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全て気持ち悪い
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「アニーが亡くなったと知ったダニエルから処罰を受けることを恐れた邸の使用人達は彼女の死を隠すことにしたようです」
「隠す? それはどういうこと……?」
「はい。亡くなったのではなく、失踪したと偽装するようです。アニーが亡くなったことを知るのは今のところあの邸の使用人のみ。しかも乳母と赤ん坊の姿も見えないそうなので、全員失踪したことにするようです」
そうくるか、と内心驚いた。
確かにアニーが亡くなって乳母と赤ん坊もいなくなったと知ったダニエルの怒りの矛先は間違いなく使用人に向かうことだろう。
無関係の王女を簡単に殺すような人間だ。使用人を極刑に処してもおかしくない。
正直に亡くなった、と報告するより赤ん坊を連れて失踪したと伝えた方が罰も軽くなる。
意外にも真相に近い方向で事態を隠すとは驚きだ。
(なんにも間違っていないのよね。アニーは生きているし、赤ちゃんを連れて失踪しているし……)
「でも、アニーの遺体はどうするつもりなの?」
「共同墓地に埋葬するようです。あそこは要望が無い限りは墓石に名を刻むこともしませんので、そこに埋葬すれば誰かに知られることもないかと」
まるで計画殺人のようだ。乳母が実行し、使用人達が証拠隠滅を図る。
思ったのは、それを時戻り前に自分がされるはずだった未来と同じ。
因果応報のように今度はダニエルの最愛の相手が同じような目に遭わされている。
(後味があまり良くないからざまあみなさいとは思えないわね……)
分かっていたことだがアニーは使用人から全く尊重されていなかったようだ。
それもそうだろう。時戻り前に王女の自分すら尊重されなかったのだから、平民のアニーが尊ばれる道理はない。あるとすればダニエルが見ている時だけだったのだろう。
アニーという最愛を守りたいのならダニエルは目を離すべきではなかった。
基本的に貴族は平民を下に見ているのだから、それを敬えというのは彼等の怒りを買う行為なのだから。つくづくあの男の行動は他人を不幸にするものばかりで腹が立つ。
そもそも恋人が大変な時にあの男はどこで何をしているのだろう。
それをジュリアーナが知るのはすぐ後のことであった。
*
「さあさあ、王女殿下。貴女の為に用意した上質の絹ですよ! これで花嫁衣裳を作ろうではありませんか!」
アニーの訃報を密かに告げられた日の午後、満面の笑みを浮かべたダニエルが沢山の絹を用意してジュリアーナの元へとやってきた。
「…………………………」
もはや何を話す気もなくなったジュリアーナは能面のように無表情となった。
綺麗な顔から表情が消えるのはよほど恐ろしいのか、ダニエルの背後にいる絹を運ぶ者達が「ヒッ!?」と小さく悲鳴をあげる。
「ご覧ください。こちらは白鳥の羽よりも白く、肌触りのいい逸品です。こちらは光に当てると七色に輝くのですよ。そしてこちらは……」
ジュリアーナの表情に気づいていないのか、はたまた気づいていて無視をしているのかダニエルは機嫌よく絹製品の説明をし出す。後ろにいる異国情緒溢れる格好をした女性達はこの絹を扱う商会の者なのだろうか、ダニエルの説明に合わせて製品を掲げだした。
(……何故、こんな時に花嫁衣裳の話を……?)
もう訳が分からない。
ラティーシャ夫人から面会禁止を言い渡されているはずなのに、こうして平然とする神経が。数々の非礼を一切詫びずに己の言いたいことだけを告げる無神経さが。どう考えても婚約が危うい状況下で段階を飛び越えて花嫁衣裳を作ろうとしてくる神経が。
全て気持ち悪い。全身に鳥肌を立たせたジュリアーナは嫌悪を隠さずダニエルと向き合った。
「隠す? それはどういうこと……?」
「はい。亡くなったのではなく、失踪したと偽装するようです。アニーが亡くなったことを知るのは今のところあの邸の使用人のみ。しかも乳母と赤ん坊の姿も見えないそうなので、全員失踪したことにするようです」
そうくるか、と内心驚いた。
確かにアニーが亡くなって乳母と赤ん坊もいなくなったと知ったダニエルの怒りの矛先は間違いなく使用人に向かうことだろう。
無関係の王女を簡単に殺すような人間だ。使用人を極刑に処してもおかしくない。
正直に亡くなった、と報告するより赤ん坊を連れて失踪したと伝えた方が罰も軽くなる。
意外にも真相に近い方向で事態を隠すとは驚きだ。
(なんにも間違っていないのよね。アニーは生きているし、赤ちゃんを連れて失踪しているし……)
「でも、アニーの遺体はどうするつもりなの?」
「共同墓地に埋葬するようです。あそこは要望が無い限りは墓石に名を刻むこともしませんので、そこに埋葬すれば誰かに知られることもないかと」
まるで計画殺人のようだ。乳母が実行し、使用人達が証拠隠滅を図る。
思ったのは、それを時戻り前に自分がされるはずだった未来と同じ。
因果応報のように今度はダニエルの最愛の相手が同じような目に遭わされている。
(後味があまり良くないからざまあみなさいとは思えないわね……)
分かっていたことだがアニーは使用人から全く尊重されていなかったようだ。
それもそうだろう。時戻り前に王女の自分すら尊重されなかったのだから、平民のアニーが尊ばれる道理はない。あるとすればダニエルが見ている時だけだったのだろう。
アニーという最愛を守りたいのならダニエルは目を離すべきではなかった。
基本的に貴族は平民を下に見ているのだから、それを敬えというのは彼等の怒りを買う行為なのだから。つくづくあの男の行動は他人を不幸にするものばかりで腹が立つ。
そもそも恋人が大変な時にあの男はどこで何をしているのだろう。
それをジュリアーナが知るのはすぐ後のことであった。
*
「さあさあ、王女殿下。貴女の為に用意した上質の絹ですよ! これで花嫁衣裳を作ろうではありませんか!」
アニーの訃報を密かに告げられた日の午後、満面の笑みを浮かべたダニエルが沢山の絹を用意してジュリアーナの元へとやってきた。
「…………………………」
もはや何を話す気もなくなったジュリアーナは能面のように無表情となった。
綺麗な顔から表情が消えるのはよほど恐ろしいのか、ダニエルの背後にいる絹を運ぶ者達が「ヒッ!?」と小さく悲鳴をあげる。
「ご覧ください。こちらは白鳥の羽よりも白く、肌触りのいい逸品です。こちらは光に当てると七色に輝くのですよ。そしてこちらは……」
ジュリアーナの表情に気づいていないのか、はたまた気づいていて無視をしているのかダニエルは機嫌よく絹製品の説明をし出す。後ろにいる異国情緒溢れる格好をした女性達はこの絹を扱う商会の者なのだろうか、ダニエルの説明に合わせて製品を掲げだした。
(……何故、こんな時に花嫁衣裳の話を……?)
もう訳が分からない。
ラティーシャ夫人から面会禁止を言い渡されているはずなのに、こうして平然とする神経が。数々の非礼を一切詫びずに己の言いたいことだけを告げる無神経さが。どう考えても婚約が危うい状況下で段階を飛び越えて花嫁衣裳を作ろうとしてくる神経が。
全て気持ち悪い。全身に鳥肌を立たせたジュリアーナは嫌悪を隠さずダニエルと向き合った。
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