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トム
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「ルイ様、少々お聞きしたいことがございます……」
ヨーク公爵家の従僕を務める昔馴染みのトムにそう告げられ、そのただならぬ様子にルイは訝しんだ。
「トム? 顔色が悪いぞ、どうしたんだ?」
人払いを済ませた部屋でルイはそう切り出した。
するとトムは冷や汗を流し、搾り取るような声を出す。
「姫様の新居に男女二人組の侵入者が現れたと耳にしました……。その侵入者の正体は分かったのですか?」
「ああ、男の侵入者はハッキリしたが女の方はまだ分かっていない」
「そう……ですか。実は……その女の方に心当たりがありまして……」
青褪めた顔でトムはルイを見つめ、意を決したように呟いた。
「もしかしたら……ジェーンがその侵入者かもしれないのです」
「ジェーンが? どうしてそう思うんだ?」
消去法でジェーンしか該当者がいないと判断したルイと違い、トムは何かを知っている。
そう確信したルイはトムの発言を促した。
「それは……僕がジェーンに姫様の新居の住所を教えてしまったからです……! しつこく迫られて、つい言ってしまって……本当に申し訳ございません!」
「住所を? そうだったのか……」
王女が治める領地の場所すら知らないセレスタンがどうして新居の場所を知ったのか。
今のトムの発言でルイはそれを理解した。
(なるほど、ジェーンが新居の場所をセレスタン様に教えたのか……)
「トム、とんでもないことをしてくれたものだな」
ルイの叱責にトムは体をビクッと大きく震わせた。
「も、申し訳ございません……! どうか解雇だけは、解雇だけはご勘弁を……!」
内部情報を漏らした使用人など何処にも雇ってもらえない。
それを理解しているからこそトムは必死に縋りついた。
「それなら一つ頼みたいことがある。それを聞いてくれるのなら、君がジェーンに情報を漏らしたことを黙っておいてやろう」
「あ、ありがとうございます……! 解雇を免れるのなら何でもします!」
「そうか、ではジェーンからセレスタン様の居場所を聞き出してくれ」
「はい……? え? セレスタン様の居場所? ジェーンはセレスタン様が何処にいらっしゃるかを知っているのですか?」
「おそらくな。私はセレスタン様を逃がした犯人がジェーンだと疑っている。だがいくら問い詰めようと”知らない”としか答えない。そこで君に彼の人の居場所を聞き出してほしい」
「ええ!? ジェーンがセレスタン様を……? そんな、あいつはそんなことまで……」
まさかそんな犯罪めいたことにまで手を染めるとは。
トムはひどく衝撃を受け言葉を失う。
「驚くのも無理はない。私も最初は信じたくなかったよ……。何でそんな犯罪めいたことをしてしまったんだか……」
「ルイ様……おそらくですが、ジェーンは貴方と姫様の仲を邪魔するためにそのようなことに手を染めたのかと。ジェーンは昔から貴方のことを好いておりましたので……」
「……それは知っていた。だが私はヨーク公爵家の利益となる相手と結婚をすると決めていたしな。どうあってもジェーンを選ぶことはない。それを理解しているものかと……」
「いえ、ジェーンはそういう暗黙の了解を理解する能力は低いかと。とはいえ、使用人の身で仕える主人と結ばれるなんて無謀だと普通は分かるものです」
「その普通が分かっていなかったわけだな……」
なんとなくそうではないかと思っていたが、ジェーンがやらかした原因が自分にあった。
ルイはそれを自覚し、もっと早い段階で突き放しておけばよかったと悔やむ。
「ルイ様が落ち込むことはありません。ジェーンが身勝手な想いを暴走させただけですから」
「うん……ありがとう、トム」
「いえ、必ずジェーンから情報を引き出して参りますので、お任せください」
恭しく礼をとるトムにルイは力なく笑った。
ヨーク公爵家の従僕を務める昔馴染みのトムにそう告げられ、そのただならぬ様子にルイは訝しんだ。
「トム? 顔色が悪いぞ、どうしたんだ?」
人払いを済ませた部屋でルイはそう切り出した。
するとトムは冷や汗を流し、搾り取るような声を出す。
「姫様の新居に男女二人組の侵入者が現れたと耳にしました……。その侵入者の正体は分かったのですか?」
「ああ、男の侵入者はハッキリしたが女の方はまだ分かっていない」
「そう……ですか。実は……その女の方に心当たりがありまして……」
青褪めた顔でトムはルイを見つめ、意を決したように呟いた。
「もしかしたら……ジェーンがその侵入者かもしれないのです」
「ジェーンが? どうしてそう思うんだ?」
消去法でジェーンしか該当者がいないと判断したルイと違い、トムは何かを知っている。
そう確信したルイはトムの発言を促した。
「それは……僕がジェーンに姫様の新居の住所を教えてしまったからです……! しつこく迫られて、つい言ってしまって……本当に申し訳ございません!」
「住所を? そうだったのか……」
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今のトムの発言でルイはそれを理解した。
(なるほど、ジェーンが新居の場所をセレスタン様に教えたのか……)
「トム、とんでもないことをしてくれたものだな」
ルイの叱責にトムは体をビクッと大きく震わせた。
「も、申し訳ございません……! どうか解雇だけは、解雇だけはご勘弁を……!」
内部情報を漏らした使用人など何処にも雇ってもらえない。
それを理解しているからこそトムは必死に縋りついた。
「それなら一つ頼みたいことがある。それを聞いてくれるのなら、君がジェーンに情報を漏らしたことを黙っておいてやろう」
「あ、ありがとうございます……! 解雇を免れるのなら何でもします!」
「そうか、ではジェーンからセレスタン様の居場所を聞き出してくれ」
「はい……? え? セレスタン様の居場所? ジェーンはセレスタン様が何処にいらっしゃるかを知っているのですか?」
「おそらくな。私はセレスタン様を逃がした犯人がジェーンだと疑っている。だがいくら問い詰めようと”知らない”としか答えない。そこで君に彼の人の居場所を聞き出してほしい」
「ええ!? ジェーンがセレスタン様を……? そんな、あいつはそんなことまで……」
まさかそんな犯罪めいたことにまで手を染めるとは。
トムはひどく衝撃を受け言葉を失う。
「驚くのも無理はない。私も最初は信じたくなかったよ……。何でそんな犯罪めいたことをしてしまったんだか……」
「ルイ様……おそらくですが、ジェーンは貴方と姫様の仲を邪魔するためにそのようなことに手を染めたのかと。ジェーンは昔から貴方のことを好いておりましたので……」
「……それは知っていた。だが私はヨーク公爵家の利益となる相手と結婚をすると決めていたしな。どうあってもジェーンを選ぶことはない。それを理解しているものかと……」
「いえ、ジェーンはそういう暗黙の了解を理解する能力は低いかと。とはいえ、使用人の身で仕える主人と結ばれるなんて無謀だと普通は分かるものです」
「その普通が分かっていなかったわけだな……」
なんとなくそうではないかと思っていたが、ジェーンがやらかした原因が自分にあった。
ルイはそれを自覚し、もっと早い段階で突き放しておけばよかったと悔やむ。
「ルイ様が落ち込むことはありません。ジェーンが身勝手な想いを暴走させただけですから」
「うん……ありがとう、トム」
「いえ、必ずジェーンから情報を引き出して参りますので、お任せください」
恭しく礼をとるトムにルイは力なく笑った。
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