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求めていた情報
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苦しい嘘だがそれを指摘するのは止めた。
夫人もダニエルの非常識な言動の数々に辟易しているのは見て分かるから。
訪問してまだ一日しか経っていないというのに夫人は既に疲れ切った表情をしている。
「それは大変ですわ。お見舞いに伺おうかしら?」
「いえ、お気持ちだけで十分にございます。当主も武人としてあるまじき失態と恥じておりましたので、そのような姿を婚約者であります殿下の目に晒すことに抵抗があるそうで……」
あの男にそんな矜持があるとは思えないので苦しい嘘だ。
それでも夫人の草臥れた様子を見ると反論など出来ない。
「そうですね、オーガスタ卿の体裁もありますしお見舞いは控えることに致します。後で見舞い品だけご用意させていただきますわ」
「ありがとうございます、お気を遣わせてしまい申し訳ございません。当主は不在ですが滞在期間中は精一杯おもてなしをさせて頂きたく存じます。何かご希望があれば何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう、夫人。そうね……実はわたくし貴家の騎士団に直接ご挨拶したいと思っておりましたの。よろしいかしら?」
「騎士団に殿下が? ……畏まりました。それではわたくしの夫が当主に代わりご案内させていただきます。夫は騎士団の副官を務めておりますので」
彼女の夫が副官ということは、あのダニエルが指揮官でその下に就いているということか。あんな何をするか分からないような爆弾男の下は心労が多いだろうな。
ラティーシャ夫人が夫である子爵に話を通している間、ジュリアーナは部屋で待機することとなった。なので、その間にルナを部屋へと呼びだす。
「ルナ、ダニエルと愛人の様子はどう?」
「はい、それがかなりの修羅場と化しております」
二人の修羅場がそんなに面白かったのかルナは自然と口角が上がっていた。
「修羅場? やはり本邸を出されたことが不満だったのかしら?」
「はい、それもありますが……自分が使用していた部屋の物を全て出されてしまったことに怒っておりました」
「まあ! まさかダニエルは馬鹿正直にそのことを伝えてしまったの?」
「左様にございます。そんなことを言えば愛人が怒ると分からず馬鹿正直に伝えておりました。それを聞いた愛人は案の定発狂したように暴れ、そのせいで容体が急変し医師を呼ぶ羽目になりましたよ」
「あらあら……配慮の足りない男ね。妊婦に余計な心労をかけては駄目だと知らないのかしら?」
「そういった配慮は全く出来ませんね。姫様への配慮も出来ない、愛人への配慮も出来ない、配下達への配慮も出来ません。想像力の欠片もありませんね」
「ふうん……配下達はダニエルのことを何て言っているのかしら?」
「“欲深坊ちゃん”と陰で揶揄しております。先代は配下の者達に十分な褒美を与えておりましたのに、ダニエルに変わってはさっぱりです。そこに配下の者達は不満を抱いておりますね」
「まあ……そんな状況では士気も上がらないでしょう? 先の戦ではよく勝利を収めたわね……」
「副官のオーガスタ子爵が配下を上手く纏めているからだそうですよ」
「オーガスタ子爵が? その話、詳しく聞かせてちょうだい」
求めていた情報にジュリアーナは目を光らせるのだった。
夫人もダニエルの非常識な言動の数々に辟易しているのは見て分かるから。
訪問してまだ一日しか経っていないというのに夫人は既に疲れ切った表情をしている。
「それは大変ですわ。お見舞いに伺おうかしら?」
「いえ、お気持ちだけで十分にございます。当主も武人としてあるまじき失態と恥じておりましたので、そのような姿を婚約者であります殿下の目に晒すことに抵抗があるそうで……」
あの男にそんな矜持があるとは思えないので苦しい嘘だ。
それでも夫人の草臥れた様子を見ると反論など出来ない。
「そうですね、オーガスタ卿の体裁もありますしお見舞いは控えることに致します。後で見舞い品だけご用意させていただきますわ」
「ありがとうございます、お気を遣わせてしまい申し訳ございません。当主は不在ですが滞在期間中は精一杯おもてなしをさせて頂きたく存じます。何かご希望があれば何なりとお申し付けくださいませ」
「ありがとう、夫人。そうね……実はわたくし貴家の騎士団に直接ご挨拶したいと思っておりましたの。よろしいかしら?」
「騎士団に殿下が? ……畏まりました。それではわたくしの夫が当主に代わりご案内させていただきます。夫は騎士団の副官を務めておりますので」
彼女の夫が副官ということは、あのダニエルが指揮官でその下に就いているということか。あんな何をするか分からないような爆弾男の下は心労が多いだろうな。
ラティーシャ夫人が夫である子爵に話を通している間、ジュリアーナは部屋で待機することとなった。なので、その間にルナを部屋へと呼びだす。
「ルナ、ダニエルと愛人の様子はどう?」
「はい、それがかなりの修羅場と化しております」
二人の修羅場がそんなに面白かったのかルナは自然と口角が上がっていた。
「修羅場? やはり本邸を出されたことが不満だったのかしら?」
「はい、それもありますが……自分が使用していた部屋の物を全て出されてしまったことに怒っておりました」
「まあ! まさかダニエルは馬鹿正直にそのことを伝えてしまったの?」
「左様にございます。そんなことを言えば愛人が怒ると分からず馬鹿正直に伝えておりました。それを聞いた愛人は案の定発狂したように暴れ、そのせいで容体が急変し医師を呼ぶ羽目になりましたよ」
「あらあら……配慮の足りない男ね。妊婦に余計な心労をかけては駄目だと知らないのかしら?」
「そういった配慮は全く出来ませんね。姫様への配慮も出来ない、愛人への配慮も出来ない、配下達への配慮も出来ません。想像力の欠片もありませんね」
「ふうん……配下達はダニエルのことを何て言っているのかしら?」
「“欲深坊ちゃん”と陰で揶揄しております。先代は配下の者達に十分な褒美を与えておりましたのに、ダニエルに変わってはさっぱりです。そこに配下の者達は不満を抱いておりますね」
「まあ……そんな状況では士気も上がらないでしょう? 先の戦ではよく勝利を収めたわね……」
「副官のオーガスタ子爵が配下を上手く纏めているからだそうですよ」
「オーガスタ子爵が? その話、詳しく聞かせてちょうだい」
求めていた情報にジュリアーナは目を光らせるのだった。
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