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あの件についての報告
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結果的にダニエルの周囲から彼を慕う人がいなくなってしまった。
最愛のアニーは別人の体で子供を連れて逃亡し、執事と乳母は亡くなった。
いや、この場合乳母の魂が入っていたとはいえアニーの体が亡くなったのだから、乳母が子供を連れて逃げてアニーが亡くなったと言った方が正しい。
なんにせよ意図しない形でダニエルは愛する人達を失ったことになってしまった。
それを知ったダニエルはどうするだろうか?
(アニーも子供もいなくなってしまったのなら、もうダニエルはわたくしと結婚する意味もないわね)
予期せぬ事態にはなったが問題ない。
愛人と子供の存在で婚約破棄を申し出るには少し弱いと思っていたところだ。
先の戦でダニエルが戦いに加わらないばかりか叔父の手柄を横取りしたという事実をもって“戦勝の褒美”という前提を崩してしまえばいい。そうなればダニエルに対する世間の評価は“戦の英雄”から“偽りの英雄”に様変わりするだろう。
(あとは一刻も早くここを出て王宮へと戻らなくては……)
橋の修繕が終わるまでここに留まらなくてはいけないことがもどかしい。
あの男と顔を合わせないうちに早くここを出たいのに……。
「姫君? 浮かない顔だね、何か困り事?」
「え? あ、いえ……少し考え事をしていただけです。お気になさらないでくださいませ」
「そう? 何か困り事があるなら僕が解決してあげるよ?」
「いえいえ、本当に何でもありませんの。魔女様にはマーサの蘇生を何よりも優先して頂きたいですわ」
「……君が望むならそれでいいけど。でも、何かあるならいつでも言ってほしいな」
「ふふ、ありがとうございます……」
流石に橋を修繕してほしいという雑事を頼むわけにはいかない。
それよりマーサの蘇生に専念してもらった方が有難い。
「あ、それと蘇生に専念するからしばらく君に会えないと思う。だから何か用がある時は君の方から呼んで」
「はい、畏まりました」
この時ジュリアーナは自分から青年を呼びつける機会は無いだろうと考えていた。
しかし、その考えはそう遠くない未来に覆されることになると、この時の彼女はまだ知らない……。
翌朝、朝食をとり終えると慌てた様子のルナが報告に訪れた。
「姫様、大変でございます! アニーが……今朝方亡くなったとの報せが……」
それを聞いたジュリアーナはうっかり「知っているわ」と言ってしまいそうになるのを堪え、驚いたような表情を取り繕う。
「亡くなった……? どうして、そんな……」
流石に“知っている”なんて言えるわけがない。
努めて驚いた表情をするジュリアーナにルナは神妙な面持ちで返す。
「詳しくはまだ分かっておりません。ただ、産後は体調が優れず臥せっていたそうです」
ルナの報告を聞く限りだと、どうやらアニーは産後に医師の診察を受けていなかったようだ。臥せっていたのならまずは医師の診察を受けるべきなのに、医者でもない乳母が面倒を見ていたとか。
「当主の子供まで産んだ女性に対して随分と粗末な扱いね?」
「所詮平民の愛人ですし、当主が医師を呼べとでも命令しない限りは捨て置かれてしまってもおかしくありません。しかし、持病も無い健康体の若い女がこんな簡単に亡くなるとは想定外でした……。アニーはダニエルの不貞の証拠でありますのに、みすみす死なせてしまい申し訳ございません……」
監視を命じられた立場でありながらみすみす死なせてしまったことを詫びるルナにジュリアーナは「構わなくてよ」と優しく告げる。
「貴女には別件を頼んでいたもの。アニーの方は時々様子を伺うくらいでいいと言ったのはわたくしよ。婚約を取りやめる材料は別にあるので気にしなくていいわ」
それに亡くなったのは厳密に言えばアニーではないし、とは流石に言えない。
落ち込むルナを見ていると真相を黙っていることが申し訳なくなってくる。
「姫様……なんとお優しい……」
「ところで、ダニエルの様子はどう? 最愛の恋人を亡くしてさぞかし落ち込んでいるのでは?」
「いえ、それが……ダニエルはまだこの事実を知りません」
「え? どういうこと……?」
恋人が亡くなったことを知らないとはどういうことだろう。
不可解な言葉にジュリアーナは首を傾げた。
最愛のアニーは別人の体で子供を連れて逃亡し、執事と乳母は亡くなった。
いや、この場合乳母の魂が入っていたとはいえアニーの体が亡くなったのだから、乳母が子供を連れて逃げてアニーが亡くなったと言った方が正しい。
なんにせよ意図しない形でダニエルは愛する人達を失ったことになってしまった。
それを知ったダニエルはどうするだろうか?
(アニーも子供もいなくなってしまったのなら、もうダニエルはわたくしと結婚する意味もないわね)
予期せぬ事態にはなったが問題ない。
愛人と子供の存在で婚約破棄を申し出るには少し弱いと思っていたところだ。
先の戦でダニエルが戦いに加わらないばかりか叔父の手柄を横取りしたという事実をもって“戦勝の褒美”という前提を崩してしまえばいい。そうなればダニエルに対する世間の評価は“戦の英雄”から“偽りの英雄”に様変わりするだろう。
(あとは一刻も早くここを出て王宮へと戻らなくては……)
橋の修繕が終わるまでここに留まらなくてはいけないことがもどかしい。
あの男と顔を合わせないうちに早くここを出たいのに……。
「姫君? 浮かない顔だね、何か困り事?」
「え? あ、いえ……少し考え事をしていただけです。お気になさらないでくださいませ」
「そう? 何か困り事があるなら僕が解決してあげるよ?」
「いえいえ、本当に何でもありませんの。魔女様にはマーサの蘇生を何よりも優先して頂きたいですわ」
「……君が望むならそれでいいけど。でも、何かあるならいつでも言ってほしいな」
「ふふ、ありがとうございます……」
流石に橋を修繕してほしいという雑事を頼むわけにはいかない。
それよりマーサの蘇生に専念してもらった方が有難い。
「あ、それと蘇生に専念するからしばらく君に会えないと思う。だから何か用がある時は君の方から呼んで」
「はい、畏まりました」
この時ジュリアーナは自分から青年を呼びつける機会は無いだろうと考えていた。
しかし、その考えはそう遠くない未来に覆されることになると、この時の彼女はまだ知らない……。
翌朝、朝食をとり終えると慌てた様子のルナが報告に訪れた。
「姫様、大変でございます! アニーが……今朝方亡くなったとの報せが……」
それを聞いたジュリアーナはうっかり「知っているわ」と言ってしまいそうになるのを堪え、驚いたような表情を取り繕う。
「亡くなった……? どうして、そんな……」
流石に“知っている”なんて言えるわけがない。
努めて驚いた表情をするジュリアーナにルナは神妙な面持ちで返す。
「詳しくはまだ分かっておりません。ただ、産後は体調が優れず臥せっていたそうです」
ルナの報告を聞く限りだと、どうやらアニーは産後に医師の診察を受けていなかったようだ。臥せっていたのならまずは医師の診察を受けるべきなのに、医者でもない乳母が面倒を見ていたとか。
「当主の子供まで産んだ女性に対して随分と粗末な扱いね?」
「所詮平民の愛人ですし、当主が医師を呼べとでも命令しない限りは捨て置かれてしまってもおかしくありません。しかし、持病も無い健康体の若い女がこんな簡単に亡くなるとは想定外でした……。アニーはダニエルの不貞の証拠でありますのに、みすみす死なせてしまい申し訳ございません……」
監視を命じられた立場でありながらみすみす死なせてしまったことを詫びるルナにジュリアーナは「構わなくてよ」と優しく告げる。
「貴女には別件を頼んでいたもの。アニーの方は時々様子を伺うくらいでいいと言ったのはわたくしよ。婚約を取りやめる材料は別にあるので気にしなくていいわ」
それに亡くなったのは厳密に言えばアニーではないし、とは流石に言えない。
落ち込むルナを見ていると真相を黙っていることが申し訳なくなってくる。
「姫様……なんとお優しい……」
「ところで、ダニエルの様子はどう? 最愛の恋人を亡くしてさぞかし落ち込んでいるのでは?」
「いえ、それが……ダニエルはまだこの事実を知りません」
「え? どういうこと……?」
恋人が亡くなったことを知らないとはどういうことだろう。
不可解な言葉にジュリアーナは首を傾げた。
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