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想い人からの嫌悪
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「けど、セレスタン様がわたくしを狙ったことは明らかです。彼は”フランチェスカ”とわたくしの名をしっかりと呼んでおりましたもの。王女を犯そうとした、その事実だけで十分死罪にあたります。もちろん協力者である貴女も同罪です」
ジェーンの顔はもう真っ青を通り越して土気色になっている。
月明りだけでも分かるなんて相当だ。
「そんな……死罪だなんて嫌よ! アタシはただ、ルイと幸せになりたかっただけ! あんたがアタシからルイを奪わなければこんなことには……」
「ジェーン、ふざけた事を言うな! 私が君と幸せになる未来などこの世の何処にも存在しない。それに奪うも何も私は元々君のものじゃない! 私が今生で愛したのはフラン唯一人だけだ!」
きっぱりとルイがそう宣言するとジェーンは壊れたマリオネットのようにその場に崩れ落ちた。
彼女にしてみれば長年想い続けてきた人と結ばれる為だけにこんな馬鹿げた真似をしでかしたのだ。
その想い人にここまで拒絶されたのだから、彼女が受けた衝撃はさぞかし大きいだろう。
「ルイ、嬉しいです……」
「フラン……」
そっとルイに寄り添うと、彼は蕩けるような瞳で私を見つめてくれる。
こんな状況にも関わらず私達は互いに熱い視線を交わした。
「嫌っ! やめて! やめてよ! ルイはアタシの運命なの! お願いよ、ルイ! アタシを連れてここから逃げて! このままじゃアタシ殺されちゃう……!」
あそこまで拒絶されておいて、よくもまあそんな台詞が言えたものだと呆れてしまう。
ここまでくるともう意地なのか執着なのか……。いずれにしても自分の事しか考えていない。
「君はその命をもって罪を償うべきだ。最後の最後で思いとどまっていたらこんなことにはならなかったろうに……。本当に愚かだな。せっかくトムが最後に忠告をしてくれたというのに、それも聞かず欲望のまま動くなんて救いようがない……」
「え……? どうしてここでトムが出てくるの?」
「トムは私の協力者だ。従僕の彼がどうして下男に……しかも君と同じ持ち場についたのか疑問に思わなかったのか?」
「トムがルイの協力者……? え? まさかアタシを監視していたのって、トムなの……?」
「まあ、そんなところだ。トムは君にフランの”前泊り”の日程を教えただろう? あれは私がそう命じたからだ」
「そんな……! じゃあ、トムはわざとアタシにその情報を!?」
「そうだ。でもトムはこのまま君を見殺しにするのは嫌だったから最後に忠告したと言っていたよ。まあ君は全然彼の忠告を聞いていなかったようだがね」
「だってあれじゃ全然分からないわよ!」
「分かるように言うわけないだろう? トムだけは君の身を案じていたというのに全く……」
「え? トムだけって……ルイは?」
「私は君がどうなろうと構わない。フランを悍ましい目に遭わそうとした君を本気で軽蔑する」
「ひ……ひどい! アタシ、アタシ……ルイの為にあんな下衆男と手を組んだのに! 今日だってお化粧して、お洒落して……貴方に見てほしいために着飾ったのに!」
「ああ、死に化粧として丁度いいんじゃないか?」
ルイの辛辣な言葉にジェーンは絶句してしまった。
愛する人からここまで突き放されたのなら、鈍い彼女もいい加減理解するだろう。
ずっと想い続けてきた男性が、自分を蛇蝎の如く嫌っていることに。
ジェーンの顔はもう真っ青を通り越して土気色になっている。
月明りだけでも分かるなんて相当だ。
「そんな……死罪だなんて嫌よ! アタシはただ、ルイと幸せになりたかっただけ! あんたがアタシからルイを奪わなければこんなことには……」
「ジェーン、ふざけた事を言うな! 私が君と幸せになる未来などこの世の何処にも存在しない。それに奪うも何も私は元々君のものじゃない! 私が今生で愛したのはフラン唯一人だけだ!」
きっぱりとルイがそう宣言するとジェーンは壊れたマリオネットのようにその場に崩れ落ちた。
彼女にしてみれば長年想い続けてきた人と結ばれる為だけにこんな馬鹿げた真似をしでかしたのだ。
その想い人にここまで拒絶されたのだから、彼女が受けた衝撃はさぞかし大きいだろう。
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「フラン……」
そっとルイに寄り添うと、彼は蕩けるような瞳で私を見つめてくれる。
こんな状況にも関わらず私達は互いに熱い視線を交わした。
「嫌っ! やめて! やめてよ! ルイはアタシの運命なの! お願いよ、ルイ! アタシを連れてここから逃げて! このままじゃアタシ殺されちゃう……!」
あそこまで拒絶されておいて、よくもまあそんな台詞が言えたものだと呆れてしまう。
ここまでくるともう意地なのか執着なのか……。いずれにしても自分の事しか考えていない。
「君はその命をもって罪を償うべきだ。最後の最後で思いとどまっていたらこんなことにはならなかったろうに……。本当に愚かだな。せっかくトムが最後に忠告をしてくれたというのに、それも聞かず欲望のまま動くなんて救いようがない……」
「え……? どうしてここでトムが出てくるの?」
「トムは私の協力者だ。従僕の彼がどうして下男に……しかも君と同じ持ち場についたのか疑問に思わなかったのか?」
「トムがルイの協力者……? え? まさかアタシを監視していたのって、トムなの……?」
「まあ、そんなところだ。トムは君にフランの”前泊り”の日程を教えただろう? あれは私がそう命じたからだ」
「そんな……! じゃあ、トムはわざとアタシにその情報を!?」
「そうだ。でもトムはこのまま君を見殺しにするのは嫌だったから最後に忠告したと言っていたよ。まあ君は全然彼の忠告を聞いていなかったようだがね」
「だってあれじゃ全然分からないわよ!」
「分かるように言うわけないだろう? トムだけは君の身を案じていたというのに全く……」
「え? トムだけって……ルイは?」
「私は君がどうなろうと構わない。フランを悍ましい目に遭わそうとした君を本気で軽蔑する」
「ひ……ひどい! アタシ、アタシ……ルイの為にあんな下衆男と手を組んだのに! 今日だってお化粧して、お洒落して……貴方に見てほしいために着飾ったのに!」
「ああ、死に化粧として丁度いいんじゃないか?」
ルイの辛辣な言葉にジェーンは絶句してしまった。
愛する人からここまで突き放されたのなら、鈍い彼女もいい加減理解するだろう。
ずっと想い続けてきた男性が、自分を蛇蝎の如く嫌っていることに。
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