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罠④
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「ここにある家具は全て、今宵の舞台を整える為だけに用意したものです。終われば全て撤去する予定ですので最小限の物しか運んでおりませんの。それにネズミに襲われそうになった想い出が付いたベッドなんて、気持ち悪くて使えやしないでしょう?」
セレスタンの目的を知った私はローゼに命じ、必要最低限の家具を運ばせた。
隠し扉のあるこの部屋を寝室として整え、夜になり彼が現れるのを待ち、私に襲い掛かったところで現行犯として捕縛する。それが今回私がセレスタンの為に用意した罠だ。
事が終われば家具は全て撤去する予定だったので、必要最低限かつ質の悪い物しか用意していない。
そのせいか非常に簡素な見た目となってしまい、もしかすると罠だと気付くかもしれないと思ったが、予定通り事を進めたのだから笑える。
「それに貴女が潜んでいた地下牢……随分と雑な造りだと思いませんでした? 王族が使用するのですから最低限舗装位はされていて当然、なのにそうではなかった。そこからおかしいと思っていただかなくては……」
「あ、あ……そんな……」
どうせ封鎖する予定だからと舗装もせずそのままにしておいた。
そのせいで雨水でも溜まっていたのかジェーンの服は所々濡れている。
「どうして……? どうしてアタシ達の計画が知られていたの? 誰にも言っていないのに……どうして……」
「それは君に監視を付けたからだ。君やセレスタン様は声が大きいから宿での会話も筒抜けだったと監視の者も言ってたよ。週末に隠し通路を使ってフランを手籠めにする……という悍ましい話がね」
口に出すことすら悍ましいとばかりにルイは顔を顰める。
好きな人のそんな態度にジェーンは絶望の表情を浮かべていた。
「あ、あ……ルイ……」
「馬鹿なことを。婦女子に乱暴してその夫の座を得ようなど蛮族のやることだ。君は無理やり手籠めにしてきた男を好きになれるか?」
「そ、それは……好きな人だったら、その……」
こんな時でもチラチラとルイに”好き”をアピールしてくる根性がすごい。
ルイになら襲われても構わないとでも言いたいのだろうが、当の本人は害虫を見るような目を向けているのに……。
「ふうん……なら、嫌いな相手だったら?」
「え?」
「嫌いな相手に襲われたのなら、その人を好きになるのか? 結婚したいと思うのか?」
「は? そんなわけないじゃないの!? ただただ気持ち悪いだけよ、そんなの!」
「そうだろう? なら、フランだってそうだ。大嫌いな相手が襲ってきてもただただ気持ち悪いだけだろう」
「へ……? え? どういうこと?」
「どうもこうも、フランはセレスタン様のことが嫌いなんだよ。ねえ、フラン?」
ルイが私に同意を求めてきたので「ええ」と頷いた。
「この世で一番嫌いですわ。だってそうでしょう? わたくしとの婚約は政略なのに『お前が我儘を言って私を無理やり婚約者にした!』と被害者ぶるし、わたくしの侍女と不貞を犯すし、結婚後もその侍女との関係を続けるつもりでしたし、わたくしへの贈り物をその侍女に横流しするしで……控えめに言って最低じゃありませんこと? おまけにわたくしを無理やり手籠めにして夫の座を得ようなんて下衆のすることですわ。こんな男、嫌いにならない奇特な女性がどこにいるというのかしら?」
息継ぎ無しでまくし立ててやると、ジェーンは口をポカンと開けて呆けていた。
「貴女はセレスタン様と共に行動していて、彼をどう思いましたか? 好意を覚えるような部分はあったのかしら?」
私がそう聞くとジェーンはぶんぶんと首を横に勢いよく振った。
「そうでしょう? 無理なのよ。あんな我儘で傲慢、他人に対して感謝の心もない、頭も悪いしすぐ楽な方に流されるような屑を好きになるなんて。それに貴女も見たでしょう? 先ほど彼がわたくしに扮したルイの髪を掴んだところを。ウィッグだったからよかったものを……本物の髪であったなら激痛が走るわよ。女性の髪を掴んだまま無理やり上に上げるだなんて信じられない。先ほどの行為でますます嫌いになったわ」
私の言葉に彼女は思うところがあったようで、こちらに顔を向けたまま「あ……」と呟いた。
「ア、アタシも初めはそう思っていたの……。婚約中に浮気をするような傲慢男なんて、誰が好きになるかって……。でも『王女様がセレスタン様を今でも愛している』と嘘を言い続けていたら、それが真実だと思い込むようになっちゃって……」
「え……? どうしてそんな有り得ない嘘をついたのかしら?」
「だって……どうしてもルイと結ばれたかったから……。それで、王女様とセレスタン様がくっつけばルイは自由の身になるって思って……。だから、セレスタン様をその気にさせようと思ってそんな嘘を……」
呆れて物も言えない。
つまりジェーンは大好きなルイを奪った私を排除する為だけにセレスタンを唆したというわけか。
あの単純で物事を深く考えないセレスタンのことだ。そんな有り得ない嘘もアッサリと信じてしまうだろう。
だが言った本人までそれが真実だと思うようになり、愛する相手ならば手籠めにされても構わないだろうと思うようになるなど頭がどうかしている。
「では、貴女はセレスタン様にわたくしを手籠めにしろと唆した。そういうことかしら?」
「違う! それはセレスタン様が言い出したのよ! アタシはそんなの駄目だって言ったんだけど……でも……セレスタン様は”婚前交渉”だから大丈夫だって……」
頭が痛くなってきた。
このジェーンとかいう人、セレスタンと同じくらい頭が弱い。
物事を”考える”と”いう機能を何処かに落としたのかと思うくらいの酷さだ。
「貴女、今の状況を冷静に考えて御覧なさい。婚前交渉どころか”不法侵入”と”婦女暴行”よ? しかもこの国で最も身分が高い王族に対して。どう考えても死罪は免れないし、共犯者である貴女も同罪よ」
「えっ……!? 死罪?」
「何驚いているのよ? 王族相手にここまでして無事でいられるとでも思ったの?」
「あ……で、でも、襲った相手は王女様じゃなくてルイだったわ!」
「そうね、ルイがわたくしの身を案じて身代わりになってくれたから。セレスタン様が実際に襲った相手はわたくしではなくルイだわ」
私が肯定したからか、ジェーンは分かりやすく顔をパアッと輝かせた。
愚かな人。襲った相手を肯定しただけで、罪が無くなるとは言っていないのに。
セレスタンの目的を知った私はローゼに命じ、必要最低限の家具を運ばせた。
隠し扉のあるこの部屋を寝室として整え、夜になり彼が現れるのを待ち、私に襲い掛かったところで現行犯として捕縛する。それが今回私がセレスタンの為に用意した罠だ。
事が終われば家具は全て撤去する予定だったので、必要最低限かつ質の悪い物しか用意していない。
そのせいか非常に簡素な見た目となってしまい、もしかすると罠だと気付くかもしれないと思ったが、予定通り事を進めたのだから笑える。
「それに貴女が潜んでいた地下牢……随分と雑な造りだと思いませんでした? 王族が使用するのですから最低限舗装位はされていて当然、なのにそうではなかった。そこからおかしいと思っていただかなくては……」
「あ、あ……そんな……」
どうせ封鎖する予定だからと舗装もせずそのままにしておいた。
そのせいで雨水でも溜まっていたのかジェーンの服は所々濡れている。
「どうして……? どうしてアタシ達の計画が知られていたの? 誰にも言っていないのに……どうして……」
「それは君に監視を付けたからだ。君やセレスタン様は声が大きいから宿での会話も筒抜けだったと監視の者も言ってたよ。週末に隠し通路を使ってフランを手籠めにする……という悍ましい話がね」
口に出すことすら悍ましいとばかりにルイは顔を顰める。
好きな人のそんな態度にジェーンは絶望の表情を浮かべていた。
「あ、あ……ルイ……」
「馬鹿なことを。婦女子に乱暴してその夫の座を得ようなど蛮族のやることだ。君は無理やり手籠めにしてきた男を好きになれるか?」
「そ、それは……好きな人だったら、その……」
こんな時でもチラチラとルイに”好き”をアピールしてくる根性がすごい。
ルイになら襲われても構わないとでも言いたいのだろうが、当の本人は害虫を見るような目を向けているのに……。
「ふうん……なら、嫌いな相手だったら?」
「え?」
「嫌いな相手に襲われたのなら、その人を好きになるのか? 結婚したいと思うのか?」
「は? そんなわけないじゃないの!? ただただ気持ち悪いだけよ、そんなの!」
「そうだろう? なら、フランだってそうだ。大嫌いな相手が襲ってきてもただただ気持ち悪いだけだろう」
「へ……? え? どういうこと?」
「どうもこうも、フランはセレスタン様のことが嫌いなんだよ。ねえ、フラン?」
ルイが私に同意を求めてきたので「ええ」と頷いた。
「この世で一番嫌いですわ。だってそうでしょう? わたくしとの婚約は政略なのに『お前が我儘を言って私を無理やり婚約者にした!』と被害者ぶるし、わたくしの侍女と不貞を犯すし、結婚後もその侍女との関係を続けるつもりでしたし、わたくしへの贈り物をその侍女に横流しするしで……控えめに言って最低じゃありませんこと? おまけにわたくしを無理やり手籠めにして夫の座を得ようなんて下衆のすることですわ。こんな男、嫌いにならない奇特な女性がどこにいるというのかしら?」
息継ぎ無しでまくし立ててやると、ジェーンは口をポカンと開けて呆けていた。
「貴女はセレスタン様と共に行動していて、彼をどう思いましたか? 好意を覚えるような部分はあったのかしら?」
私がそう聞くとジェーンはぶんぶんと首を横に勢いよく振った。
「そうでしょう? 無理なのよ。あんな我儘で傲慢、他人に対して感謝の心もない、頭も悪いしすぐ楽な方に流されるような屑を好きになるなんて。それに貴女も見たでしょう? 先ほど彼がわたくしに扮したルイの髪を掴んだところを。ウィッグだったからよかったものを……本物の髪であったなら激痛が走るわよ。女性の髪を掴んだまま無理やり上に上げるだなんて信じられない。先ほどの行為でますます嫌いになったわ」
私の言葉に彼女は思うところがあったようで、こちらに顔を向けたまま「あ……」と呟いた。
「ア、アタシも初めはそう思っていたの……。婚約中に浮気をするような傲慢男なんて、誰が好きになるかって……。でも『王女様がセレスタン様を今でも愛している』と嘘を言い続けていたら、それが真実だと思い込むようになっちゃって……」
「え……? どうしてそんな有り得ない嘘をついたのかしら?」
「だって……どうしてもルイと結ばれたかったから……。それで、王女様とセレスタン様がくっつけばルイは自由の身になるって思って……。だから、セレスタン様をその気にさせようと思ってそんな嘘を……」
呆れて物も言えない。
つまりジェーンは大好きなルイを奪った私を排除する為だけにセレスタンを唆したというわけか。
あの単純で物事を深く考えないセレスタンのことだ。そんな有り得ない嘘もアッサリと信じてしまうだろう。
だが言った本人までそれが真実だと思うようになり、愛する相手ならば手籠めにされても構わないだろうと思うようになるなど頭がどうかしている。
「では、貴女はセレスタン様にわたくしを手籠めにしろと唆した。そういうことかしら?」
「違う! それはセレスタン様が言い出したのよ! アタシはそんなの駄目だって言ったんだけど……でも……セレスタン様は”婚前交渉”だから大丈夫だって……」
頭が痛くなってきた。
このジェーンとかいう人、セレスタンと同じくらい頭が弱い。
物事を”考える”と”いう機能を何処かに落としたのかと思うくらいの酷さだ。
「貴女、今の状況を冷静に考えて御覧なさい。婚前交渉どころか”不法侵入”と”婦女暴行”よ? しかもこの国で最も身分が高い王族に対して。どう考えても死罪は免れないし、共犯者である貴女も同罪よ」
「えっ……!? 死罪?」
「何驚いているのよ? 王族相手にここまでして無事でいられるとでも思ったの?」
「あ……で、でも、襲った相手は王女様じゃなくてルイだったわ!」
「そうね、ルイがわたくしの身を案じて身代わりになってくれたから。セレスタン様が実際に襲った相手はわたくしではなくルイだわ」
私が肯定したからか、ジェーンは分かりやすく顔をパアッと輝かせた。
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