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嫁姑の確執
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「ルイ卿はヨーク公爵家の領地内ではなく、現公爵夫人の生家が所有する土地で生活していたようです」
「公爵夫人の……? 夫の異母弟を妻が保護していたということ? 随分と珍しい状況ね」
ルイの母君は先代公爵の妾だったと聞く。
現公爵が年の離れた弟を庇護するのならまだ分かるが、妻が義理の弟を庇護するというのは珍しい。
それもわざわざ自分の生家を頼ってまで。
「ええ、どうやらルイ卿の母君は先代公爵夫人から幾度も殺されかけたようです。それこそルイ卿を身籠っていた頃から何度も。それを見かねた現公爵夫人が『ヨーク公爵家の血を引く子を害するなどとんでもない』と、ご自分の生家の土地に避難させたようです。いくら先代公爵夫人といえども、他家の土地にまで手出しすることは不可能だったようで、ルイ卿と母君は安心して暮らすことができたそうです」
「まあ……まさに貴婦人の鑑ね。中々出来ることじゃないわ」
夫の家の血筋を守る行為は貴族家の夫人にとって美徳の証とされる。
それでなくとも夫の父親の妾と、その腹に宿る子を守ろうとする妻というのは中々珍しい。
「ええ、はたから見れば美談なのですが、実際は夫人の根深い恨みによるものでして……」
「え!? 恨み? それは……誰に対しての?」
「先代公爵夫人に対してのです。現公爵夫人は先代公爵夫人……ややこしいので”姑”と呼びますね。夫人は姑にひどい恨みと憎しみを抱いておりまして、”舅”の妾を保護することで姑を傷つけてやろうと思ったそうです」
「姑を傷つける目的で妾を保護したの……? なんというか、随分と斬新ね……」
「ですが効果は抜群だったようで、姑は夫の妾に子供が、しかも男児が産まれたと聞くや否や発狂したそうです」
「抜群どころの話じゃないわね!?」
「ちなみに姑にそのことを伝えたのは公爵夫人です」
「どんなことをすれば嫁にそこまで恨まれるの……」
「なんでも夫人は姑に”孫達は息子の子じゃない!”と根拠のない侮辱を受けたとか」
「ええ……? セレスタン様もその兄君もヨーク公爵にそっくりよね?」
ヨーク公爵家の子息は二人共父親そっくりだ。
髪も瞳も同じ色を継いでおり、まさにヨーク公爵家の血を引くと誰でも分かるほどなのに。
「思い込みで妄言を吐くような人だったらしいですよ、先代公爵夫人は。ヨーク公爵家は皆この迷惑な姑に振りまわれていたとか」
「ああ、そういえば……。わたくしがセレスタン様に一目惚れをした、という嘘を吹き込んだのも先代夫人だったらしいわ。なんというか……自分の妄想が真実だと思い込むような迷惑な人だったのね。現公爵夫人が恨むのも分からなくもないわ」
それでなくとも子供の出自を疑われることは母親にとって耐えがたい屈辱だろう。
自分の孫を産んでくれた嫁に対してよくそんな酷いことを言えたものだ。
「そういえばセレスタン様も思い込みで言いがかりをつけてくるような方だったわ……。お祖母様似なのね」
「夫人も自分の息子が大嫌いな姑にそっくりだと気づいた途端、セレスタン様に酷い嫌悪感を抱いたそうですよ。もう二度と顔も見たくないと避けていらっしゃるそうで」
「まあ……そこまでなのね。セレスタン様は邸で軟禁されていると聞いたけれど……」
「ええ、そのようです。ルイ卿が正式に姫様の婚約者に決まれば邸から放逐されるとか」
私の婚約が決まれば、セレスタンが邸から追い出されてしまう。
そう聞いても何とも思わなかった。
私の婚約がキッカケで彼の人生が転落しようが少しも胸は痛まない。
馬鹿な人。王女を陥れようとしてただで済むはずがないと、分からないはずがないのに。
「公爵夫人の……? 夫の異母弟を妻が保護していたということ? 随分と珍しい状況ね」
ルイの母君は先代公爵の妾だったと聞く。
現公爵が年の離れた弟を庇護するのならまだ分かるが、妻が義理の弟を庇護するというのは珍しい。
それもわざわざ自分の生家を頼ってまで。
「ええ、どうやらルイ卿の母君は先代公爵夫人から幾度も殺されかけたようです。それこそルイ卿を身籠っていた頃から何度も。それを見かねた現公爵夫人が『ヨーク公爵家の血を引く子を害するなどとんでもない』と、ご自分の生家の土地に避難させたようです。いくら先代公爵夫人といえども、他家の土地にまで手出しすることは不可能だったようで、ルイ卿と母君は安心して暮らすことができたそうです」
「まあ……まさに貴婦人の鑑ね。中々出来ることじゃないわ」
夫の家の血筋を守る行為は貴族家の夫人にとって美徳の証とされる。
それでなくとも夫の父親の妾と、その腹に宿る子を守ろうとする妻というのは中々珍しい。
「ええ、はたから見れば美談なのですが、実際は夫人の根深い恨みによるものでして……」
「え!? 恨み? それは……誰に対しての?」
「先代公爵夫人に対してのです。現公爵夫人は先代公爵夫人……ややこしいので”姑”と呼びますね。夫人は姑にひどい恨みと憎しみを抱いておりまして、”舅”の妾を保護することで姑を傷つけてやろうと思ったそうです」
「姑を傷つける目的で妾を保護したの……? なんというか、随分と斬新ね……」
「ですが効果は抜群だったようで、姑は夫の妾に子供が、しかも男児が産まれたと聞くや否や発狂したそうです」
「抜群どころの話じゃないわね!?」
「ちなみに姑にそのことを伝えたのは公爵夫人です」
「どんなことをすれば嫁にそこまで恨まれるの……」
「なんでも夫人は姑に”孫達は息子の子じゃない!”と根拠のない侮辱を受けたとか」
「ええ……? セレスタン様もその兄君もヨーク公爵にそっくりよね?」
ヨーク公爵家の子息は二人共父親そっくりだ。
髪も瞳も同じ色を継いでおり、まさにヨーク公爵家の血を引くと誰でも分かるほどなのに。
「思い込みで妄言を吐くような人だったらしいですよ、先代公爵夫人は。ヨーク公爵家は皆この迷惑な姑に振りまわれていたとか」
「ああ、そういえば……。わたくしがセレスタン様に一目惚れをした、という嘘を吹き込んだのも先代夫人だったらしいわ。なんというか……自分の妄想が真実だと思い込むような迷惑な人だったのね。現公爵夫人が恨むのも分からなくもないわ」
それでなくとも子供の出自を疑われることは母親にとって耐えがたい屈辱だろう。
自分の孫を産んでくれた嫁に対してよくそんな酷いことを言えたものだ。
「そういえばセレスタン様も思い込みで言いがかりをつけてくるような方だったわ……。お祖母様似なのね」
「夫人も自分の息子が大嫌いな姑にそっくりだと気づいた途端、セレスタン様に酷い嫌悪感を抱いたそうですよ。もう二度と顔も見たくないと避けていらっしゃるそうで」
「まあ……そこまでなのね。セレスタン様は邸で軟禁されていると聞いたけれど……」
「ええ、そのようです。ルイ卿が正式に姫様の婚約者に決まれば邸から放逐されるとか」
私の婚約が決まれば、セレスタンが邸から追い出されてしまう。
そう聞いても何とも思わなかった。
私の婚約がキッカケで彼の人生が転落しようが少しも胸は痛まない。
馬鹿な人。王女を陥れようとしてただで済むはずがないと、分からないはずがないのに。
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