フランチェスカ王女の婿取り

わらびもち

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ルイについて

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「ルイ様について、もう少し詳しい情報はあるかしら?」

 今のところルイ本人については何一つ分かっていない。
 分かったのはヨーク公爵家の嫁姑関係が泥沼だったということだけだ。
 中々興味深い話ではあったけれど。

「はい、もちろん。むしろ今の話は序章に過ぎません」

「こんなに濃い序章がある……? まあいいわ、続きを話してちょうだい」

「畏まりました。ルイ卿は幼い頃より高位貴族の教育を叩き込まれてきたそうです。ヨーク公爵家の血を引く子息として家門の役に立つように、と」

「あら、それは随分と珍しいわね?」

 妾の子となると貴族としての教育を最低限しか施されないことが多い。
 生活にお金を使うことが手一杯で、教育にまで手が回らないからだ。
 それなのに高位貴族の教育まで受けているというのはかなり珍しい。

「ルイ卿の母君はご自身のドレスや宝石を売ってまでご子息の教育にお金をかけたらしく、家庭教師も一流の方をお呼びしたとか。どうやら母君は夫人に大層恩義を感じておられるようで、家門の役に立つよう子息を育てると決められていたようです」

「実際そうなったわけだから、母君のご慧眼は凄いわね。それにしてもそこまで恩義を感じるなんて、義理堅い方なのね」

「どうやら母君は先代公爵夫人からそれはもう苛烈な嫌がらせを受けていたらしいですよ。妊娠中の彼女に毒を盛ったり、真冬の湖に突き落としたりと、そのたびに現公爵夫人が助けたようです」

「それは……凄まじいわね。そこまでの恩義を感じてもおかしくないわ」

「余談ですが現公爵夫人はその都度姑に向かい『愛人程度に目くじら立てるなんて、お義母様は高位貴族の妻として心構えが足りないのではありませんこと?』と嬉々として嫌味をぶつけていたようです」

「それも凄まじいわね……」

 確かに身分の高い貴婦人ほど”夫の愛人には寛容に”と教育される。
 公爵夫人も本心からそう思っているかは別として、憎い姑に何か言ってやりたくてたまらなかったのだろう。

 それにしてもまたヨーク公爵家の嫁姑戦争に戻ってしまった。
 今のところルイについて分かっていることといえば”高位貴族の教育を受けている”ということだけ。
 それも十分に重要な情報だが、もっとこう彼の性格等が知りたい。

「ルイ様はご自分の人生が決められていることを、どうお考えなのかしら?」

 身分が高ければ高いほど幼いうちから自分の人生の道筋が定められているもの。
 私もそうだったし、国や家の為にそうすることを当たり前だと捉えてきた。
 王侯貴族であればそれが義務であり、己の成すべき事だと。

 だがセレスタンは違う。彼にとっては義務よりも自分の意志の方が重要だった。
 なら、家も身分も捨てて生きればいいのにそうすることもせず、ただ自分のしたいことをして、自分が選んだ女性と添い遂げたいと願った。

 なんて身勝手で自己中心的な男なのか。こんな考えの人間が高位貴族にいることが驚きだった。

 もし、ルイも勝手に将来が決められていることを不満に思っているのなら……残念だけど婚約を結ぶことは出来ない。王女の婚約者というものは、生半可な覚悟で務まるものではないのだから。

 王族と縁を結ぶということは、自分の肩に家門の未来を背負うも同じ。
 最低でも貴族としての義務を果たそうという責任感がある人でなければ。
 
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