いいえ、望んでいません

わらびもち

文字の大きさ
41 / 43
番外編

彼女の幸せと母の幸せ②

しおりを挟む
 あれからしばらくして、ジュリエッタはシロと結婚し、晴れて夫婦となった。

 公爵夫人が用意してくれた豪奢な花嫁衣裳を身に纏うジュリエッタは眩いばかりに美しく、花婿であるシロも、母のチェルシーも感動のあまり涙を流す。

「はあ~……すっごく綺麗だよジュリエッタ……。こんな美人を妻にできる俺はこの世界で一番の果報者だ……」

「ううっ……。こうして娘の花嫁姿を見れるなんてっ……!! 生きててよかったわ……」

 二人の結婚式は町中の人が祝福に来てくれた。
 教会で誓いの言葉を交わし、外に出てきた二人に花の雨が降り注ぐ。

 赤、青、黄、白、色とりどりの花を用意し、町中の皆の手に渡るよう手配してくれたのは花屋のジョーだった。

 ジュリエッタの門出を最高のものにしたい。
 そう言って彼女の好きな白い花で纏めたブーケをプレゼントしてくれた彼に、ジュリエッタは密かに母との仲を応援しようと心に決めた。

 
 結婚式後、ジュリエッタとシロは母の住む家の近くに新居を構えた。
 本当は母と一緒に住みたかったが、母はそれを頑なに拒んだ。

「貴女、シロ君のことも考えなさい。姑と一緒に住むなんて窮屈で可哀そうよ。それに私が一緒に住んでいたら気になって子作りも出来ないでしょう?」

 母親に直接子作りのことを言われて赤面するジュリエッタだが、確かに義母と暮らすとなるとシロは気を遣うかもしれない。夫への気遣いが出来ていない自分を反省し、彼と話し合った結果、母の家の近くに新居を構えることにした。

 
 母の気遣いの結果、ジュリエッタは新婚早々に子を身籠った。
 嬉しくてたまらず、早速報告に行こうとシロと共に母の家へ向かう。

 薔薇の盛りを過ぎ、花が無くなった庭が見えた時、急にシロがジュリエッタの体を抱き寄せた。

「シロ? 急にどうしたの?」

「しっ、静かに。あそこ……、あの、窓辺の辺りに誰かいる……」
 
 シロにそう言われ、驚いたジュリエッタがそちらに目を向ける。
 するとそこに男がおり、窓から室内を覗いていた。

「えええ? な、なにあの人……!」

「この辺じゃ見ない髪色だ……。誰かは知らないけど不審者であることは確かだね。お義母さんが心配だから俺が何とかするよ。ジュリエッタは危ないから家に戻ってて。鍵を閉めて、俺が戻るまで絶対に外に出ちゃ駄目だよ!」

「えっ、そんな! シロが危ないよ!」

「何言ってんの、俺はハルバード家で護衛兼工作員をやってたんだよ? そんじょそこらの盗人や暴漢なんて相手にもならないって! それよりほら、早く帰って。お義母さんのことも早く助けなきゃ」

 シロにそう促され、ジュリエッタは後ろ髪を引かれる思いで家まで戻った。
 急いで玄関の鍵を閉め、部屋の中で夫と母の無事をただ祈る。

 どうか、二人共無事でありますように――。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです

ほーみ
恋愛
 「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」  その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。  ──王都の学園で、私は彼と出会った。  彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。  貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

処理中です...