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清々しい気分
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呆然自失となったジェーンの腕に縄をかけ、護送用に用意した馬車に乗せるよう命じた。
彼等はこれから王宮へと連行され、そこで裁きを受ける。
いくら公爵子息といえども王族を害そうとした罪は重い。
これでもう、永遠にあの男に悩まされずに済む。
「ルイ、今日はありがとうございます。わたくしの身代わり役を務めてくれて」
「いえ、とんでもない。フランがセレスタン様の暴力を受けずにすんで本当によかった」
本当は囮の役目は自分でするつもりだった。
だがルイは私にそんな危険な事をさせられない、と身代わり役を買って出てくれたのだ。
銀髪のウィッグを被り、寝台に横たわりシーツで体と顔を隠す。
たったそれだけの変装なのにセレスタンは完全にルイを私だと認識した。
彼と私は身長も体格も全く違うのに髪色だけで判断したようだ。
「まさかセレスタン様が女性の髪を掴むなどという暴挙に出るとは……。あれをフランが受けていたと思うとゾッとします」
ルイは私の身に危険が及ばなかったことに安堵しそっと自分の元へと抱き寄せた。
夜の空気で冷えた体に彼の温もりが心地よい。
「わたくしもまさかセレスタン様が女性にあんな暴力を振るうとは思いもしませんでした。あれではまるでどこぞの破落戸のようですわね」
「全くです。公爵家の令息がすることだとは思えません」
「わたくしを汚そうとしただけではなく、わたくしにあのような暴力を振るおうとしていたとなれば、いかに公爵家の人間といえども死罪は免れません。……ヨーク公爵夫妻は反対するでしょうか?」
「義両親……特に義父は甘いところがありますから有り得るでしょうね。ですがデリック義兄さんが防波堤になると思います」
「まあ、デリック卿が?」
「ええ、義兄は義父の甘い措置に思うところがあったようです。さっさと毒杯を渡しておけばフランに迷惑をかけることも公爵家が恥をかくこともなかったと」
「デリック卿が当主の座に就いていたのならその措置も有り得たでしょうね……」
家人の処罰に対する采配は当主に一任されるもの。
厳しい当主であれば厳罰が、甘い当主であれば温い処置が下される。
部屋に軟禁というヨーク公爵の処罰は甘かった。
そのせいで私の新居に侵入などという暴挙に出たのだから。
「それでは帰りましょうか。目的も果たせたことですし」
時刻は夜半過ぎ。今から帰ると王宮に着く頃は朝になるだろう。
体は冷えているし眠気もひどい。だけど私の心は清々しい気分で満ちていた。
彼等はこれから王宮へと連行され、そこで裁きを受ける。
いくら公爵子息といえども王族を害そうとした罪は重い。
これでもう、永遠にあの男に悩まされずに済む。
「ルイ、今日はありがとうございます。わたくしの身代わり役を務めてくれて」
「いえ、とんでもない。フランがセレスタン様の暴力を受けずにすんで本当によかった」
本当は囮の役目は自分でするつもりだった。
だがルイは私にそんな危険な事をさせられない、と身代わり役を買って出てくれたのだ。
銀髪のウィッグを被り、寝台に横たわりシーツで体と顔を隠す。
たったそれだけの変装なのにセレスタンは完全にルイを私だと認識した。
彼と私は身長も体格も全く違うのに髪色だけで判断したようだ。
「まさかセレスタン様が女性の髪を掴むなどという暴挙に出るとは……。あれをフランが受けていたと思うとゾッとします」
ルイは私の身に危険が及ばなかったことに安堵しそっと自分の元へと抱き寄せた。
夜の空気で冷えた体に彼の温もりが心地よい。
「わたくしもまさかセレスタン様が女性にあんな暴力を振るうとは思いもしませんでした。あれではまるでどこぞの破落戸のようですわね」
「全くです。公爵家の令息がすることだとは思えません」
「わたくしを汚そうとしただけではなく、わたくしにあのような暴力を振るおうとしていたとなれば、いかに公爵家の人間といえども死罪は免れません。……ヨーク公爵夫妻は反対するでしょうか?」
「義両親……特に義父は甘いところがありますから有り得るでしょうね。ですがデリック義兄さんが防波堤になると思います」
「まあ、デリック卿が?」
「ええ、義兄は義父の甘い措置に思うところがあったようです。さっさと毒杯を渡しておけばフランに迷惑をかけることも公爵家が恥をかくこともなかったと」
「デリック卿が当主の座に就いていたのならその措置も有り得たでしょうね……」
家人の処罰に対する采配は当主に一任されるもの。
厳しい当主であれば厳罰が、甘い当主であれば温い処置が下される。
部屋に軟禁というヨーク公爵の処罰は甘かった。
そのせいで私の新居に侵入などという暴挙に出たのだから。
「それでは帰りましょうか。目的も果たせたことですし」
時刻は夜半過ぎ。今から帰ると王宮に着く頃は朝になるだろう。
体は冷えているし眠気もひどい。だけど私の心は清々しい気分で満ちていた。
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