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公爵夫人の来訪②
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「今からでも遅くはないかと思います。貴女はルイの義母君なのですから、これからはこうして共にお茶を飲む機会を設けられたら嬉しいですわ」
「まあ……なんて嬉しいお言葉なんでしょう。ありがとうございます、殿下」
こうして話してみると彼女とは気が合いそうだと分かる。
本当におかしな話だ。今更それに気付くだなんて……。
「もしかしてもうお耳に入っているやもしれせんが、わたくしこの度夫と離縁しようと思っておりますの……」
彼女の言う通り私は既にそれを知ってはいる。
だが余計な事は言うまいとそのまま口を噤み、彼女の話に耳を傾けた。
「此度の事でわたくしも夫も貴族として甘いのだと痛感致しました。貴族は甘さが命取りになるのだと、わたくしは幼少の頃より親から散々言い聞かされておりましたのに……」
涙をこらえるように彼女は俯く。
「あのジェーンとかいう女の不始末はわたくしの責任です。侍女から下女に落とすのではなく、解雇を申し付けるべきだったと……悔やんでも悔やみきれません。セレスタンのことだってそう、邸に軟禁などと甘い処罰で済ますのではなかった。どちらも中途半端なまま放置してしまった結果、あのような事件を起こしてしまい、殿下に多大なご迷惑をおかけしました。ここまでご迷惑をかけておきながら殿下はヨーク公爵家の醜聞にならぬよう動いてくださった……。その器の大きさに感服致しましたわ」
「夫人……貴女はわたくしを恨んでおりませんの? 結局のところわたくしは貴女のご子息を手にかけたも同然なのですよ」
彼女は私の問いに顔を上げ、そのまま首を横に振った。
「とんでもない。申し訳ないと思いこそすれ、恨みなどどうして抱けましょうか。確かにわたくしはセレスタンの母親ですが、貴族の女としての矜持は持ち合わせております。自分の不始末を殿下に拭って頂きながら恨みを抱くなどと被害者ぶるつもりはございません。ですが夫は恥知らずにも被害者ぶった挙句、陛下に助命嘆願などというみっともない真似を……」
夫人は震える声で「わたくしはそれが許せなかったのです……」と続ける。
どうやら夫妻の離縁は前公爵の恥知らずな言葉がきっかけとなったらしい。
「国王陛下の御前でそのような恥をさらした時点でもう無理でした。身内に甘いにも程があります。それ以前にもあの人はわたくしと亡くなった義母が不仲だと分かっていながら間に入ろうともせず……あ、申し訳ございません、つまらない話をしてしまいました」
気になるからその話もう少しだけ聞きたかった。
だがそういう空気でもないし、夫人も話題を変えようとしている。
「殿下がヨーク公爵家の醜聞とならぬように動いてくださったのは……ルイの為ですよね?」
「ええ……そうです。此度の事が外に漏れてしまえばルイはわたくしの婚約者から外されてしまいますもの」
「殿下はルイを愛していらっしゃるのですね……。わたくしが言えた義理ではありませんが、二人が仲睦まじいことを嬉しく思いますの」
「ええ、ルイを庇護し、新たな婚約者として推薦してくださった夫人のおかげです。わたくしは夫人にとても感謝しておりますのよ」
「殿下……勿体ないお言葉です」
しばし二人の間に沈黙が流れる。
それを打ち破るように夫人が再び口を開いた。
「ルイをどうぞよろしくお願い致します。そして最後にもう一度……この度は愚息が大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる夫人の姿は義理とはいえルイの母親としての情が滲み出ていた。
「まあ……なんて嬉しいお言葉なんでしょう。ありがとうございます、殿下」
こうして話してみると彼女とは気が合いそうだと分かる。
本当におかしな話だ。今更それに気付くだなんて……。
「もしかしてもうお耳に入っているやもしれせんが、わたくしこの度夫と離縁しようと思っておりますの……」
彼女の言う通り私は既にそれを知ってはいる。
だが余計な事は言うまいとそのまま口を噤み、彼女の話に耳を傾けた。
「此度の事でわたくしも夫も貴族として甘いのだと痛感致しました。貴族は甘さが命取りになるのだと、わたくしは幼少の頃より親から散々言い聞かされておりましたのに……」
涙をこらえるように彼女は俯く。
「あのジェーンとかいう女の不始末はわたくしの責任です。侍女から下女に落とすのではなく、解雇を申し付けるべきだったと……悔やんでも悔やみきれません。セレスタンのことだってそう、邸に軟禁などと甘い処罰で済ますのではなかった。どちらも中途半端なまま放置してしまった結果、あのような事件を起こしてしまい、殿下に多大なご迷惑をおかけしました。ここまでご迷惑をかけておきながら殿下はヨーク公爵家の醜聞にならぬよう動いてくださった……。その器の大きさに感服致しましたわ」
「夫人……貴女はわたくしを恨んでおりませんの? 結局のところわたくしは貴女のご子息を手にかけたも同然なのですよ」
彼女は私の問いに顔を上げ、そのまま首を横に振った。
「とんでもない。申し訳ないと思いこそすれ、恨みなどどうして抱けましょうか。確かにわたくしはセレスタンの母親ですが、貴族の女としての矜持は持ち合わせております。自分の不始末を殿下に拭って頂きながら恨みを抱くなどと被害者ぶるつもりはございません。ですが夫は恥知らずにも被害者ぶった挙句、陛下に助命嘆願などというみっともない真似を……」
夫人は震える声で「わたくしはそれが許せなかったのです……」と続ける。
どうやら夫妻の離縁は前公爵の恥知らずな言葉がきっかけとなったらしい。
「国王陛下の御前でそのような恥をさらした時点でもう無理でした。身内に甘いにも程があります。それ以前にもあの人はわたくしと亡くなった義母が不仲だと分かっていながら間に入ろうともせず……あ、申し訳ございません、つまらない話をしてしまいました」
気になるからその話もう少しだけ聞きたかった。
だがそういう空気でもないし、夫人も話題を変えようとしている。
「殿下がヨーク公爵家の醜聞とならぬように動いてくださったのは……ルイの為ですよね?」
「ええ……そうです。此度の事が外に漏れてしまえばルイはわたくしの婚約者から外されてしまいますもの」
「殿下はルイを愛していらっしゃるのですね……。わたくしが言えた義理ではありませんが、二人が仲睦まじいことを嬉しく思いますの」
「ええ、ルイを庇護し、新たな婚約者として推薦してくださった夫人のおかげです。わたくしは夫人にとても感謝しておりますのよ」
「殿下……勿体ないお言葉です」
しばし二人の間に沈黙が流れる。
それを打ち破るように夫人が再び口を開いた。
「ルイをどうぞよろしくお願い致します。そして最後にもう一度……この度は愚息が大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる夫人の姿は義理とはいえルイの母親としての情が滲み出ていた。
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