フランチェスカ王女の婿取り

わらびもち

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貴方に嫌われたら生きていけない

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 会えない日々が続き、日増しに想いは募ってゆく。
 そんなある日の事だった。

「ルイがわたくしを訪ねて王宮へ?」

 会いたくてたまらなかった愛しい人が来てくれた。
 それを聞いて私はすぐに彼の元へと向かう。

 本来、客人を迎えるのであれば先に身支度を整え、お茶の準備を整えるもの。
 それが済んだ後、優雅に姿を現すのが淑女として正しい在り方。

 だけど今、私は正しい淑女の姿をかなぐり捨てて愛しい人の元に向かっている。
 ただ会いたい、その一心で。本当は走り出したい気持ちを必死に抑え、はしたないと思われない程度に早く歩を進める。

「ルイ………!」

 彼の姿を見つけ、その名を呼ぶ。
 すると彼は満面の笑みで私の元へとやってきた。

「フラン! 急に来てしまってすみません。どうしても君に会いたくて……」

「ルイ、わたくしも会いたかったです。会いに来てくれて嬉しい……」

 先触れもなく訪問することは無礼にあたる。
 だけどそんなことどうでもよくて、ただ会いに来てくれたことが嬉しくて、私はそっと彼の側に寄り添った。


 私の宮に彼を招き、二人だけのお茶会を楽しんだ。
 会えなかった分だけ話題は尽きることがない。

 そして先日前公爵夫人が私を訪ねてきてくれたことを話すとルイは目を伏せた。

「そうですか……義母上が。きっと生家へと戻る前にフランに謝罪をしておきたかったのでしょうね。義母上はセレスタン様を止められなかったことをひどく後悔しておりましたから……」

「そのようだったわ。原因となったわたくしを恨むことすらしない、潔い方ね……」

 ふと、私はルイをの方をじっと見た。
 彼にずっと聞きたくて聞けなかった事を聞くために。

「ねえ、ルイ。貴方は……わたくしの事を怖い女だと思うかしら?」

「え? どうしたんですか? いきなりそんな質問をするなんて……」

「だって……のはわたくしだもの。セレスタン様もジェーンも死罪にするようにしたのはわたくし。二人を生かすやり方もあったのに、それをしなかった。そんな腹黒い女を怖いと思わないの?」

 セレスタンとジェーンを生かす道もあった。
 だが、敢えてその方法を選ばなかったのは私だ。

「思うはずがありません。あれだけの事をしでかした二人への甘い処置は、後々首を絞めることになります。私は今回の事で実感しました。甘い考えを持っていては貴族としてやっていけないと、そしてここぞという時に厳しい判断をせねば大事になるのだと。だからフランの判断は間違っていないと思いますし、貴女を腹黒い女だのと非難することはありません」

「ルイ………そう言ってもらえて嬉しいわ」

 心の隅でずっと不安を感じていた。
 元婚約者を平然と処罰する私をルイは恐ろしいと思わないだろうかと。

 私はセレスタンを処分すると決めた事を後悔はしていない。
 そうしなければあの男はいつまでも私に執着するだろうから。
 自分とアンヌマリーが幸せになる為に私が必要不可欠であると知っているから……。

「わたくしは貴方に嫌われることが何よりも怖いのよ。誰に嫌われても構わないけど、貴方にだけは嫌なの……」

 元婚約者には嫌われようがどうでもよかったが、ルイは違う。

 彼に嫌われたら生きていけないと、そんな恥ずかしい台詞を平然と口に出せるくらい彼を愛している。

「嬉しいです、フラン。私が君を嫌うことは生涯有り得ません。初めて会った時からずっと、貴女を愛しています……」

 甘く情熱的な言葉が耳をくすぐる。
 気づけば彼の手が私の頬を撫でていた。

「愛しています。やっと貴女と幸せになれる……。もう誰にも邪魔はさせません」

 熱を孕んだ青い瞳が私を真っすぐ見つめ、自然と唇が重なった。
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