに扱っても構わないだろうととんでもない認識を抱いていた。降嫁してもジュリアーナは王家の血を引く高貴な女性ということは変わりないのに。
「だったらもう王女を追い出してよ! 王女がいるからアタシは邸に戻れないんでしょう?」
「そうだけど……それは無理だよ。私だって大変なんだから少しは我慢してよ……」
自然と口からアニーへの不満が零れ、言った後にそれに気付いたダニエルはハッとなった。恐る恐るアニーの方を見れば怒りの表情で顔を真っ赤に染めている。
「ダニエルの馬鹿っ! 嫌い! 嫌い! 大っ嫌い!」
もともと癇癪持ちのアニーは感情が爆発したように再び手当たり次第物を投げつける。
先程はクッションや小物などの軽い物だったが、今は花瓶や置物などの重い物まで手をつけた。
「ご、ごめん、アニー! 私が悪かったから落ち着いて!」
興奮したアニーが椅子に手をかけ持ち上げようとした瞬間だった。
「あっ…………い、イタタタ! 痛い! お腹! お腹が痛い!」
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そうこうしている間に騒ぎを聞きつけた使用人が医師を呼んだ。
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