73 / 84
御機嫌よう、転生者様①
しおりを挟む
「姫様、お一人でなんて危のうございます。せめてわたくしに共をさせてくださいませ」
「大丈夫よ、ローゼ。鉄格子を挟んで話すから危険はないわ」
なんだか似たような会話を前にもしたことがある。
あれは確か地下牢にいるアンヌマリーと話をしたいと言った時だ。
あの時も同じような会話を衛兵と交わしたことを思い出した。
「最後に話がしたいのよ。よくよく考えてみればあの人とまともな会話を交わしたことなどなかったから。ね? お願い、ローゼ」
「そういうことでしたら……致し方ありませんね。ですが、少しでも危険を感じましたらすぐにわたくし共をお呼びくださいね? 相手はなにをしてくるか分からないような危険人物なのですから」
「ありがとう、ローゼ。もちろんそうするわ」
私がこれから向かう先は王宮の地下室。
かつてアンヌマリーを収容していたあの部屋だ。
今、あの部屋にはアンヌマリーの片割れがいる。
数々の騒動の元凶であり、小説のヒーロー役であったあの男が。
(またここに来るなんて思いもしなかったわ……)
王女が牢に足を運ぶ事態なんてそうそうない。
複雑な気持ちを抱えたまま私は牢番である衛兵に扉を開けるよう命じた。
「危険ですので鉄格子越しにお話しください」
これもあの時と同じような台詞。
あの時と今で違う事といえば私が鉄格子の存在を知っているというところか。
衛兵が扉を開ける重い音が辺りに響き、仰々しい鉄格子が眼前に現れた。
ここに収監されている罪人との会話を聞かれては困るので、私は衛兵に下がるよう命じる。
あの時収監されていた罪人は私の姿を見るなり泣いて謝ってきたけど、今収監されている罪人はそのようなしおらしい真似は絶対にしないだろう。
案の定、罪人は私の姿を見るなり目を吊り上げて喚きだした。
「おい、フランチェスカ! さっさと私をここから出せ! 今なら土下座で許してやるぞ!」
騒がしい上に自分の立場をまるで理解していない罪人を私は無言で睨みつける。
すると小心者の彼は一瞬怯えたように体をビクッと震わせた。
「な、なんだその目は……!」
「なんだと言われましても……。阿呆だな、と思って見ております」
「なっ……!? なんと生意気な! それが未来の夫に向かって言う事か! 土下座して詫びろ!」
「わたくしの未来の夫はルイですもの。ルイに向かってこのような事は申しません。彼は阿呆ではありませんしね」
私が反論すると罪人は呆気にとられたように目を丸くしてこちらを見ている。
多分、私がここまでポンポンと言い返すとは思ってもみなかったのだろう。
「罪人に敬称はいりませんわね。さて、セレスタン、一つ聞きたいのですけど……貴方は転生者ですか?」
「は……!? 転生者、だと? まさか……お前……!」
「ええ、わたくしも転生者ですわ。そしてここがある小説に酷似している世界だと知っています。貴方もそうなのでしょう?」
驚愕する罪人、セレスタンに向かって私は不敵に微笑んだ。
「大丈夫よ、ローゼ。鉄格子を挟んで話すから危険はないわ」
なんだか似たような会話を前にもしたことがある。
あれは確か地下牢にいるアンヌマリーと話をしたいと言った時だ。
あの時も同じような会話を衛兵と交わしたことを思い出した。
「最後に話がしたいのよ。よくよく考えてみればあの人とまともな会話を交わしたことなどなかったから。ね? お願い、ローゼ」
「そういうことでしたら……致し方ありませんね。ですが、少しでも危険を感じましたらすぐにわたくし共をお呼びくださいね? 相手はなにをしてくるか分からないような危険人物なのですから」
「ありがとう、ローゼ。もちろんそうするわ」
私がこれから向かう先は王宮の地下室。
かつてアンヌマリーを収容していたあの部屋だ。
今、あの部屋にはアンヌマリーの片割れがいる。
数々の騒動の元凶であり、小説のヒーロー役であったあの男が。
(またここに来るなんて思いもしなかったわ……)
王女が牢に足を運ぶ事態なんてそうそうない。
複雑な気持ちを抱えたまま私は牢番である衛兵に扉を開けるよう命じた。
「危険ですので鉄格子越しにお話しください」
これもあの時と同じような台詞。
あの時と今で違う事といえば私が鉄格子の存在を知っているというところか。
衛兵が扉を開ける重い音が辺りに響き、仰々しい鉄格子が眼前に現れた。
ここに収監されている罪人との会話を聞かれては困るので、私は衛兵に下がるよう命じる。
あの時収監されていた罪人は私の姿を見るなり泣いて謝ってきたけど、今収監されている罪人はそのようなしおらしい真似は絶対にしないだろう。
案の定、罪人は私の姿を見るなり目を吊り上げて喚きだした。
「おい、フランチェスカ! さっさと私をここから出せ! 今なら土下座で許してやるぞ!」
騒がしい上に自分の立場をまるで理解していない罪人を私は無言で睨みつける。
すると小心者の彼は一瞬怯えたように体をビクッと震わせた。
「な、なんだその目は……!」
「なんだと言われましても……。阿呆だな、と思って見ております」
「なっ……!? なんと生意気な! それが未来の夫に向かって言う事か! 土下座して詫びろ!」
「わたくしの未来の夫はルイですもの。ルイに向かってこのような事は申しません。彼は阿呆ではありませんしね」
私が反論すると罪人は呆気にとられたように目を丸くしてこちらを見ている。
多分、私がここまでポンポンと言い返すとは思ってもみなかったのだろう。
「罪人に敬称はいりませんわね。さて、セレスタン、一つ聞きたいのですけど……貴方は転生者ですか?」
「は……!? 転生者、だと? まさか……お前……!」
「ええ、わたくしも転生者ですわ。そしてここがある小説に酷似している世界だと知っています。貴方もそうなのでしょう?」
驚愕する罪人、セレスタンに向かって私は不敵に微笑んだ。
701
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
◇レジーナブックスより書籍発売中です!
本当にありがとうございます!
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
八年間の恋を捨てて結婚します
abang
恋愛
八年間愛した婚約者との婚約解消の書類を紛れ込ませた。
無関心な彼はサインしたことにも気づかなかった。
そして、アルベルトはずっと婚約者だった筈のルージュの婚約パーティーの記事で気付く。
彼女がアルベルトの元を去ったことをーー。
八年もの間ずっと自分だけを盲目的に愛していたはずのルージュ。
なのに彼女はもうすぐ別の男と婚約する。
正式な結婚の日取りまで記された記事にアルベルトは憤る。
「今度はそうやって気を引くつもりか!?」
婚約破棄されたので、戻らない選択をしました
ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた
貴族令嬢ミディア・バイエルン。
だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、
彼女は一方的に婚約を破棄される。
「戻る場所は、もうありませんわ」
そう告げて向かった先は、
王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。
権力も、評価も、比較もない土地で、
ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。
指示しない。
介入しない。
評価しない。
それでも、人は動き、街は回り、
日常は確かに続いていく。
一方、王都では――
彼女を失った王太子と王政が、
少しずつ立ち行かなくなっていき……?
派手な復讐も、涙の和解もない。
あるのは、「戻らない」という選択と、
終わらせない日常だけ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる